「iPad mini」 ノウハウが凝縮された“中身”を分解して知るバラして見ずにはいられない(2/2 ページ)

» 2012年12月28日 20時09分 公開
[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]
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頑張る日本製部品たち

 限られたスペース、限られた電力といった過酷な環境下で高性能を発揮するのが日本製品だ。世界シェアを独占している製品も少なくない。その筆頭は旭化成の3軸地磁気センサー(電子コンパス)「AK8963」だ。タブレットに限らず、携帯電話やスマートフォンに搭載されている地磁気センサーは、ほぼ例外なく同社の製品である。どちらが北かを示し、地図ソフトなどと連動して活躍している。今では、これなしの生活は考えられない、というほど普及したが、使いやすいアプリに加え、肝心要のセンサーが高性能を発揮し、タテヨコ2mm程度でモバイル端末にも搭載可能なほど小型化され、大量生産が可能で、しかも安いという優れた特性がなければ、モバイル地図は日の目を見なかったかもしれない。

 このほかに、日本が圧倒的な存在感を示す部品はフラッシュメモリーである。写真や音楽を保存するスペースで、iPad miniでは16Gバイト、32Gバイト、64Gバイトモデルがある。保存スペースが4倍になったからといって基板上に追加スペースが用意されるケースは少なく、通常は同じスペースで4倍の容量を実現しなくてはならない。iPad miniもそうである。ICチップを横に並べられない場合、タテに積むしかない。東芝の64Gバイトフラッシュメモリーは8GバイトのICチップを上に8枚重ねていると推定され、ICチップ製造ノウハウに加え「積層技術」でも世界の先端を走っている。今回調査した16Gバイトモデルには韓国Hynixの製品が搭載されていた。低容量のフラッシュメモリーは東芝に加えSamsung、Hynixなどの製品である場合が多いが、64Gバイトは東芝がシェアをほぼ独占している。

Photo iPhone 5に搭載されていた、村田製作所製の無線LANとBluetooth機能をつかさどるモジュール。内部はこのようになっている

 村田製作所の無線LAN兼BluetoothモジュールはiPad miniをはじめ世界の多くのモバイル機器で使用されている。黒い電子部品が多い中、白銀で目立っている。この白い部品の内部には、Broadcomの無線LANとBluetoothの混載IC、東京電波の水晶デバイスが搭載されていると推定される。これらの推定は、iPhone 5に搭載されている同社製品の調査結果に基づくものである。

 iPad miniではさらに2個の水晶デバイスが搭載されており、両方ともセイコーエプソン製である。基準周波数を生成する音叉水晶デバイス、プロセッサー脇に位置する水晶振動子である。水晶デバイスは通信機能が1つ増えると1個増えると言われている。例えば今回のiPad miniに3Gデータ通信機能が搭載されれば水晶振動子が1個、NFC(近距離無線)が搭載されればさらに1個という感じである。日本、韓国、台湾、ニュージーランドなどの企業が激戦を繰り広げており、比較的搭載部品メーカーが安定しているアップル製品の中で、入れ替わりの激しい分野である。

タブレットが直面する課題

 タブレットは登場から2年半が経過し、ユーザーにとって好ましい形状や仕様の定義がほぼ確立され、個体差はなくなりつつあるといえる。バッテリーの稼働時間も、端末の使い方により多少のばらつきはあるが、分解してバッテリーに記載されている定格などを見ると、ほぼ各社横並びである。ちなみにiPad miniのバッテリーは3.72V、4440mAhであった。

 形状がほぼ同じとなると、残る違いはOSと価格が大きな要素となる。iOS対応機をリリースしているのは今のところアップルのみであり、百花繚乱のAndroid OSと比較すると価格押し下げ効果は限定的だ。しかしタブレット市場におけるアップルのシェアは2012年の65%から2013の57%に緩やかに下降すると予想されており、価格の安いAndroid OS採用タブレットへユーザーが流れる勢いが増せばば、アップルも価格面で何等かの対応を迫られると思われる。

 アップルはPCメーカーである。他社のタブレット端末もPCのOEM(受託製造)またはODM(開発から製造までを担当)が製造面で大きく関与しており、今後しばらくはPCメーカー間の戦いということになるのかもしれない。OSが違う点を除けば、あとは同じ土俵で勝負になるだろう。

これからどうなる?

 iPad miniに一世代前のA5プロセッサが搭載された理由は諸説ある。最大の理由と言われているのは、A6では消費電力が大きすぎてバッテリーが持たないという点である。しかしながらA5を含めアプリケーションプロセッサーは、どれだけ頑張って省エネに徹したとしても、電子機器の心臓部でもあり、大量の電力を消費する部品である事に変わりはない。しかしバッテリー駆動時間の改善は喫緊の課題であり、これをクリアする何らかの部品が求められている。

 その筆頭にあるのがディスプレイである。国内液晶メーカー各社は次世代パネルの特徴として「省電力」を挙げており、これまで電力消費の1/3程度を占めていたディスプレイは、ぐっと省エネになる。特にシャープの新パネル「IGZO」は液晶パネル内部にタッチパネルを作りこむ「インセル」と省エネが特徴で、同社が得意とする第六世代(ガラスサイズ1.5m x 1.8m)クラスの大型液晶パネル製造装置による中小型パネルの量産が軌道に乗ると、現在のモバイル機器の液晶パネルのシェアは大きく変わる可能性がある。

 またSamsungも次世代有機ELディスプレイとして「フレキシブルOLED」を同社の大型スマートフォン「Galaxy Note」に搭載(搭載機の発売時期は執筆時点では未定)する予定で、こちらも省エネ、薄型、軽量、そしてフレキシブルなので「割れない」をウリにしている。

 2013年はディスプレイが熱い話題をふりまく事になるだろう。

著者プロフィール:柏尾南壮(かしお みなたけ)

タイ生まれのタイ育ちで自称「Made in Thailand」。1994年10月、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズを設立し、法人格は有していないが、フリーならではのフットワークの軽さで文系から理工系まで広い範囲の業務をこなす。顧客の多くは海外企業である。文系の代表作は1999年までに制作された劇場版「ルパン三世」各作品の英訳。iPhone 4の中身を解説した「iPhoneのすごい中身」も好評発売中。主力の理工系では、携帯電話機の分解調査や分析、移動体通信を利用したビジネスモデルの研究に携わる。通称「Sniper Patent」JP4729666の発明者。


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