米Appleが9月27日(現地時間)、翌28日に控えた「iPod touch」一般発売に先駆ける形で「iPhone」のアップデート「iPhone 1.1.1 Update」を発表した。このアップデートには、新機能であるiTunes Wi-Fi Music Storeを利用するためのアプリケーションモジュールのほか、各種バグフィクス、ユーザーからのフィードバックをもとにした操作上の改良など、種々のマイナーアップデートが含まれている。
iTunes Wi-Fi Music Storeなどのサポートにより、後に発売されたiPod touchとほぼ同等の機能を備えることになったiPhoneだが、iPod touchにあってiPhoneにない機能が存在する。それが多言語サポートだ。iPod touchでは、設定メニューから使用言語を選択することで、日本語を含む異なる複数の言語メニューの表示に切り替えることができる。またSafariなどのWebブラウザでは、日本語などの入力がサポートされ、英語版とは異なる専用のソフトキーボードが出現する。だがiPhoneでは、27日のアップデートを適用しても、こうした多言語サポートメニューは出現せず、依然として日本語での入力ができなかった。日本語のWebページや電子メールは表示できるのに、入力だけができない。これが大きなジレンマなのだ。
筆者の知り合いでiPhoneユーザーの1人が27日のアップデートを適用した際、「リリースノートでは国際言語サポートをうたってたのに、メニューで日本語が設定できない」と語っていた。もしこの話が本当なら、当初はサポートする予定だったのに、急遽サポートが取りやめられた可能性もある。11月9日に欧州でいっせいに発売が開始されるiPhoneでは多言語サポートが表明されているため、それまでには確実に対応してくるのだろう……と思っている。
そんなモヤモヤした気分を抱えていたある日、面白いことに気付いた。
たまたま、仕事の関係で空港から市街まで地下鉄(とはいっても郊外の大部分は地上を走る)で移動しながら、時間つぶしにiPhoneでWebブラウジングしていたところ、普通に日本語対応のソフトキーボードが出ていることに気がついたのだ。これまでであれば、iPhoneでは英語でしか入力ができないため、掲示板やSNSへの書き込みはほとんどしていなかった。ただ、その日は移動だけで1時間近くかかったため、何の気なく某掲示板への書き込みを試していたら、偶然にも日本語ソフトキーボードが出現したのだ。
通常、iPhoneのSafariで入力フィールドを選択した場合、写真左のような画面が出現する。これが英語版のソフトキーボードだ。ところが今回のケースでは、写真右のような画面が出現した。これはiPod touchに搭載されているのと同様の、予測変換機能付きの日本語版ソフトキーボードだ。
これに気がついてから、その入力画面が表示された掲示板サイトでいろいろ試してみたのだが、日本語対応の入力画面は出現する場合としない場合があり、必ずしも100%現象を再現できるわけではなかった。同じWebページの同じ入力フィールドでも、同じ入力画面が表示されないこともある。ただ1つ分かったのは、日本語のページを表示している場合に日本語入力メニューが表示される確率が高いということだ(当たり前といえば当たり前だが)。
例えばITmediaや@ITの検索窓を選択した場合にも、日本語の入力画面が表示されることがある。だが日本語のWebページなら大丈夫というわけでもないようだ。例えば何度かGoogle日本語版のページで試してみたのだが、日本語ソフトキーボードは表示されず、英語版のソフトキーボードが出現するだけだった。このほか、日本語以外にフランス語やドイツ語のWebページで、各言語に対応した入力メニューが出現するかも試してみたが、実験中には英語版以外のキーボードは出現しなかった。100%現象を再現するためにはさらなる検証が必要だと思われるが、WebサイトのHTMLタグなどを読んで判断しているように見える。
前述のように、Google日本語版のページでは日本語ソフトキーボードが出現しないため、日本語での検索キーワードの入力はできない。よって、せっかく日本語ソフトキーボードがあってもこのままでは日本語のページはほとんど検索できない。だが日本語入力が可能なページでURL入力画面を出現させると(画面の一番上までスクロールさせればURLが表示される)、そこに一緒にGoogle検索用の窓が出現するため、ここに日本語キーワードの入力が可能になる。この方法を使えばGoogle.comを使って日本語による検索結果の一覧が表示されるようになる。
これをさらに応用すれば、日本語キーワードを維持したまま画像検索やニュース検索が可能になる。一方で地図検索はうまく動作しないようだ。iPhoneではGoogleのWebページ上でGoogle Mapの呼び出しが発生した場合、自動的に内蔵のGoogle Mapアプリケーションを実行するようになっている。だが日本語キーワードを維持したままGoogle Mapにジャンプしようとすると、うまく地図検索が働かない。エラーが出て終了するか、単純に「日本」というひとくくりで検索結果が表示されたりする。
1つ興味深いのは、日本語入力が可能な状態でもURL入力を行おうとした場合、ソフトキーボードが強制的に英語版のものへと変化すること。ちゃんと入力フィールドに応じてキーボードの種類をSafariが自動的に使い分けているようなのだが、これでは日本語ドメインへジャンプすることができない。今後の研究が必要だろう。
もう1つはメールの送信方法だ。日本語入力用のソフトキーボードが出現するのはSafariだけなので、MailやGoogle Map、YouTubeといったアプリケーションでは日本語入力が利用できない。ところがSafariを起動してGmail経由でWebメール機能を呼び出すと、普通に日本語入力が可能となる。この方法ならiPhoneを使った日本語メールの送信も可能だ。
11月9日に欧州版iPhoneが登場する以上、旧バージョンがソフトウェアアップデートでの多言語対応を頑なに拒む理由は少ないと考えられる。実際、偶然にもすでに日本語入力メニューが取り込まれていることが分かった。9月27日から配布が始まったiPhoneのアップデータは、150Mバイト以上もある容量の大きなもので、日本語以外の主要言語をサポートしている可能性は非常に高いだろう。現時点では意図的にメニューの種類を切り替えられるかだけがiPod touchとの差なので、ソフトウェアを変更する手間はほとんどないと思われる。Appleの腹積もり1つでは、11月の欧州版発売を待たずして、比較的早期のアップデートで対応してくることになるかもしれない。
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