“N”が折りたたみでなくなる日――キーパーソンが語るこれからのNECデザイン「N904i」デザインインタビュー(2/2 ページ)

» 2007年06月12日 17時59分 公開
[太田百合子,ITmedia]
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一番大切にしなければならないのは、エンドユーザーの視点

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 そんな悩めるNECの転機となったのが、N702iDで実現した、デザイナー佐藤可士和氏とのコラボレーションだ。N702iDはスクエアなデザインに、iチャネルをテロップ表示できる帯状のサブディスプレイなどを搭載する、これまでにないスタイルでユーザーから高い評価を得た。

 「N702iDが評価されたのは、それがユーザーの視点、生活の視点に合致したものだったから。デザインだけでなく、コンセプトそのものが、今までの“NECだからこうでなければならない”という束縛から離れ、ユーザーの視点に立ったものだった。不満を感じていたユーザーにとっては、それが新鮮に映ったのではないか」(佐藤氏)

 NECはこの成功体験をもとに佐藤氏へアプローチするなど、現在のクリエイティブスタジオの土台作りに乗り出す。技術ありきでその上にデザインをかぶせるのではなく、まずコンセプトがあり、それを実現するために技術を作りこむという方向性に、少しずつ舵を切っていった。

photophoto NTTドコモ、NEC、佐藤可士和氏との3者コラボモデル「N702iD」(左)「N703iD」(右)。N702iDの成功体験は、NECを変えるきっかけの1つになったという

 「N702iDの成功から見えてくるのは、メーカーが一番大切にすべき存在はエンドユーザーであるということ。今のユーザーは、個々にそれぞれの価値観を持っている。多様な価値観に合わせてどう技術を落とし込んでいくか、1人1人の満足度をどう上げていくのかを考えなければならない」と佐藤氏は指摘。さらに、“今の技術がこうだから”という押しつけは、メーカーのエゴにしか過ぎない」と斬りすてる。

 「大切なのは、(メーカーの)持てる技術でユーザーの生活がどう彩られるのか、いかに心地よさを感じてもらえるかということです。それを具現化するのがコンセプトづくりであり、デザインなんです」(佐藤氏)

 こうした考え方に基づいて開発された、新生NECの第1弾が、ステファノ・ジョバンノーニ氏デザインのN904iだという。

N903iは、これまで培ってきたNEC的なデザインの集大成

 佐藤氏は前モデルである「N903i」について、「僕は、(N903iは)ムーバから続いてきたNEC的なデザインの集大成だと考えています。NECの持っているユニバーサリティ、誰もが使いやすい安心感といったものを、1つにまとめあげたのがN903iです。だけどこれからのNECは、ユニバーサリティという今までの価値に加えて革新的な新しい価値、つまりイノベーションも提供しなければなりません」と話す。イノベーションのために欠かせなかったのが、エモーショナルな部分の強化だという。

photo NEC端末の集大成ともいえる「N903i」

 「僕がNECに移ってきてからずっと発言してきたのが、“人”“巧”“感”の3つのバランスが重要だということ。“人”はユーザビリティや使いやすさ、“巧”は技術、そして“感”は心地よさや楽しさなど携帯電話を手にしたユーザーが感じるものです。NECは“人”と“巧”についてはすでに定評がありますが、一方で“感”もほかと同じように高める必要がある。そうでなければ、せっかくの使いやすさも、研ぎ澄まされた技術も、市場には伝わりません」(佐藤氏)

 「デザインはこの“感”を高めていくもの。単に色を変えるとか流行にのるということでなく、そこにはメーカーとしての哲学とか、メッセージが込められています。これからそのメッセージ、NECのモバイルに対する考え方、デザインに対する考え方をいろんな形で価値として見せていきたい」という。

Nを継承しつつ新しい価値観を提供。“脱折りたたみ”もありえる

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 一方で、ユーザーが感じるもの、求めるものは常に変化していく。佐藤氏がいうように“感”を高めていくためには、常に新しい価値を見いだし、提供していかなければならない。佐藤氏は「デザインとは“デ・サイン”である」という持論を、スタッフに浸透させている。

 「“サイン”だと、合図とか信号とか標識とか一方的な情報のまま。だから、今見えているサインを一旦否定して、別のやり方がないかを見直す。これが“デ・サイン”の考え方です。これは、我々全スタッフが共有しなければならない考えです」(佐藤氏)

 佐藤氏は「機能や性能が目まぐるしく変わっていく中では、“人”“巧”“感”を常に見直さないと、ユーザーのニーズに応えることができない。たとえば、折りたたみケータイはNECが生み出したスタンダードですが、これがいつもベストだとは限らない。今後は違う形になっていくことも十分あります」と、ストレートタイプやスライドタイプの端末を登場させる可能性にも触れた(海外向けには登場済み)。また、高解像度のワイド画面を快適に使うことを考えると、「SH903iTV」のサイクロイド機構や「F904i」のヨコモーションように、ディスプレイを横向きにする機構の必要性にも言及した。

 「ただ、だからといって奇抜なことをやっていこうというのではない。これまでのNECのよさはしっかり継承しつつ、そこに新しい価値を提供していきたい。N903iがゼロなら、N904iはその第1歩。今後登場する端末では、NECの真の変化を感じてもらえると思います」(佐藤氏)

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