オリジナル動画制作に向かうコンテンツプロバイダ──MTV FLUXの場合

» 2007年04月02日 00時10分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 着うた、着うたフルの次は動画──。こうしたトレンドの流れを受けて、コンテンツプロバイダがオリジナル動画作品の制作に乗り出している。携帯向けサイト「MTV FLUX」を運営するバイアコム インターナショナル ジャパンも、その1社だ。

 3月27日に開催されたモバイル・コンテンツ・フォーラムの講演で、同社デジタルメディア事業本部 モバイル部 バイスプレジデントの鈴木貴歩氏が、携帯動画視聴の現状とビジネスモデルについて説明した。

高まる携帯動画コンテンツのニーズ

 携帯動画の利用動向について鈴木氏は、パケット定額プランに加入しているユーザーの22.3%が携帯動画を毎日見ているとするインフォプラントの調査結果を紹介。また、携帯向けサイトのMTV FLUXにでも、定額で携帯向け動画が見放題になるコースに加入するユーザーが1カ月に平均で約20本の動画を視聴しているとし(auユーザーの場合、2006年12月のデータ)、携帯で動画を視聴するスタイルが浸透し始めていることを示唆した。

 「インフォプラントの調査によると、ユーザーが携帯で視聴したいと思うコンテンツは、1位がミュージックビデオで54.8%、映画の予告編が35.4%、アニメが22.5%。これは、ユーザーが携帯でエンタテイメントコンテンツを見たいということ」(鈴木氏)

 こうしたユーザー動向を背景に、バイアコム インターナショナル ジャパンでは動画コンテンツの配信と動画を使ったビジネスモデルの確立に注力している。「“コアビジネスを放送からデジタルメディアへ”──これを世界的な戦略として展開している」(鈴木氏)

さまざまなメリットをもたらすオリジナル動画

 バイアコム インターナショナル ジャパンは米Viacom傘下の米MTV Networksが100%出資する日本法人で、FLUXは同社のデジタルメディア事業のブランド名。FLUXでの携帯向け動画配信では、米MTVが制作する「Jackass」や「Carmen Electra's Aerobic Striptease」(カルメン・エレクトラのセクシー・ボディ・レッスン)、ニコロデオンの人気アニメ「スポンジボブ」など、グループ会社のコンテンツを利用できる。しかし、既存コンテンツにとどまらず、日本オリジナルのコンテンツ制作にも注力するというのが同社の方針だ。「グローバル企業の強みを生かしつつも、ただ海外のコンテンツを流すだけではなく、ローカルコンテンツも重視している」(鈴木氏)

 その理由の1つとして挙げるのが、権利処理の問題だ。動画は権利処理が煩雑な着うたや着うたフルより、さらに多くの権利処理を行う必要があると鈴木氏。バイアコム インターナショナル ジャパンがすべての権利を保有するオリジナルコンテンツを作れば、携帯への動画配信はもちろん、待受画像やデコメ素材の作成、他メディアへの展開にも迅速に対応できるという。

 「例えば、オリジナルコンテンツの『ウサビッチ』は、うちがすべての権利を保有しているのでドコモがビデオクリップ(10Mバイトiモーション)を始めるときにも、権利者からいちいち許可をとる必要がないため、すばやく対応できた。キャラクターの権利も持っているので、“キャラクターを携帯ゲームに使いたい”といったコラボレーションもしやすい」(鈴木氏)。ウサビッチはゲームソフト「ルミネス」のiアプリ版「LUMINES LIVE i」とのコラボレーションが実現し、 MTV FLUXで「LUMINES for ウサビッチ」を配信中だ。

 MTV FLUXの携帯向け動画がテレビに進出した例もある。「『ノビパン』は、携帯でどんな動画が欲しいかというユーザーアンケートに応える形で制作したオリジナルコンテンツ。主人公は、若い人に受ける“ゆるキャラ”(ゆるいキャラクター)。この携帯向けに一から作ったムービーが、地上波のテレビ埼玉と東京メトロポリタンテレビジョンで放送された」(鈴木氏)。このタイトルはPC向けサイトの「FLUX」でも配信しており、1つのオリジナルコンテンツが地上波、携帯、PCのマルチプラットフォームで展開された一例だという。

クロスメディアマーケティングの試み

 バイアコム インターナショナル ジャパンはまた、グローバル/オリジナルの豊富なコンテンツを、クロスマーケティング展開することで新しいビジネスモデルを創出しようとしている。

 その1つが、PC向けに展開しているSNS型動画共有サイトの「FLUX」。MTVで放映しているムービーの一部を配信するサイトで、ユーザー登録すると自分で撮ったムービーをアップロードできる。ユーザーは、さまざまなムービーを組み合わせてオリジナルのチャンネルを作成し、それを他のユーザーに見せることが可能だ。

 「ここでやろうとしているのが、ユーザーが投稿した動画の中で人気が高いものを、携帯の公式サイトで配信するという試み。ダウンロード数に応じて収益を分け合うようなユーザーコンテンツビジネスにも取り組み始めている。単に配信するだけでなく、携帯とPCを連動させた新しいビジネスモデルの可能性を探っている」(鈴木氏)

 PC向け動画と携帯を連携させて、音楽イベント「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2007」をプロモーションするトライアルもNTTと共同で展開中だ。「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2007の特設Webページや、FLUXで配信中の動画『VMAJ2007 リアクションダンス』を携帯カメラで撮影し、その画像をメールで送信すると、撮影したシーンに応じて異なるデコメール素材や待受画像がもらえる」(鈴木氏)

Photo 「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2007」プロモーションのサービスイメージ

世の中で知名度が低いコンテンツも無料だとアクティブに見る

 鈴木氏は携帯動画の市場について、「“携帯で動画を楽しんでもらえているのか”と聞かれれば、携帯でしっかり動画を視聴できる端末はまだ少ないのが実情」としながらも、市場拡大の余地は大きいと見ている。

 「動画コンテンツは着うたや着うたフルなどの音楽コンテンツに比べて、ユーザーが新しいコンテンツに出会いやすいフォーマットで、衝動買いが多い」(鈴木氏)。実際、MTV FLUXサイトのダウンロードランキングでも、新作や知名度の低い同社のオリジナルコンテンツが、メジャーなコンテンツを抜いて上位に入ることも多いと話す。

 MTV FLUXでは、シリーズものの動画の1話分を登録会員向けに無料で公開しており、その一部は会員登録なしでも視聴可能。ユーザーはサムネイル画像や説明を見て気になった動画をお試し感覚で視聴し、気に入ったら購入するというスタイルで利用できる。こうした取り組みが、オリジナルタイトルの認知につながったとも言えるだろう。

 「“これ、いいな”と思ったコンテンツをダウンロードしたあと、本当に気に入ったコンテンツについては、(シリーズ中の)複数タイトルをダウンロードする傾向がある。(一般メディアで)映像作品を見るのと同じような動向が、携帯にも現れ始めている」

 米ViacomのCEOは、常々「“コンテンツの質(内容)がメディアビジネスの成否を左右する”と話している」と鈴木氏。1つのコンテンツを軸に、さまざまなビジネス展開が見込めるデジタルメディア時代には、さらにコンテンツのクオリティが重要になると指摘した。

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