第19回PHS MoU Group総会では、中国のPHS事情に関するプレゼンテーションが行われた。中国だけで約8530万ユーザー(2005年12月現在)と、世界最大規模のPHS市場に発展してきたが、同国の3G開始が現実味を帯びると共に心配事も増えている。
まず簡単に中国の電話事業を解説しておこう。中国には大きな2つの固定電話会社があり、南部を中国電信(ChinaTelecom)が、北部を中国網通(China Netcomグループ、以下CNC)が担当している。いずれも地域の音声通話だけでなく、DSLなどのデータ通信サービスや国際電話サービスも提供する。そしてPHSサービスもこの2社によって提供されている。
一方、携帯電話会社も中国移動通信(China Mobile)と中国聯通(China Unicom)の2社が存在する。前者はGSMを、後者はGSMとCDMAのネットワークを持っている。
中国が導入を予定している3Gには、3つの方式が存在する。日本でもおなじみのW-CDMAとCDMA2000、そしてもう1つが中国で開発され、政府が最も力を入れているというTD-SCDMAだ(10月25日の記事参照)。中国の3G導入が予定よりも遅れたのはTD-SCDMAの完成度にあったともいわれている。そして、この3つのライセンスを、4つの電話会社がどのように分け合うか、業界再編も睨んでのシナリオができ上がりつつあるようだ。
PHS MoU Group総会のスピーチに立った李建宇氏が所属するCNC Labsは、CNCの子会社として技術サポートを担う。CNCは現在PHSサービスを提供しているが、3Gのライセンス取得も狙っている。しかしそのことで彼らはある問題に直面するという。
「PHSと3Gは技術的に大きく異なる。しかし対象とする顧客は同じなのです。もしCNCが3Gのライセンスを取得したら、どちらの技術も同じように提供することになり、自己矛盾を抱えることになるでしょう」(李氏)。日本のNTTドコモもこのような状況だったのか。
また、李氏は「PHSの優位性は、この先、3年から5年は続く」と分析しているが、さらに付加価値を持たせるなどの工夫が必要だという。また、現時点でデータ通信での稼ぎ頭と期待されるPHSとはいえ、次のような点に注意しなければならないという。
中国市場には引き続きデータ通信のニーズがあり、今後も市場調査と研究を続けていくことが大事だと李氏は話した。
中国の調査会社であるBDA China(以下、BDA)のテッド・ディーン氏は「PHS General Report in China」と題して、中国の3G市場の混迷ぶりと携帯業界再編シナリオを発表。また急成長を遂げたPHSの健闘ぶりを紹介した。
3Gのライセンスを取得するために、業界の動きもあわただしくなってきたようだ。「中国の3Gについては、毎日のように新しいうわさが出ている」と言うディーン氏。BDAの予測では、中国移動通信が順当にW-CDMAのライセンスを取得。中国電信は中国聯通の持つGSMのネットワークを借りて新しいTD-SCDMAのライセンスを、残るCNCは中国聯通と合併しCDMAネットワークを使ってCDMA2000 1X EV-DOのライセンスを取得するという再編シナリオを示した。
「2000年は150万、翌年は510万ユーザーでスタートしたPHSだったが、日本での失速が中国にも伝わり、サービス停止になるのではないか、PHSはなくなるのではないかといううわさが流れた。しかしこの5年間はご覧のような急成長を遂げている(5月25日の記事参照)。私たちは2006年も引き続き成長するものと予測している」(Dean氏)
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