インタビュー
» 2007年12月19日 12時03分 公開

ファミリーマートとドコモショップがつながる理由――ドコモ九州 神尾寿の時事日想・特別編: (2/2 ページ)

[神尾寿,Business Media 誠]
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クレジットカード事業を通じた「地元との連携」が携帯電話事業にも貢献

 このようにドコモ九州ではiD/DCMXの普及・利用促進に力を入れているが、少し厳しい見方をすれば、それが「ドコモのビジネス」としてどれだけ効果を上げられるかという疑問も生じる。同社の本業は携帯電話事業であり、DCMXでクレジットカードのイシュアビジネスを手がけるものの、その収益が今後ドコモを支える柱にまで成長するかはまだ分からない。改正貸金業法によるクレジットカード業界全体の逆風を鑑みればなおさらだ。

 「まずはDCMXの事業性を高める、これはドコモにとって重要な取り組みです。その上で、これまで我々がDCMXの利用促進に取り組んできた経験でお話ししますと、ドコモがiD/DCMXに注力するメリットは、それ(クレジットカード事業の収益)だけではないのではないかと感じています。

 iD/DCMXの利用促進を通じて、iD加盟店とドコモの結びつきが強くなる。それによるドコモのメリット、ビジネス的な価値もかなり大きいと感じています」(石井氏)

 特に石井氏が手応えを感じているのが、九州では生活圏と職域がコンパクトにまとまっており、地元意識が高いところだという。地元の商店街や企業にiD加盟店が増え、そこでドコモとの共同キャンペーンが積極的に行われていることが地域に根ざしたPR活動やイメージ向上になると、石井氏は指摘する。

 「私も以前は東京勤務だったから分かるのですが、(首都圏)都市部では『生活』と『仕事』の場所が離れていて、消費をする場所もバラバラです。しかし、九州では生活・職場・消費のエリアがまとまっていて、地元の商店街や企業の影響力が強い。こういった地元のiD加盟店で、naviDなどDCMX関連のお得なサービスやキャンペーンを展開すれば、『ドコモはお得だよね』というイメージが広がります。

 地元の加盟店との結びつきを強くすることが、地元のコンシューマーの皆様との結びつきを強くすることになる。これは九州でおサイフケータイやDCMXの利用促進に取り組むようになって、強く感じることです」(石井氏)

他キャリアのユーザーにも“料金診断”を受けてもらえた

 さらに、iD加盟店とドコモショップの連携は、もっとダイレクトにドコモの携帯電話事業に貢献する手応えがあるという。その端緒となったのが、ファミリーマートとドコモ九州の共同キャンペーンだ。

 「ナショナルチェーンのコンビニエンスストアでも、九州や沖縄は地元密着で独立性が高い事業形態を取っています。ですから、ドコモ九州とは“地元企業同士”と言えるのですね。ファミリーマートは全国規模でiD導入をしていただきましたが、それにあわせて(今年の)9月4日から10月1日まで、ドコモ九州のドコモショップと九州・沖縄のファミリーマートで『レシートをもって、ドコモショップへ行こう』という相互送客の実験的なキャンペーンを実施しました」(石井氏)

 この相互送客キャンペーンでは、ファミリーマートで500円以上の買い物をした人がドコモショップ/ドコモスポット各店に赴いて料金診断を受けるとドコモダケのノベルティがもらえる。ファミリーマート側への送客は、ドコモショップで携帯電話を購入した人すべてにファミリーマートの100円割引券を提供するというものだった。なお、今回の共同キャンペーンは第一弾ということで、対象者をiD/DCMXの利用に限定せずに行ったという。

 「今回の相互送客キャンペーンは実験的なものでしたが、ファミリーマート側からは『予想以上のお客様がドコモショップから送客されてきた』と高いご評価をいただきました。

 ドコモ九州側でも、先着2万名分として用意した(ドコモダケの)ノベルティはキャンペーン期間中にすべて出払ってしまいました。当時はちょうど、auと(基本料金半額の)新料金プランの競争をしていた時期で、このタイミングで多くの人に料金診断を受けていただいたメリットは大きい。さらに我々の予想外だったのは、ファミリーマートから送客されてきたお客様のうち、全体の約1割がauやソフトバンクモバイルなど『他キャリアのお客様』だったことです」(石井氏)

 他キャリアのユーザーがドコモショップを訪れた理由の多くは、ドコモダケグッズが欲しい、という単純なものだったかもしれない。しかし、他キャリアのユーザーがドコモショップに足を運び、ドコモの携帯電話やサービスを紹介するきっかけが作れたことは、「本業である携帯電話ビジネスから見て、とても重要なこと」だと石井氏は話す。

 「例えば、今回のファミリーマートとの共同キャンペーンはiD/DCMXが前面には出ませんでしたが、それが“きっかけ”になったのは事実です。コンビニエンスストアとドコモショップという異なる店舗が連携するような試みは、我々がおサイフケータイやDCMXをやっていなければ考えにくかった。ドコモにとってDCMX事業は、10年後には収益の柱の1つになるでしょう。しかし、それだけでなく、いま現在の主力である携帯電話ビジネスへの貢献や結びつきも無視できないものがあります」(石井氏)

naviDをもっと育てたい

鹿児島ではマクドナルドの一部店舗でiD利用キャンペーンを実施している。同様のキャンペーンを実施しているのは東京・お台場エリアの一部店舗のみであり、全国的にも珍しいものだ。キャンペーン期間は1月18日まで

 2008年、ドコモ九州はnaviDを中心に、九州エリアでのiD/DCMXの利用促進と、おサイフケータイ分野全般の活性化をさらに進めたいという。

 「naviDは(ドコモ九州の)支店ごとのポータル構造をさらに充実させて、九州内でもさらに地域密着型のサービスとして育てていきたいと考えています。各iD加盟店との共同キャンペーンも引き続き力を入れて、ドコモ九州と連携するメリットを拡大していきます。そして、こういった取り組みの成果を、より多く、ドコモユーザーの皆様にご提供したいと考えています」(石井氏)

 地域にとけ込み、地元企業とともに発展する。地域性を重視するドコモ九州の取り組みは、九州におけるiDや各種FeliCaサービスの拡大に寄与している。

 ドコモは来年、全国を9つに分けた地域会社制をやめて全国一社体制に移行する(参照記事)が、今のドコモ九州に見られるような「地域性を大事にする」姿勢は失われないでほしいと思う。ドコモ九州の今後の取り組みを、期待を持って見守りたい。

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