モノもコンテンツも売ります――紙の自販機「ドコデジ」ってどんなもの?

» 2007年06月20日 21時45分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 いわく、紙の自販機である。いわく、おサイフケータイを使う。いわく、コンテンツを販売・配布できる――モバイルゲートの「ドコデジ」の話を初めて聞いたとき(5月7日の記事参照)、記者にはそれがどんなものなのか、まったく想像が付かなかった。

 紙の自販機「ドコデジ」とは何か。そして、どのような利用方法を想定しているのか―― ドコデジを開発、7月上旬を目処に提供を開始するモバイルゲートに、話を聞いた。

暇な時間を商機に変える“お見合いサービス”

紙の自動販売機「ドコデジ」

 ドコデジとは「どこでも自販機」の略であり、その実体は厚紙でできた折りたたみ式の立体的なPOPだ。ドコデジにはFeliCaのリーダー/ライターが付いており、おサイフケータイをかざして利用できるようになっている。

 ポイントは、ドコデジ本体を売るのではなく、ドコデジ本体や置き場所まで含めて、モバイルゲートが月貸しするというビジネスモデルにある。紙の自販機で売りたいものや配布したいものがある企業は、売るものと自販機を設置する期間を決めてモバイルゲートに発注する。販売・配布用に使う携帯サイトの構築もASP提供するし、ドコデジを“置く場所”を確保する交渉まで、サービス内容に含まれている。

 1台の自販機で売れる・配布できる商品は、20種類まで。ECサイトで売れるもの(商品を自宅に配送できるもの)や、携帯で受け取れるもの(待受画像や着メロ・着うた、ゲームなどのコンテンツ)ならなんでもいい。

 設置場所は、ファミレスや大手家電量販店、大手書店チェーンなど。共通しているのは、“顧客に暇な時間が発生する場”かつ“全国チェーンであること”だ。例えばファミレスにやってきた客が、待ち時間にドコデジにおサイフケータイをかざして利用する、というシチュエーションが自然に作れるわけだ。

 ドコデジを置いて何かを売りたい・配布したい企業と、場所を貸せる全国チェーン店。両者をモバイルゲートが仲介することによって、暇な時間にドコデジを利用する人が現れる――ドコデジとはいわば、人の暇な時間を商機に変える“お見合いサービス”のようなものなのだ。

ドコデジを利用したい企業と、ドコデジの置き場所を貸すことができる企業を結びつける

 例えば映画館に設置して、その映画に関連するDVDやCDを販売したり、新商品のキャンペーンに使い、商品に関連する待受画面やコマーシャルソングの着メロ、簡単なゲームを配布する、といった使い方が思いつく。

 ドコデジ本体(紙製立体POP、目安は100台から)とその印刷・デザイン、携帯サイトの利用料、FeliCaリーダー/ライターのレンタル料、携帯サイトの運営などをパックにした場合、ドコデジ1台あたり約5万8000円程度で利用できる。

立体の紙製POPになった理由

 ドコデジには、大きく3つのポイントがある。1つ目のポイントは、ドコデジ本体が紙製の立体POPであるという点だ。

 おサイフケータイをかざすだけなら、別に平面でも構わない。なぜ立体POPでなくてはいけなかったのだろうか。「確かに、おサイフケータイをかざすだけなら、ポスターのように平面でも構わないわけです。しかしポスターの場合、ポスターそのものが相当目立たないと、ほとんどの人に通過されてしまう。以前QRコード付きのポスターを手がけたことがあるのですが、雑誌にQRコードを印刷するよりも、アクセスしてもらえる率は低かった。本当はホンモノの自動販売機のようにガッチリと金属でできている物体がベストなのですが、しかしそれでは値段が高く、設置も大変です。そこで“折りたたみできる紙のPOP”というアイデアを思いついたのです」(モバイルゲート事業統括マネージャー渡辺敏昭氏)

 簡単に設置ができる、という点にも非常にこだわったという。設置に人手や時間がかかれば、その分設置コストも高くなるからだ。折りたためばかさばらず、たたんだ状態から広げて設置するまで、5分程度あれば1人で行える。

 “紙”と聞くと耐久性が心配になるが、実物を見るとかなりしっかりしている。設置場所を屋内に限っていることもあり、充分な強度だという。「普通に使って1カ月、最長でも3カ月もてばいい、という考えで作っています」(渡辺氏)

おサイフケータイに何をさせる?

 2つ目の特徴は、おサイフケータイを使う点だ。ドコデジ本体は紙製POPであり、中にビー・ユー・ジー製のFeliCaリーダー/ライターが入っている。

 おサイフケータイを使うというと、EdyやiDなどで決済まで行うのかと思いがちだが、ドコデジではFeliCa決済は使わない。FeliCaリーダー/ライターが付いているのは、WebTo機能(おサイフケータイのWebブラウザをリーダー/ライターから起動させる機能)を使い、適切なURLにアクセスさせるためである。おサイフケータイをかざすと携帯のWebブラウザが立ち上がり、そのドコデジで買える・受け取れるものが一覧できるページにアクセスする仕組みだ。

 決済処理がないので、ドコデジ本体にはネットワークに接続する通信機能は必要ない。そのため、電源が確保できればどこにでも設置できる。電源も取れないところ向けに、バッテリー(自動車用バッテリーを改造したもの)も用意している。

“誰にでも使える携帯サービス”を目指す

 3つ目のポイントは、普段携帯用サービスを使わない(使えない)人にも使える、というものだ。

 上述のように、ドコデジ本体には通信機能は付いていない。ドコデジを使って何かを購入する場合は、携帯電話の通信機能を使ってECサイトにアクセスし、そこで購入・決済などの処理を行う仕掛けになっている。つまり、最初のアクションこそ「ドコデジにおサイフケータイをかざす」だが、そのあとで行うことは、モバイルECサイトに携帯でアクセスして買い物をするのと何ら変わらないのだ。

 ここまで読んで、「それならおサイフケータイである必要はないのでは?」と思う方もいるだろう。その通りで、実はドコデジにはFeliCaリーダー/ライターの他にQRコードも付いており、QRコードを読み取らせることによって、モバイルFeliCa端末でなくても、おサイフケータイをかざすのと同じ、必要なURLにアクセスすることができるようになる。

 おサイフケータイを使っているのは、「携帯向けサービスを使わない層にも使ってほしいという気持ちが強いから」と渡辺氏は話す。「30代後半より上の世代は、携帯向けサービスをほとんど使わず『携帯は通話とメールさえできればいい』と話す人が多いが、そういう人にも使ってもらえるようにしたかった。だからこそ『携帯のここが使いにくい』という声を研究した」

 PCのほうが携帯よりも優れているところとして、画面が広いので必要な情報を俯瞰(ふかん)できる、という点がある。また、PCは使うが携帯インターネットは使わないユーザーからは、「目的のページに行くまでに挫折する」という声が多かったという。ドコデジの正面は棚をイメージして四角が区切られているが、これは携帯でも情報を俯瞰でき、目的のページに簡単にアクセスできるようにするための工夫だ。通常なら携帯の狭い画面の中でメニューを選び、深い階層に潜って必要なページにアクセスすることになるが、ドコデジに最初から一覧できるように印刷してあれば、棚にあるものを選ぶ感覚で欲しいコンテンツを選び、ドコデジの棚に書かれた番号を携帯の画面で選べば簡単に目的のページにアクセスできる。

ドコデジの正面は4×5=20マスの“棚”になっている。棚のマスには商品紹介の他に番号が振られており、おサイフケータイをかざしてアクセスしたWebサイトで、その番号を入力すればいいようになっている

ドコデジの将来

 まだサービスを開始していないドコデジだが、既に第2世代の端末の試作が進んでいる。

 第2世代では紙製POPではなく、プラスチックボードタイプの端末になっている。現在のドコデジでは棚状にメニューが並んでいるとはいえ、リーダー/ライターでアクセスする先のURLは1つで、棚のどの商品を選ぶかは携帯の画面で選ばなくてはいけなかった。新しいプラスチックボードタイプでは、棚の商品メニューに携帯をかざすと、直接その商品メニューに対応した携帯サイトにアクセスできるようになる。携帯画面での操作がなくなるので、携帯インターネットに慣れていない人にも、より使い勝手がよくなる点がメリットだ。

 渡辺氏は「ドコデジが普及したら2つ可能になることがある」と話す。1つは、携帯サービスを利用したことがない人にも無理なく使ってもらうこと。そしてもう1つは、携帯のデータ通信が少ない昼にトラフィックを作り出す、ということだ。

「携帯サービスを使わない人に“使わない理由”をヒアリングすると、大抵『必要がないから』『PCがあるから(携帯でそんなことをする必要はない)』という答えが返ってくる。しかし本当は、使ったことがないから便利だと思わないんです。実際にサービスを使ってみて、便利ならきっと使ってみたいという気持ちはあるはず。ドコデジは、そういう人に使ってもらえるものを目指しているんです」

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