欧州携帯電話市場はもともと、フィンランドのNokia、スウェーデンのEricsson(現Sony Ericsson)、ドイツのSiemens(現BenQ-Siemens)などが牽引してきた経緯があり、端末メーカーとオペレーターの関係は、サービスを共同で開発し提供するという深いレベルではない。また、ビジネスユーザーや技術指向の強いユーザーは別として、一般的なユーザーのポータルサービスに対する関心は、いまだにさほど高くない。
Vodafone live!が成功すれば、業界勢力をオペレーター主導に持っていけただろうが、同サービスの開始当初、一時的に不振に陥っていたNokiaは、Vodafone live!が軌道に乗る前に息を吹き返した。NokiaはS60などのソフトウェア開発分野にも力を入れており、開発者コミュニティの構築にも熱心に取り組んでいる。端末市場を見ると、Nokia、Motorolaといった大手はますますシェアを増やし、Vodafoneが協業しやすい中堅べンダーは大手に押されている格好だ。
Vodafone事情に詳しい英Ovumのプリンシパルアナリスト、ジョン・デラニー氏は、Vodafone live!について「ひいきめに見て“良い”(Good)。“素晴らしい”(Excellent)とはいえない」と評価する。ただオペレーター主導のサービスに対する評価は、3Gサービスのみを提供する英3(Three)を除いて、おおむね同様だ。
データからの収益はいまだにSMSが多くを占めており、マルチメディアメッセージングサービスなどのデータ通信による収益を増加させることが、数年来の共通課題となっている。しかしオペレーター主導のサービスでは、それを達成できていない。デラニー氏は、「欧州でのNokiaブランドはあまりに強い」と述べ、西欧市場は引き続き端末メーカー主導で動いていると結論付けた。
Vodafone live!に関するVodafoneの資料を見ると、「Vodafone live!アクティブ端末数」という項目がある。それによると、2006年6月時点でアクティブ端末の台数は2919万3000台となっているが、これはVodafone live!対応端末の数であって、Vodafone live!の実質的な利用ユーザー数を示すものではない。VodafoneはVodafone live!の売上高を公開していないが、それに近いものとして、「サービスの売上に占める非音声サービス」の「データ」という項目を公表している。その直近の数字は4.9%。つまり、Vodafone live!が同社のサービス収益に占める割合は5%を切るレベルにとどまっているともいえる(SMSが該当する「メッセージング」と合わせると、非音声からの収益は全体の17.4%を占める)。
2005年6月末 | 2005年9月末 | 2005年12月末 | 2006年3月末 | 2006年6月末 | |
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ドイツ | 19.30% | 19.50% | 20.40% | 21.70% | 21.20% |
イタリア | 14.90% | 16.80% | 17.40% | 18% | 17.30% |
スペイン | 13.70% | 14.20% | 14.80% | 15.10% | 15.70% |
英国 | 19.30% | 19.70% | 20.70% | 21.30% | 20.90% |
今後、Vodafoneがポータル事業をどのような方向に持っていくのかが、成熟市場の将来を左右することになる。なお同社は、NTTドコモ、NEC、パナソニック モバイル、MotorolaらとLinuxプラットフォームを共同構築することで提携するなど、端末メーカーとの連携強化を推進する動きも見せている(6月15日の記事参照)。
データ収益以外で同社が、成熟市場のモバイル戦略の軸とするのは、ワイヤレスブロードバンド分野。3Gの普及とHSDPAのローンチを中心に展開する予定だ。HSDPAでは、2006年夏までに主要市場で提供を開始し、2007年半ばには現在の3G並みのカバーエリアを目指すという。ここでもポータル戦略は重要で、今後の動向に注目が集まる。
次回は、モバイル業界に押し寄せる新しいトレンド、FMCの欧州動向とそれに向けたVodafoneの戦略を見ていく。
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