三菱電機の「D702i」開発陣が、デザイン(3月9日の記事参照)と同じくらい力を入れたのが“携帯電話としての使いやすさ”だ。「ストレート型に新しさを感じて折りたたみ型から乗り換えた人に、使いづらいという印象を与えたくない」──こんな意気込みで開発したと三菱電機NTT事業部の平塚孝幸主任は話す。
ストレート型が折りたたみ型と大きく異なるのは、メイン液晶とダイヤルキー/ソフトキー部分がいつも表に出ている点。端末を開くことなく情報を確認・入力できるのがメリットとなるが、半面、表に出たままのキーがカバンやポケットの中で誤動作するというデメリットにもつながる。
こうした機構を持つ端末は、キーを使わないときにロックして動かないようにするキーロック機能を備えており、D702iもメニューキーの長押しにキーロックが割り当てられている(電源キーを押すとロックが解除される)。
このキーロックを“ユーザーが意識することなくかかるようにしよう”と取り入れたのが、「タイマーキーロック」設定だ。待受時に一定時間キー操作が行われないと自動でキーがロックされる設定で、キーロックまでにかかる時間は10秒/30秒/60秒/90秒/5分から選べる。「キーロックは、折りたたみ携帯ユーザーなら意識せずにすむところ。ストレートでそれを意識させないためには、自動的にかけてしまおうという発想」(平塚氏)
持ち歩くときにコンパクトなサイズになる折りたたみ携帯と違って、ストレート携帯はそのままの状態である程度小さいことが求められる。そのため、ダイヤルキーやソフトキーを配置できるスペースが制限されると平塚氏。D702iでは「限られたサイズの中で、キーも操作エリアもできるだけ大きく取っている。キーの形状についても細かく工夫した」と話す。
キー部分の工夫の1つは、傾斜させたソフトキー。ソフトキーの土台となる部分を傾斜させているのに加え、キー自体にも傾きを持たせている。
キーをこのような形で設計することで十字キーを押したときの誤動作を防げると話すのは、三菱電機デザイン研究所の河原林源太氏。「十字キーの左右が方向キーの谷間になるので、“左を押したつもりがソフトキーを押してしまった”という誤動作が起こりにくい」。また、土台の傾斜も、遠くのキーの押しやすさにつながっているという。
D702iの設計で難しかったのは、800MHz帯と2GHz帯アンテナを入れた端末上部が、下部に比べてどうしても少し厚くなってしまう点だった。1枚の板というコンセプトを貫くため試行錯誤を繰り返し、ぎりぎりまで薄くしたと河原林氏は説明する。
それでも下部より若干厚くなった部分をなだらかに傾斜させ、この微妙な段差が端末を持つ上でのサポートになるようにデザインしたという。「この段差部分に人差し指がうまく収まり、端末を安定した状態で持つことができる。これが、操作エリアを親指が縦横無尽に走り回るためのサポートになる」
D702iは、「D902i」(記事一覧参照)のソフトウェアとハードウェアをベースにして開発されているため、操作に対するレスポンスもD902iなみだという。内蔵のFlashメニューは、極力キビキビ動くようにとデザインチームが最適化しており、「タイルアイコンとさほど変わらない反応速度になっている」(河原林氏)
メニューのデザインの中には、電光掲示板風な懐かしい雰囲気のものも用意するなど、メインターゲット層の遊び心もしっかり押さえている。
「ビジネスタイムの使いやすさとオフタイムの遊び心。この2つをうまく両立できたと自負している」(平塚氏)
D70xiシリーズではバックライトが一段階暗くなるときに、ぱっと切り替わるのではなく、じわりと暗くなるようにしていると河原林氏。
「ぱっと消えるとなんだか唐突すぎて、携帯と使っている人とのつながりがそこでスパッと切れてしまう感じがする。“今からちょっとお休みするよ”的な表現ができないかと検討した中で取り入れた機能」
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