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» 2007年12月26日 20時21分 公開

“シャープの強さ”が印象に残った2007年ITmediaスタッフが選ぶ、2007年の“注目ケータイ”(ライター神尾編)

今年の携帯端末を取り巻く環境は、新販売方式の導入という大きな変革期にあった。これを踏まえて今年のトレンドを総括すると“スリム”“高性能 ”“上質感”の3つが挙げられる。その上に家電ブランドを冠した機能特化やデザイン面での試みがあったという印象だ。

[神尾寿,ITmedia]
総合
順位 端末名
総合1位 SH905i(シャープ)
総合2位 920SH(シャープ)
総合3位 W53CA(カシオ計算機)
部門賞
部門名 端末名
デザイン部門 THE PREMIUM 820SH / 821SH(シャープ)
テクノロジー部門 N905iμ(NEC)
商品企画部門 913SH G TYPE-CHAR(シャープ)
特別賞 iPhone(アップル)

 振り返ってみれば、今年の携帯電話を取り巻く環境は大きな変革期にあった。その要因は新販売方式である。ソフトバンクモバイルの「新・スーパーボーナス」から始まった販売方式の変更は、モバイルビジネス研究会の影響もありNTTドコモとauも追随。割賦払いや利用期間が設定された購入補助金の導入により、新販売方式は“端末利用期間が伸びる”傾向に舵が切られた。

 この環境変化を踏まえて今年のトレンドを総括すると、“スリム”“高性能 (高速通信&フルワイド液晶)”“上質感”の3つになる。その上に、テレビやカメラのブランドを冠した機能特化やデザイン面での様々な試みがあったというのが今年の印象だ。

「ベストバランス」の一言に尽きる――SH905i

photo SH905i

 2007年の携帯電話市場で、ターニングポイントになったのがドコモの「905iシリーズ」だ。全機種がHSDPAとフルワイドVGA、国際ローミング(3G+GSM)に対応し、GPSやおサイフケータイなど現在の必須機能をすべて網羅。大半の機種がワンセグにも対応し、デザインと質感も大幅に向上した。905iシリーズは、まさに全方位で弱点なしの“フルスペックモデル”が連なるラインアップになっている。

 この粒ぞろいの905iシリーズの中で“バランスのよさ”でひときわ光るのがシャープの「SH905i」だ。同機は905iシリーズで底上げされた性能と機能をすべて搭載しながら、厚さ16.9ミリ/横幅48ミリのスリムボディを実現している。フルスペックでありながら、日常での使いやすさを左右する“持ちやすさ”で妥協をしなかった姿勢を高く評価したい。

 また、今年の流行だったブランドケータイのような派手さはないが、SH905iは中身も充実している。特に目をみはったのが“液晶のきれいさ”だ。シャープの液晶の美しさには定評があるが、それにしても3インチ フルワイドVGAの新モバイルASV液晶の美しさはすばらしい。さらに解像度の向上にあわせて文字フォントやユーザインタフェースの見直しも行われているため、液晶の性能向上が見やすさと使いやすさにつながっている。液晶まわりの総合力がずば抜けて高いのだ。

 一方、デザイン面では“上質感”がうまく表現されている。フォルムは回転2軸とオーソドックスだが、金属調の表面処理と金属蒸着部分に透過処理されたLEDが美しく、上品な感じだ。写真で見るより実物の方が質感の高さが分かる端末である。長く使ってもあまり飽きず、プライベートからビジネスまでシーンを選ばないデザインと言えるだろう。若い人には物足りないかもしれないが、大人が安心して持てる上質な造りだ。

 ユーザーインタフェースではシャープのお家芸である「ショートカット」と「長押し」、先代よりしつけられた「TOUCH CRUSER」の性能向上が使いやすさにつながっている。しかしその一方でカーソルキーやファンクションキーが小さく、筆者の指では押しにくいのが不満点。表面がフラットで滑りやすいこともあり、爪の長い女性にも押しにくいだろう。カーソルキー周りはSH905iのほぼ唯一の弱点であり残念だ。次期モデルでは、TOUCH CRUSERのさらなる進化とともに、「カーソルキーとの併存」でうまい解決策を見つけてほしいと思う。

 筆者は毎年のベスト端末を、その時々の“スタンダードモデル”たり得るかどうかで決めている。機能・性能とデザイン、総合的な使いやすさ。これらが絶妙にバランスし、今年の黄金分割を見いだしたモデルとして、SH905iを今年No.1の端末に選びたい。

AQUOSケータイはどこまで進化するのか?――920SH

photo 920SH

 シャープの代表モデル「AQUOSケータイ」。その4代目の「920SH」(ソフトバンクモバイル)は、3.2インチフルワイドVGAのNewモバイルASV液晶を搭載し、HSDPAや国際ローミングもサポート。一方で厚さは18ミリに抑えられ、サイクロイド液晶を持つ独特のフォルムは今までよりもスタイリッシュに進化した。

 920SHはAQUOSケータイの集大成ともいえる内容であり、スペック的にはSH905iを超える。特にBluetoothに対応したのはSH905iよりも高く評価したいポイントである。質感の高さも相当のもので、新スーパーボーナスを前提にしっかりと“お金がかかっている”ことが分かる端末である。単純に“モノとしての魅力”で見れば、今年No.1と言ってもいいかもしれない。

 では、なぜ筆者が920SHをNo.1に選ばなかったのか。

 その理由はただ1つ。横幅だ。SH905iが横幅48ミリであることに対して、920SHは横幅50ミリ。たった2ミリの違いだが、実際に手に持つと、やはり「50ミリを下回る」違いは小さくない。だが、総合力で比べれば920SHは僅差での2位である。

 デザイン面ではスリム化を果たしたサイクロイド機構であるが、機能と性能は従来よりさらに進化した。ワンセグの表示能力が高いのはもちろんだが、“横向き画面”の活用範囲がさらに広がりPCサイトブラウザやYahoo!ケータイ、メールまで利用可能になったことは高く評価したい。今年は富士通の「F904i」と「F905i」や、VIERAケータイの名を持つ「P905i」など、ディスプレイを横向きに使う端末が増えたが、ワンセグ以外での活用や操作性の高さはAQUOSケータイの独壇場だ。やはりこの分野を切り開いた本家は強い。

 こうして振り返ると、920SHはAQUOSケータイの弱点を徹底的に解消した集大成といえるレベルに達している。来年、AQUOSケータイはさらに進化するのか。それとも、3キャリア展開と急速な新モデル投入でややマンネリ感も出てきた現在のスタイルを捨てて、AQUOSケータイは新境地に向かうのか。AQUOSケータイの今後にも期待である。

カメラ重視でW41CAを進化。使いやすさが秀逸――EXILIMケータイ W53CA

photo EXILIMケータイ W53CA

 昨年、筆者がベスト端末にノミネートしたのがカシオ計算機製の「W41CA」だった。当時のハイエンド機能をスリム&使いやすくまとめたパッケージングの良さは秀逸で、黄金分割的な絶妙のバランスを評価してのNo.1選定であった。

 今年、No.3のモデルとしてノミネートする「EXILIMケータイ W53CA」はW41CAの進化形でありカメラ機能を重点的に強化したモデルだ。

 W41CAの“正統進化”と位置づけられる端末としては、春モデルのW51CAがある。しかし、これは機能や性能的な向上が乏しく筆者の目にはW41CAの人気に当て込んだ焼き直しに写った。W41CAのバランスのよさをベースに全体的な性能の底上げを施し、なおかつカメラ機能が強化されたW53CAこそ“W41CAの後継”にふさわしいと思う。

 W53CAの中身であるが「EXILIM」の名を冠したカメラ周りの高性能は言うまでもなく、むしろ積極的に評価したいのはカシオらしい“使いやすく親しめるUI”だ。キーの配列やタッチ感、ソフトウェアのメニュー構成を筆頭に、UIは細やかな配慮が行き届いたものであり使いやすさは抜群だ。そのうえ、ペンギンから代替わりしたカツオのキャラクターがこれまたいい味を出している。UIの善し悪しは個人的な好みもあるが、総合的な使いやすさや親しみやすさでみれば、カシオ製端末のUIはシャープを上回ってNo.1だ。使いやすく、使うほどにうれしくなる。手になじむ感覚のUIが作れることは、カシオの強みである。

 一方、スペック面で見ればカメラ機能が重点的に強化されているだけでなく、2.8インチ ワイドVGA IPS液晶の搭載が評価できる。この液晶は画面サイズこそ従来機と変わらないが高解像度化で表現力が上がっている。今年のauは、冬商戦モデルに有機ELのQVGA液晶を大々的に採用した結果、画面解像度では“スペックダウン”してしまった。2007年のauの端末ラインアップの中で、W53CAは貴重なワイドVGA搭載機である。

 このようにW53CAは総じて魅力的な端末であるが、“フルスペック化”を果たしたSH905iや920SHに比べて、性能や機能面でやや力不足だったことも事実だ。液晶サイズや国際ローミング(3G+GSM)対応で出遅れ、デザイン・質感ではもう少し高級感を追求してほしかった。W53CAは素地がいいだけに、「しっかりとコストをかけていれば……」と残念な気持ちになる。次期モデルでの躍進に期待したい。

デザイン、テクノロジー、商品企画の部門賞は?

 さて、ここからは特定の分野で秀でた端末を「部門賞」としてノミネートしていく。総合のベスト3に入れていない、それぞれの分野で際だつモデルとして今年の端末市場を大いに盛り上げてくれた。

  • デザイン部門「THE PREMIUM 820SH/821SH」

 スリム、金属素材、上質&高級な雰囲気、そして豊富で魅力的なカラー。今年の端末デザインのキーワードをすべて網羅し、この分野におけるソフトバンクモバイルの存在感を印象づけたのが、「THE PREMIUM 820SH」と「THE PREMIUM 821SH」である。

photophoto 左:THE PREMIUM 820SH 右:THE PREMIUM 821SH

 820SHと821SHは、スペック的には今年のエントリーモデルに位置づけられる平凡なもの。またデザインもパッと見ではINFOBAR 2のような派手さはない。しかし、INFOBAR 2が先代の魅力だったシンプルさを失いやや豊満なデザインになってしまったことに反して、820SH/821SHのデザインはすっきりとまとまっている。また、薄さを演出しながら、ワンセグとおサイフケータイをきちんと搭載し機能面でも妥協していない。プロダクトデザインとしての完成度はずば抜けて高く美しい。デザイナーズモデルではないが、今年もっともデザインが優れていたモデルである。

  • テクノロジー部門「N905i/N905iμ」

 N904iでHSDPA対応を早々に果たしたNEC。同社に冬商戦向けに用意したドコモ端末が「N905i」と「N905iμ」だ。どちらもHSDPA時代に合わせてタブブラウザの搭載やメールでのインライン入力対応など、通信関連の機能が大幅に強化されている。また、N905iは500万画素級のカメラを搭載したハイスペックモデルとして冬商戦の出だしも好調だ。

photophoto 左:N905i 右:N905iμ

 N905iとN905iμはどちらも優れた性能を持つが、筆者が特に評価しているのはN905iμの方だ。こちらはカメラ機能やワンセグ搭載の部分こそN905iに劣るものの、今期のNEC端末で魅力となる通信関連の機能は同一。HSDPAや3インチフルワイドVGA液晶、国際ローミングなど905iシリーズの基本性能の高さはそのままで、12.9ミリの「iμ」クオリティのスリム化を果たしている。これだけのハイスペックを薄型化する技術力の高さは特筆すべきものがある。

  • 商品企画部門「913SH G TYPE-CHAR」
913SH G TYPE-CHAR(C)創通・サンライズ

 今年、もっとも“突き抜けた”商品企画といったら、「913SH G TYPE-CHAR」をおいてほかにはないだろう。こだわり抜いて企画と開発をしたソフトバンクモバイルとシャープの弾けっぷりは相当なものだ。今までもキャラクター系の携帯電話やPHS端末は存在したが、ここまで企画開発に関わった人々が“熱くなっている”端末は記憶にない。

 最近の商品企画は綿密なマーケティングに裏打ちされた小利口なものが増えているが、そこから作り出された優等生的な端末に面白みはあるのだろうか。開発陣が社長に「お前はアホか」と呆れられるほどの独善的なこだわり。これこそが優れた企画の真髄だと思う。

 ソロバン勘定だけでは、おもしろいモノは作れない。ぬるい商品企画に喝をいれた存在として、913SH G TYPE-CHARを商品企画部門のNo.1としたい。

  • 特別賞「iPhone」
iPhone

 今年、携帯電話端末の世界に大きなインパクトを与えたのが、アップルの「iPhone」だ。正直、筆者はこの端末を使うようになってからしばらく、従来の携帯電話にまったく魅力を感じないほど“痺れて”しまった。iPhoneのコンセプトと練りに練られたUIには、それくらいのインパクトがある。日本のキャリアとメーカー関係者の中にも発売当時、iPhoneショックに呆然とした人は少なくなかった。

 iPhoneは携帯電話としてみれば確かに荒削りだ。しかし、そこには世界を変える力が確かにある。来年のiPhone日本発売に期待しつつ、特別賞としてノミネートしたいと思う。

“シャープの強さ”が印象に残った2007年

 さて、こうして今年のベスト端末を挙げてみると、2007年は今さらながら「シャープの強さ」を感じた年だった。同社はAQUOSケータイのヒットを追い風にし、店頭競争力の高さで時流に乗ったが、近ごろは総合力の高さで他のメーカーを大きく引き離している。

 一方、今年の年末商戦ではパナソニック モバイルコミュニケーションズとNECが大きく伸びて「復権」の兆しが見えた。また、らくらくホンで実績を作った富士通がじわりと勢力を伸ばしたことも印象的だった。

 来年は春商戦から新販売方式が定着し、ユーザーが端末を選ぶ目はこれまで以上に厳しいものになる。あたりまえだが「いいモノ」でなければ売れないのだ。安易なコスト削減や中途半端な商品企画でお茶を濁さず、ユーザーがストレートに魅力を感じ、物欲にクラクラと目がくらむような端末を投入してほしい。

神尾寿

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、大手携帯電話会社の業務委託でデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。通信分野全般に通じ、移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで見ている。ジャーナリストのほか、IRICommerce and Technology社レスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。


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