世界トップのシェアを持ちながら、日本市場では苦戦が続いていたノキア端末。その理由としては、携帯キャリアが端末の仕様を決めるという独特のビジネスモデルや、グローバルのトレンドをそのまま持ってきても、日本市場で受け入れられるとは限らない点などが挙げられる。
しかしビジネス携帯の世界では、異なる展開が見られるかもしれない。ノキア・ジャパンは「E61(SIMロックフリーの日本語版)」の発表会で、ビジネス携帯投入の背景と狙いを説明し、同社の優位性をアピールした。
ノキア・ジャパン エンタープライズ・ソリューション事業部の森本昌夫氏は、「日本の企業ユーザーがビジネス携帯に求めるものは、グローバルでITユーザーが求めるものと共通性がある。そこでグローバル企業であるノキアの強みが発揮できる」と説明。グローバルパートナーとの連携ソリューションを世界で一番速く展開でき、それをすぐ日本市場に持ち込めることが最大の強みであり、それを生かして日本市場に斬り込みたいと意気込んだ。
ノキアがエンタープライズソリューション戦略で重要視するのは、モバイルデバイスから企業のアプリケーションやデータへのアクセスをセキュアかつシームレスに行えるようにすることだと森本氏。それを実現するために必要なのが、(1)データデバイスと電話の機能を1つに融合したエンタープライズデバイス (2)企業データへの安全なアクセスを保証し、紛失時のデータ漏洩を防ぐセキュリティ (3)企業のさまざまなアプリケーションとエンタープライズデバイスが連携するためのソフトウェア の3つだ。
それぞれのニーズに対応する製品が登場してはいるものの、ばらばらな会社が提供しておりトータルなソリューションになっていないと森本氏は指摘。こうした状況が企業向け携帯の普及を阻んでいると見ている。「3つの欠けたピースを1つの会社(ノキア)が提供することで、モバイルのビジネス化を推進できると考えている」(森本氏)
ノキアはビジネス携帯市場への参入にあたり、エンタープライズ端末のE61だけでなく、モバイルウェアやセキュリティアプライアンスを提供。これらを結びつけるためのコンサルティングやアフターケアサービスもサポートする。パートナー企業とも連携しながら、ビジネスユーザーのニーズを捉えたトータルなビジネスソリューションを提供する計画だ。
グローバルなパートナー企業として名前が挙がったのは、エンタープライズ市場ではおなじみのIBM、Oracle、SAP、RIM、Microsoft、Good、Avaya、Cisco、Alcatelなど。日本のNECや富士通ともEシリーズを絡めたソリューションを提供することで合意しており、開発が進んでいるという。他の主要なSIベンダーとも積極的に連携を図る計画で、「年明けにも(提携企業を)アップデートできる」とした。
また2007年の上半期には、(1)モバイルEメールソリューション (2)企業ボイスソリューション (3)デバイス管理の分野に注力すると森本氏。Eメールソリューションでは、米国で600万人超のユーザーが利用しているRIMの「BlackBerry」のようなEメール利用のニーズが日本でも立ち上がると見ており、プッシュEメールのソリューションベンダーと協業して市場の開拓にも注力するという。
「(ノキアが買収した)Intellisyncだけでなく、Microsoftのactivesync、IBM、RIMのソリューションなどにも対応していくことで、さまざまな企業ユーザーに使っていただけるようになる」(同)。RIMのBlackBerry Connectについても、ノキアが同社の承認を受けてクライアントソフトを開発していることから「今のところ、日本語の端末としてBlackBerryのサービスをサポートするのは、たぶんE61だけではないかと思う」(同)と話す。
企業ボイスソリューションでは、AsteriskのオープンソースPBXとの互換性を確保していることを挙げ、対応するSIPサーバや無線系ソリューションも視野に入れていると説明。デバイス管理についてもセキュリティ管理や盗難などに対応するプログラムをノキアが提供する。
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