高機能化が進む携帯電話には、GPSだけでなく、加速度センサーや地磁気センサーなど、さまざまなデバイスが搭載されるようになっている。GPSの方は、KDDIが積極的に搭載を進めていたり、2007年4月以降は原則として位置情報の通知機能が必須になることもあって、すでに多数の搭載例と、それを活用するナビゲーションソフトなどが登場している。しかし、加速度センサーや地磁気センサーは、まだ採用機種が多くないこともあり、一般ユーザーにはそのメリットがあまり知られていない。
ボーダフォンのVGA液晶搭載端末「904SH」は、その液晶の解像度の高さもさることながら、前後/左右/上下の3方向の加速度センサーとヨー/ピッチ/ロールが検出できる3軸の地磁気センサーを持つ「モーションコントロールセンサー」を搭載した点が大きな話題となった。6軸センサーは、端末の移動方向と、向きや回転を検出するセンサーだ。このセンサーを用いれば、ユーザーが端末をどういう状態で保持しているのか、どちらの方向へ、どれくらいの速度で移動しているのかまで検知できる。Sensor Expo Japan 2006では、この6軸センサーからの情報を活用した携帯端末向けアプリケーションソフトのデモが目を引いた。
Sensor Expo Japan 2005で、6軸センサーを使った携帯ナビを提案していた(2005年4月8日の記事参照)旭化成マイクロシステムでは、今回もナビゲーション機能を中心にさまざまな応用例を展示した。同社では「AK8976A」という1チップの6軸センサーを開発中で、2006年7月にサンプル出荷を開始、年末には量産に入る。サイズは4.5×4.5×0.9ミリと「世界最小を実現した」(説明員)という。
来場者の関心が高かったのが、端末を水平に持つと画面には2次元の地図を表示し、垂直に立てると3Dグラフィックスや写真での表示に切り替わる機能だ。さらに3D表示では、高層ビルなどの前で端末を上にかざすようにすると、ビルの上層階まで表示されるなど、非常に凝った作りになっている。
3D表示を行うナビサービスは、すでにKDDIとナビタイムジャパンが「EZナビウォーク」で「3Dナビ」として実用化しているが、こちらはスタート地点と交差点でのみ3D表示を行う。一方旭化成マイクロシステムのソフトでは、移動中のすべての場面で立体的な表示ができる。6軸センサーを活用して移動距離なども把握できるため、端末を立てて歩けば、街並みの画像が自動的に更新される。
なお、3Dで描画されているように見える画面は、実はデータ量を減らすため2Dの絵になっている。サーバ側でポリゴンデータから絵を生成し、端末に送信しているという。また一本道を移動中は、前と後ろの画像データしか送信しないといった工夫も凝らしている。逆に交差点ではリアルタイムに周囲が見渡せるよう配慮した。
このほか6軸センサーを活用するアプリケーションとしては、ボーダフォンの「星座をさがそ」とよく似た「Starry NightScape」というソフトを展示。こちらは空にかざして星や星座が探せるほか、横浜のランドマークタワーから地上を見下ろした景色も用意されていて、施設を検索したりもできるのが特徴だ。
また観光地などで、携帯の画面に同じ場所の異なる季節の様子や、過去の風景などを映し出し、タイムスリップしたような感覚を与えるアプリケーションや、端末を前後左右に動かすことで加減速やハンドル操作が行えるレースゲームなども提案していた。
904SHに搭載された6軸センサー「AMI601」をボーダフォンと共同開発したのが愛知製鋼だ(2月28日の記事参照)。同社では、以前から加速度2軸+地磁気3軸という構成の5軸センサー「AMI501」を提供しており、すでにボーダフォンの「V603SH」や「804SH」などに採用されている。
ただ、従来の5軸センサーでは端末の角度を90度以上変えるとセンサーが感知できなかった。今回開発した6軸センサーでは、全方位の計測が可能になったことで、新たな利用方法ができたという。その1つが904SHにプリインストールされる「星座をさがそ」というアプリケーションだ(3月1日の記事参照)。これは端末を夜空にかざし、画面に表示されるガイドに従って端末を動かすと目的の星座が探せるというもの。また「バスつりにいこう」という、端末を動かして釣りができる体感型ゲームや、「ゼンリンいつもナビ」の傾斜補正付き電子コンパスとしても活用されている。
愛知製鋼の担当者は「今後はシャープ以外の端末メーカーにも採用を働きかける」と話した。同社のブースでは、904SHを使って実際に6軸センサー対応アプリケーションを体感できるコーナーも用意していた。
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