色あざやかで光沢と透明感を兼ね備えるカラーリング、今までのやや無骨な“防水ケータイ”のイメージを覆す丸みを帯びたラウンド形状のボディ。2008年ソフトバンクモバイル夏モデルの中でもひときわ“若々しい”存在感を放つパナソニック モバイルコミュニケーションズ製端末が「TROPICAL 823P」だ。
このTROPICAL 823Pは、パナソニック モバイルにとって初の防水ワンセグケータイとして開発された。防水化はどれだけ大変なのか、そしてこのデザインの真意は何か。パナソニック モバイルのTROPICAL 823P開発チームに聞いた。
TROPICAL 823Pは、ソフトバンクモバイル夏モデルの大きなテーマの1つである「女性」をターゲットに企画された。2008年春モデル「920P」をベースに開発され、3インチのフルワイドディスプレイやアンテナ内蔵型のワンセグ機能、おサイフケータイ(S!FeliCa)、AF(オートフォーカス)+6軸手ブレ補正機能付きカメラなど、ミドルクラスの8xxシリーズとしてはかなり高い機能を備える。同じく夏モデルとして発売する「MIRROR II 824P」は機能がほぼ共通の姉妹機にあたる。
「“アクティブな女性”をターゲットにした防水端末を開発するにあたり、まずスペック面でも妥協のないものにしないと、と思いました」(同社商品企画の井端優介氏 以下、井端氏)
防水ケータイとして最大(2007年7月現在)となる3インチのワイドディスプレイとワンセグ機能、さらに内蔵アンテナといった仕様を煮詰め、そこから「いかに防水するか」という設計に取り組んだ。
「パナソニックにはシェーバーや海外向けムービーカメラなどで培ってきた防水技術やノウハウがありました。まずはそれを学び、携帯にどう反映できるかを議論することから始めました。ただ、今ある防水技術やノウハウをそのまま携帯に持ってくるだけでは“いかにも防水”のような、やや無骨なデザインなってしまいがちです。“それは避けたいね”という議論は当初からしていました」(設計担当の粂信吾氏 以下、粂氏)
「今回はデザイナーから、“形状は一見防水らしくはない。でも徹底してみずみずしい”をイメージしたデザインプランを早期にもらっていました。そのプランを実現することが目標でした」(プロジェクトマネージャーの高橋哲氏 以下、高橋氏)
同社初の防水ワンセグケータイは、仕様だけでなくデザインも先に決めた上でのチャレンジだった。
「みずみずしいデザイン」というデザインイメージとともに、TROPICAL 823Pは“いかにも防水”という印象を受けない。むしろ、丸みを持たせたシンプルなスタイルは防水ケータイらしからぬものと驚きがあるかもしれない。手にしてみると、透明感と光沢が一体化したデザインが不思議と水辺によくなじむと感じる。これを表現するにあたり、デザイン担当の藤田弘志氏が開発チームに示した具現化イメージは「石けん」だった。
「デザインするときに最初に思ったのは、“防水ケータイだからといって、防水であることをことさら形状で主張しなくてもいいのではないか”ということでした。このため、水に強いことをあえて強調するのではなく、水辺にあって自然にとけ込むものに仕上げたいと思いました。そこにふと浮かんだのは“石けん”のイメージでした」(藤田氏)。
石けんのような丸みを帯びた形状なら手の小さな女性も手にとりやすく、“角”がないのでお風呂やプールサイドなど、肌を露出する場所でも安心して使える。
しかし、こうしてデザインされた丸いデザインは設計担当からするとかなりの難敵だった。曲面が増えるとそれだけ内部にデッドスペースが生じ、総じて同じ大きさにするなら内部の部品を配置するスペースが厳しくなる。
「ディスプレイをひとまわり小さくすれば少しは簡単だったかもしれません。ただ、ケータイを開いたときに“なんだか画面が小さいな”とがっかりさせたくありませんでしたし、他社にはない防水ワンセグ最大の3インチというサイズは妥協したくありませんでした。ただ、できあがってから考えると、よくこの中に納められたなというのが正直なところです」(高橋氏)
キーのクリック感やボタンサイズを中心とする“使い勝手”にも防水だから妥協するのではなく、防水だからこそこだわりを込めた。
「ここまで丸い形状だと、普通ですと指がかかりにくく開けにくいことがあります。これを一発で解決するのが“ワンプッシュオープン”です。ボタンをひと押しするだけでスマートに開けられますから。そういう意味でも、パナソニックならではのこのデザインと防水性能をどうしても両立させたいと思っていました」(藤田氏)
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