2013年4月26日、韓国Samsung電子がスマートフォンとしては世界で初めて8コア(動作的には4コア+4コア)プロセッサーを搭載した「GALAXY S4」を発売した。電子部品は基本的には処理能力が増えるとそれだけ多くの熱を発する。一方で、電子部品は熱に弱い。動作クロックの上昇とマルチコアが進むなか、ICメーカーやクーラーユニットメーカーなどが、「高性能なれど効果的な冷却」の解決に取り組んでいる。
しかし、ボディ内部の容積に制約のあるスマートフォンで処理能力の確保と発熱の抑制を両立するのは難しい。スマートフォンの中には、ほかの発熱の多い部品から離して実装する場合もある。NVIDIAのTegra 3(クアッドコア+省電力タイプの1コア)を採用した富士通のARROWS X F-10DやARROWS X F-02Eでは、発熱量の多いTegra 3と同じように発熱が多いDRAMを離して配置している。
ところが、GALAXY S4の韓国向けモデルで採用する8コアプロセッサー「Exynos 5410」は、DRAMをプロセッサーに重ねて載せる実装方法(Package on Package)を採用した。これは、プロセッサーとDRAMにおける「理想の位置関係」といわれている。プロセッサーは、処理するデータを一度DRAMに置く必要があり、お互いに高速で大容量のデータをやり取りしている。
このため、電気抵抗がより低くなるように短距離で両者を接続するのが性能確保のためには望ましく、それゆえに、プロセッサーの上にDRAMを載せる方法が現在のところ理想的といわれている。しかし、プロセッサーもDRAMも大量の熱を発するため、両者を重ねるとその部分だけピンポイントで高温になってしまう。この熱を確実に処理できるか否かが、スマートフォンで高性能を確保できるかの分かれ目となる。
GALAXY S4では、プロセッサーの上にDRAMを実装するブロックはディスプレイを向いて設置し、その上にマグネシウム含有と思われるプラスチックのパネルをボディ内部の全体を覆うように配置している。この上にディスプレイが載るが、ディスプレイとの間には放熱シートと思われる濃い灰色のシートと銅箔を敷き、1.5センチ角のプロセッサーとDRAMが放出する熱をボディ全体に拡散する仕組みとなっている。なお、これらのシートは電気的ノイズ対策を兼ねている場合が多い。
最近の端末は、その多くが熱対策としても同じ方法を採用している。部品から発生した熱をボディ全体に拡散するため、使用していると端末全体が温かくなる。GALAXY S4も金蔵含有プラスチック、放熱シート、銅箔など放熱効率の高い部材が多い点が特徴だ。それだけ、内部の発熱対策が重要ということを示している。
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