ブランドケータイに“両面”ケータイ、海外モデルは個性派ぞろい:ITmediaスタッフが選ぶ、2007年の“注目ケータイ”(ライター山根編)

» 2007年12月27日 14時57分 公開
[山根康宏,ITmedia]

 2007年、大手5社が海外で発売した端末はざっと数えても150機種を超える。これに中小メーカーやHTCなどのスマートフォンを加えればその数は倍以上になるだろう。これらの中で最も話題になった端末はAppleの「iPhone」であることは間違いなが、まだ一部の国でしか販売されていないことから「印象」という点ではやや物足りない部分もある。筆者の印象に残った端末はやはり世界中で販売された端末の中にあるのだ。それらの中から3機種をピックアップしてみた。

2007年はブランド携帯の年――The PRADA Phone by LG

「The PRADA Phone by LG」

 日本国内、海外を問わず、2007年における携帯電話業界でのキーワードの1つがブランドケータイであることに異論を挟む人はいないだろう。これまでもブランド名を冠した端末はいくつか販売されたことがあったものの、イタリアのPRADAと韓国のLG電子がコラボレートした「プラダケータイ」こと「The PRADA Phone by LG」は端末の販売方法やパッケージングなどすべてをPRADAがコントロールした、真のブランド品と呼べる携帯電話だ。

 製品のパッケージングもPRADAそのものであり、物理的なキーを廃し3インチの液晶ディスプレイを指先でタップする操作性など、これまでの携帯電話の概念を大きく覆した斬新さも強い印象を与えてくれた。ちなみにiPhoneも似ている部分はあるものの、サイズの大きさや機能の点で「おしゃれなガジェット」という印象であり、「ブランド品」という重厚さではThe PRADA Phone by LGが勝っていると筆者は感じている。

 また端末そのものの魅力ではなく、LG電子の印象を大きく向上させる効果もあった。同社はチョコレートフォンやShineなど、デザインに特化した端末を製品の柱に据えることで、大手他社の「多品種戦略」とは一線を画す戦略を取っている。The PRADA Phone by LGを発売したことは“ファッションセンスにも優れたメーカー”という強い印象を消費者に与えられただろう。

 このThe PRADA Phone by LGの登場は、ArmaniがSamsungと組んで自社ブランド携帯を発売するなど、他の有名ブランドにも影響を与えている。2008年もブランド携帯が多数出てくるだろうが、そのブームを作った端末はまさしくThe PRADA Phone by LGとなるだろう。その意味でも本製品が今年最も印象に残った端末であった。

見た目はフツーでも実は中身はスマートフォン――Nokia 6120 classic

 SamsungがMotorolaを追い抜き、Sony Ericssonが大幅に躍進するなど、トップシェア5社の動きもめまぐるしい1年だったが、話題になる製品の数はやはり王者Nokiaが一番多かったように感じる。特に2007年は待望のCommunicatorシリーズの最新作である「E90 Communicator」が発売されたり、カールツァイス製500万画素カメラユニットやGPSを内蔵した「N95」と「N82」が相次いで登場するなど、同社のハイエンドスマートフォンのラインアップがさらに拡充された年でもあった。しかし最も印象に残る端末は、一見すると派手な機能のないシンプルなスマートフォン、「Nokia 6120 classic」(以下6120c)だ。

「Nokia 6120 classic」

 6120 classicは、見た目は小型のストレート端末のようである。しかし6120 classicはHSDPAに対応したS60スマートフォンであり、多機能の「携帯電話」ではないのだ。S60のネイティブアプリケーションが走り、完全なマルチタスク操作ができる。ディスプレイが2インチのQVGAと小型だが160万色表示対応で発色もよく、カメラは2メガピクセルを備えるなど普段の使い方には十分だ。またBluetoothプロファイルはA2DPに対応し、microSDカードが利用できるため音楽プレーヤーとしても問題なく利用できる。スマートフォンだからメールを書きながら音楽を聴くことも当然できる。

 また小型であることから女性などが手軽に使う端末としても人気があるようだ。本体カラーも黒、白、ピンクなどをラインアップし、艶のある表面処理で明るいイメージを出すなど、スマートフォンらしさを感じさせない。さらにHSDPAに対応しているため、例えば普段は通話端末として使いながらも、ビジネスシーンではBluetoothでノートPCと接続して高速モデムとして利用する、といったことも可能なパワフル端末でもあるのだ。

 さらに価格が安いのも魅力で、6120 classicのSIMロックなしの定価は3万円台であり、HSDPAに対応したスマートフォンとしてはかなり安価な部類に入る。また世界中の多くの通信事業者がSIMロックをかけたり固定回線の契約を結ぶことで無料で販売しているケースも目立ち、発売以来、各国でベストセラーになっているという。今では海外でも端末の価格が安いが、無料端末になるとローエンドやエントリーモデルであることが多い。しかし6120 classicは前述したように見た目は普通の携帯電話でありながらも、中身はれっきとしたスマートフォンなのだ。

 ノートPCの世界では、ASUSTekが発売した低価格ノート「Eee PC」に話題が集まっている。スペックは低く、目立った機能は備えていない。しかしWindows XPが動き普段の利用には十分な「パソコン」であり、見た目もおしゃれで万人が手軽に買いやすい価格で提供されている。6120 classicはまさにその携帯電話版ともいえる端末で、多くの消費者にスマートフォンを提供するためのNokiaの隠し玉といえる存在ではないだろうか。“派手な端末だけではない”という、Nokiaの端末戦略を印象づけられたのが6120 classicなのだ。

「変なケータイ」No.1はWNDの両面ケータイ――Wind DUO 2000

 一方で中国メーカーを中心に、企画モノやジョークとしか思えない変な端末が多数登場したのも今年の特徴だ。スタイルではタバコや自動車の形を模したもの、機能ではSIMカード2枚差しやBluetoothヘッドセット内蔵型など興味深い端末ばかりであり、インパクトという点ではいずれも甲乙付けがたい。しかしもっとも印象に残ったのは、メーカーの「本気度」が感じられた製品だ。

 韓国のWND Telecomが発売したWind DUO 2000はなんと両面ケータイである。1台で2つのアンテナを内蔵し2つのSIMカードで2つの電話番号を使える端末は中国では珍しくないが、この端末は表も裏も携帯電話。実はこの端末のオリジナルは倒産した韓国のVK Mobileが出していた厚さ8.8ミリの薄型端末VK2020のようである。メーカー倒産後にWNDが工場などを買い取ったのかどうかは不明だが、端末の正面デザインが全く同一であることからこのVK2020を2枚張り合わせて製品にしてしまったものが「Wind DUO 2000」のようだ。この“2枚張り合わせ”というアイディアにとにかく脱帽してしまう。

「Wind DUO 2000」

 機能としては3バンドのGSMに対応した普通の携帯電話であり、背面がないことからカメラも搭載していない。しかし国境を頻繁に越える時や料金体系の異なる2枚のSIMカードを併用する場合など、これまで2台必要だった携帯電話が1台で済み、しかも表裏で使い分けが可能なのは意外と便利である。オリジナルの端末のできを損ねないよう高級な作りにしているのも好感が持てる。数ある「面白」「変」ケータイの中でも、メーカーの意気込みがここまで感じられる印象的な端末はなかなかない。

山根康宏

香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や、海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆しているほか、コンサルティング活動も行っている。携帯コレクターとしても知られ、所有する海外携帯電話の数は約500台。


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