金沢工業大学 教授の牧野秀夫氏は、視覚障がい者用音声案内システムの測位情報としてみちびきを利用した実証実験の成果を紹介した。ここでは、市街地においてみちびきが示す測位情報をプロットしたマップから、それぞれの精度を示している。それによると、低層建築が並ぶ住宅街や、GPSでは精度が低くなる歩道でもみちびきの測位情報は正確にプロットする一方で、アーケードの中に入ると、依然として誤差が大きくなっている。
NTTデータの礒尚樹氏は、みちびきの測位情報(L1-SAIF)のデータフォーマットに用意しているエマージェンシーアラートメッセージの活用について紹介した。このメッセージ領域は212ビット長を確保していて、メッセージタイプとターゲットエリア(受信該当エリア)、災害タイプなどのデータを組みこんで、L1-SAIFの転送レート250bpsで送る。
NTTデータでは、この領域を活用したRedRescue(REal time Disaster REsponse using Small Capacity data from thw UniversE)システムを開発して、将来的にスマートフォンで利用できてアジア太平洋州までをカバーする広域一斉同報警報を発信して、ユーザーの現在位置と災害のタイプによって最も適切な行動を促すことを目指している。すでに、静岡市で南海トラフ地震を想定した運用検証実験も実施しており、ユーザーの自律的な避難行動の誘導に成功している。
ソフトバンクモバイルの永瀬淳氏は、種子島と屋久島で9月から10月にかけて実施したみちびき測位情報のランドマーク実証実験の結果を速報として紹介した。種子島の実証実験では、スタンプラリーと連動して一般参加者も含めた400名の参加者がモバイルルータータイプのみちびき測位情報レシーバーを使用したほか、島内の建物に室内補強測位システム「IMES」発信機を設置して、屋外と屋内の「シームレス測位」の精度も検証した。また、屋久島では、衛星信号の受信が困難な山岳地帯に進出し、島内の基準点と受信した測位情報を比較してその誤差を確認している。
種子島のスタンプラリーと連動した実証実験では、島内の主要道路を進む参加者の位置をほぼ正確にトレースし、GPSで誤差5メートル、みちびきで0.8〜3メートルの誤差にとどまったという。また、「シームレス測位」の検証では、屋外と屋内との切り替えでほぼ同じ場所でトレースができたと報告している。さらに、L1-SAIFのメッセージ機能を使ったピンポイント同報告知検証も行い、対象ユーザーのほとんどがメッセージを確認したという。
屋久島の検証では、基準点の測位情報が古く明らかに現在の位置からずれているだけでなく、基準点そのものがなくなっていたポイントが半分近くあったことも報告している。測位情報の誤差では、森林の中という悪条件において、GPSは50メートルの誤差を確認し、みちびきでも1〜2.6メートルの誤差があったとしている。
なお、今回報告があったみちびき測位情報実証実験の一部はは15日以降のG空間EXPO2013でプレゼンテーションを行う予定だ。また、実証実験のシステム展示も行っているおり、高精度測位情報の現状や利用事例について説明を受けることが可能だ。
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