中国の高度化PHS「Turbo PHS」とは?

» 2006年03月23日 22時25分 公開
[江戸川,ITmedia]

 まず初めに、PHSについておさらいをしておこう。PHSはそもそも家庭や職場内でも利用できるデジタルコードレス電話として、それまでのアナログコードレス電話に置き換わる「第二世代コードレス電話」として誕生した。

 デジタル方式であることから無線上での盗聴の心配がなく、また低出力・省電力であることから小型・軽量な端末が実現できる。携帯電話のような専用の電話番号を持つことで、日常の生活シーンに合わせて、屋内でも屋外でも自由に持ち歩けるシステムだった。

ARIB RCR STD-28として標準化されたPHS

 実際のPHSの使われ方はさておき、そうしたPHSの技術的な詳細については標準化され、ARIB RCR STD-28「第二世代コードレス電話システム標準規格」に記されている。データ通信や新技術の登場などでこれまでに改訂が重ねられ、本稿執筆時点では2005年11月30日発行のVer.5.1が最新版となる。

 さて、日本生まれの規格であるSTD-28を海外に普及させる役割を担うのがPHS MoU Groupだ(3月2日の記事参照)。事務局は便宜上ARIB内に設置されているが、ARIBの下部組織というわけではない。国内外のメーカー、オペレーターなどで構成される非営利団体である。タイや台湾、中国などでPHS導入が実現されたのも、PHS MoU Groupの活動あればこそだ。

 中でも中国での普及ぶりはめざましく、2005年末には加入者数が8500万と日本をはるかに越える最大規模の市場に成長した。だがその一方で、間近に迫った3G携帯電話との競合など、大きな問題も抱えている。

 PHS事業会社としては、加入者が増えてもつながりやすく切れにくい、ネットワークの品質維持が重要になってくる。中国の調査会社によれば、顧客満足の決め手となる要素のうち、ネットワークのパフォーマンスに起因するものが全体の50%以上を占めるという。そこで、PHSメーカーであるUTStarcomが提案するのが、現状のPHSと互換性を持ちながらも高い性能を発揮する「Turbo PHS」だ。

Turbo PHSの仕組み

 PHSは基地局とのやり取りに、TCH(Traffic Channels:通信チャネル)とCCH(Control Channels:制御チャネル)を使っている。Turbo PHSではこのうちCCHを拡張し、STD-28で定義されている第1CCHに加え、フレーム化した第2CCHを新しく採用した。各種のサービスはこの新フレームでサポートされる。

 また、PHSは音声コーデックにADPCMを用いているが、Turbo PHSでは3GPP標準でもあるAMR(Adaptive Multi-Rate)を採用。このことにより、基地局から距離が遠い場合でも、AMRのビットレートを下げチャネルごとの出力調整を行うことで、基地局との確実な通信を確保する。さらにAMRのメリットとして、将来的にPHSと3G携帯電話の間で通話を行う際にもコード変換処理が不要という点がある。

 このほかにも、ハンドオーバー処理の改善やSMS処理容量の拡充がされているが、Turbo PHSはネットワークの改良だけでなく、端末そのものも40ミリワットという高出力対応のものになる。STD-28との互換性を保ちながら、アップリンクで6dB程度の感度向上が見込まれ、なおかつ消費電力はこれまでの端末と同程度に抑えるとされている。

 日本国内では、ウィルコムがすでにPHS技術に各種の改良を重ねているほか、高度化PHS規格「W-OAM」も開始した。今後、Turbo PHSを採用するシステムが国内に登場することはないだろう。しかし加入者がますます膨れ上がる中国はもとより、これからPHS導入を検討する地域にとって有用な技術であることは間違いない。Turbo PHSは、ARIB RCR STD-28 Ver.6.0として標準化される方向で検討が進められている。

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