連載
» 2007年10月25日 17時50分 公開

韓国“ビッグ3”が狙う日本のモバイルゲーム市場韓国携帯事情

最近、日本で韓国メーカー製のモバイルゲームが続々とリリースされている。これらのゲームは本国の韓国ではどのような評判を得ているのだろうか。韓国のモバイルゲーム市場の今を追った。

[佐々木朋美,ITmedia]

 韓Nexon Mobileは9月末、携帯向けゲーム「メイプルストーリー」など数タイトルを、日本の携帯電話キャリア3社に提供すると発表した。Nexon Mobileは「韓国で初めて、日本のキャリアに直接ゲーム提供を行う企業」(同社)であり、大きな意義があるとコメントした。さらに同社は、韓国の人気歌手である“SS501”が登場する「ギフト〜SS501との距離〜」を配信すると発表し、今後日本で積極的に展開していくことを明らかにした。

photo GamevilがロシアのGear Gamesとパブリッシング契約を締結し、米AT&T Wireless向けにサービスしている「ART of WAR」。戦略シミュレーションゲームだ

 現在日本には、韓国のモバイルゲームメーカーが数多く進出している。そのうちの1社、スミスアンドモバイルは2006年に日本支社を設立し、NTTドコモやソフトバンクモバイル向けにゲームを提供している。彼らが提供するゲームは、Mobicle、mcookieといったゲームスタジオが手がけるタイトルであり、自身はキャリアへゲームを流通させる役割を果たしている。

 「ぽんぽんストーン!」や「NOM」といった代表作を持つのが、モバイルゲームメーカー大手のGamevilだ。米国にもGamevil USAという現地法人を設立しており、これまでにCingularやVerizon Wireless向けに自社ゲームを提供したり、ロシア製のゲームタイトルをAT&T Wirelessを通じてサービスしたりしている。

 このほかにもCom2usという企業が、日本の携帯3社に「青春!ゴルフじいちゃん」という3Dゴルフゲームを提供している。ゴルフで良いスコアを出し続けると、初めは老人だったキャラクターがどんどん若返るというゲームだ。

 これら、日本に進出した韓国製のモバイルゲームのうち、本国で大きな人気を得ているのがぽんぽんストーン!とNOMだ。どちらも韓国では最新版がリリースされている。

 ぽんぽんストーン!は“水切り”をテーマにしたゲームで、KTF向けに第3弾のサービスが開始されたばかりだ。アイテムやステージが充実し、画面デザインもパステル調になった。キャラクターもかわいらしさが増し、よりポップな世界観でゲームを楽しめる。

 NOMは、シルエットの主人公がさまざまな障害を乗り越えていくゲームで、画面の上下左右を自由に動くことができるアクションゲーム。第1弾と第2弾は計250万ダウンロードを記録し、7月に発表されたNOM3は、SK Telecom(以下、SKT)とKTFだけの販売にも関わらず10日で10万ダウンロードを記録した。アイテム販売も好調で、Gamevilが売り上げているアイテムの中で、NOM3に関連するものが40%近くあるという。

photophoto ぽんぽんストーン!は、いわゆる水切りをするゲームだ(左)。シリーズで初めてカラー化したNOM3。シルエットの人物が障害物を乗り越えていくというシンプルなゲームだが、その単純さと、キャラの動きに合わせて携帯電話ごと画面を回転させるユニークさが人気だ(右)

日本に続々と上陸する韓国のモバイルゲームメーカー

 Com2us、Gamevil、Nexon Mobileの3社は、韓国モバイルゲーム界のビッグ3といえる企業だ。2006年の売上高は、Com2usが197億ウォン(約25億円)、Gamevilが112億ウォン(約14億円)、Nexon Mobileは87億ウォン(約11億円)に達している。それぞれの企業は体質がやや異なっているのが興味深い。Com2usは数多くのヒット作を抱えるモバイルゲーム専門企業で、唯一KOSDAQ市場に上場を果たしている。Gamevilは大変ユニークな内容のゲームが多いことから制作能力への評価が高く、Nexon Mobileは親会社Nexonの人気オンラインゲームのモバイル版を出すことで、ユーザーをモバイルゲームに引き込んでいる。

 業界内の競争は大変激しく、その分浮き沈みも激しい。Com2usは2006年に、携帯電話でMMORPGを楽しめるというコンセプトの「アイモ」を発表したため売上が好調だった。2007年は「NOM3」「ぽんぽんストーン!」の続編を発表しているGamevilや、日本のキャリアへゲームを提供することになったNexon Mobileの健闘が目立っている。

 また、マーケティングもエスカレートする一方だ。ユーザーを確保するため、テレビや雑誌での広告はもちろん、欧州旅行券などの豪華なプレゼント攻勢、人気ドラマとの提携によるドラマゲームの制作、全国の高校を行脚してのパーティイベントまで行われている。速いスピードで淘汰されるモバイルゲーム業界は、キャリアや端末メーカーのように、大手数社による寡占市場が構成されつつあるようだ。

韓国での人気ゲームは

 では実際に、韓国ではどんなゲームが人気があるのだろうか。各キャリアが発表している、人気ゲームは下記の通りだ。あわせて、韓国最大の検索ポータル「Naver」で多く検索されているモバイルゲームの人気ランキングも紹介する。

photophoto キャリアごとの人気ゲーム(左)、Naverで多く検索されているモバイルゲームの人気ランキング(右)

photo 韓国インターネット産業振興院による「2006 無線インターネット利用実態調査」による、ゲームジャンル別のモバイルゲーム利用割合。同調査は満12歳以上の携帯電話保有者3008人に対し、2006年9月1日〜30日の間に行われたもの。(資料提供:韓国インターネット振興院)

 中でも注目なのは「ピーマンマッゴ」だ。マッゴというのは2人以上で行う「ゴーストップ」という花札ゲームのこと。花札は韓国でも多く楽しまれているカードゲームで、さまざまなプラットフォームでゲーム化されている。韓国の国民的ゲームといえるスタンダードな遊びだ。

 また「Load of D」は、固定回線とモバイルの両方で楽しめる有線/無線融合型のオンラインゲームだ。PCで獲得したアイテムや、携帯電話で得た成績などがお互いに連動しているという意味で融合型ゲームと呼ばれ、こうしたゲームの中でもLoad of Dが草分けとなっている。

photo 「Dungeon and Fighter -Heroes」は、他のユーザーとパーティを作ることも可能。チャット機能もありPCに劣らない

 こうした有線/無線融合型ゲームは、今後のモバイルゲームの主流となりそうだ。Load of Dがある程度の成功を収めたことから、後に続くゲームタイトルが次々と登場している。アクションゲームの「Dungeon and Fighter -Heroes」もその1つ。もともとPC向けオンラインゲーム「Dungeon and Fighter」として有名だったが、最近これを有・無線連動型にバージョンアップした。Load of Dと異なる点は、すでに人気のオンラインゲームをモバイル対応にしたことだ。固定ユーザーの多くをモバイル版で獲得するのではと、期待されれている。

 SKTで人気の「英語脳襲撃」も注目だ。韓国では、2007年1月に任天堂のニンテンドーDS Liteが発売され、脳トレ系のゲームがちょっとした流行となって居る。モバイルゲームにもその兆候が飛び火しているのだ。

 タイトルに“頭脳”などとついたゲームが数多く出ているが、韓国では学校の勉強と結びつける傾向も出てきた。ゲームを楽しむのと同時に脳を鍛え、さらに英語力もアップするという一石三鳥の脳トレゲームは、メインユーザーである学生層に人気を集めている。

市場はまだ拡大する

photo ShowKing大戦で、モバイル囲碁ゲームで戦う参加者

 モバイルゲーム市場の活性化のため、さまざまなイベントも行われている。そのうちの1つがKTFによるモバイルゲーム大会「ShowKing大戦」だ。モバイルゲームを「暇つぶし用だけではない、1つのゲーム文化」(KTF)としてとらえ、レベル向上やゲーム文化育成を目指している。韓国最大のモバイルゲーム大会で、2007年で5年目を迎えた。

 大会は全19ゲーム(うち11ゲームはネットワークゲーム)の王者を決めるという内容で、参加は誰でも自由。8月8日から9月30日まで予選が行われ、それぞれのゲームの上位成績者5人ずつが10月7日の決勝戦に出場する。決勝はソウル市内の大規模遊園地内で、イベントの一環として行われた。

 KTFによると予選には100万人が参加したという。2006年の参加者は80万人程度だったというので、今回はこれを約20万人上回る人が参加したことになる。KTFでは今後ShowKing大戦を「いずれは国際的な大会に育てていく」と意気込んでいる。

 韓国ゲーム産業振興院が発行する「2007 ゲーム白書」は、韓国ゲーム企業400社と、1850のゲーム関連業者(インターネットカフェ、ゲームセンターなど)を対象に実施した調査をまとめたものだ。白書によると、韓国におけるモバイルゲームの市場規模は2390億ウォン(約304億円)で、2005年に比べると23%成長している。

 また韓国インターネット振興院による「2006 無線インターネット利用実態調査」によると、携帯電話でゲームを利用している人は50.7%で、そのうち32.6%は「端末にあらかじめ内蔵されていたゲーム」を利用していると答えている。インターネットからわざわざダウンロードしてゲームをする人は22.4%に過ぎないということだ。

photo 携帯電話でゲームを利用している人の割合(複数回答、単位:%)(資料提供:韓国インターネット振興院)

 だからこそ韓国は、まだまだ開拓しがいのある市場といえるだろう。そんな韓国市場にはすでに、米国のHands-On Mobile(Mforma)やElectronic Arts(EA)、仏GameLoftなど、海外のゲーム企業が支社を設立し、事業を展開している。

 前述したように韓国では今後、アイモやLoad of Dのような、モバイル向けのネットワークゲームが続々と登場すると予想される。それは、高性能化した端末と高速ネットワーク、共通プラットフォーム「WIPI」を生かす存在でもあり、ユーザーから長期的な収入が見込めるからでもある。

 PC向けオンラインゲーム大国となった韓国は今、モバイルでもオンラインゲーム大国を築こうと、業界内でゲームラインアップやシステムの充実を急いでいる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう