「Apple Watch」はこれまでのスマートウォッチと何が違うのか?本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2014年09月10日 14時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

“通知”以上のインタラクティビティを備えるApple Watch

ソニーの「SmartWatch 3」

 先日、ドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2014(国際コンシューマー・エレクトロニクスショー)では、ソニーが「SmartWatch 3」という製品を発表した。その試作モデルを試用しているが、前モデルからさまざまな面で大きく進化している。

 例えば時計のコア部分はバンドやフレーム(ボタン含む)とは独立しており、カーブドガラスのみが表面には露出している。つまり、バンドやフレームを交換することで、時計としての見た目はどうとでも変えられるのだ。また腕時計を見るしぐさを検出すると、自動的にバックライトがオンになるという仕組みも組み込まれていた。

 この製品は未リリースの「Android Wear」(グーグルのスマートウォッチ向けAndroidベースOS)を内蔵しており、本領を発揮するのは次期Android OSである「Android L」のリリース後になるだろうが、スマートフォンに届く情報の通知機能に関しては、β版ながらも、そこそこ満足できる使用感を得ている。

 不満点は充電のためにMicro USBを使わねばならない(Apple Watchはパッドのようなコネクタを背面に磁石で付けるだけでよい)ことと、時計のフェイスに気に入ったものが少ないことぐらいだろうか。ディスプレイの精細感は意外に高い。

 基本的な動作の枠組みはAndroid Wearに準じているため、Google Nowがサジェスチョンする情報が時計に送り込まれ、それに対して時計側からアクションを起こす、というのが基本的な使い方になる。音声検索機能を呼び出したり、音声メモを取るといったスマートフォンのリモート操作も可能だが、現時点の使用感ではやはり“通知”が主で、ユーザーが積極的にアプローチするという考え方は希薄だ。

Apple Watchは、MagSafeテクノロジーと電磁誘導充電を組み合わせることで、パッドのようなコネクタを裏ぶた近くに持っていくだけで磁力で吸着し、充電が行える

 アップルはここに大きく切り込んだ。時計をスマートフォンの情報を見せる、よりユーザーに近いデバイスと捉えるのではなく、もっと積極的にインタフェースとして活用しようと考えている。そのために「デジタルクラウン」、いわゆる竜頭(りゅうず)を搭載した。

 “時計と竜頭”の組み合わせは、ある意味当たり前で意外性はないが、スマートウォッチを積極的に入力するデバイスとは捉えず、あくまでも受け身で情報が集まってくるディスプレイとして捉えていると、そのコストを許容してまで盛り込もうとは考えないのだろうか。Apple Watchが初めて竜頭を搭載したスマートウォッチになるようだ。

 デジタルクラウンの動作はアプリによって異なり、回転させることで、地図ならば拡大/縮小、チャットやSNSのタイムライン表示ならばスクロールなどのように最適化が図られている。また、押し込むとホーム画面に移動する。ほんのちょっとした違いだが、タッチ操作では小さな時計の画面をさらに指で覆い隠してしまう。竜頭ならば、画面を見ながら操作できるというわけだ。

 「革新的ユーザーインタフェースのしかけ」とまでは言わないが、このことがApple Watchの世界観を広げている。多数の機能が紹介され、また多数の機能を紹介しきれないと話しているが、それはApple Watchが(現在の)Android Wearよりも提供しているファンクション、アプリに対する柔軟性が高いからではないかと見た。

 Android Wearに準じる時計も、それはそれで便利なのだが、“持っているべき理由”のようなものが今のところはない。例えば、何か手元のバンドがブルっと震えたら、そのときにスマートフォンの画面を見ればいいじゃないか、と思ってしまうのである。

Apple Watchは「デジタルクラウン」、いわゆる竜頭(りゅうず)を搭載。液晶ディスプレイは、Force Touch機能によりタッチの圧力まで認識する

ウェアラブルデバイスの“存在感”

 来年の前半に発売されるというApple Watchは、おそらく“成功”と言われるだけの数を売りさばくだろう。

 iPhone 6/6 Plusの新機能でもあるモバイル決済サービス「Apple Pay」にも対応しているというから、とりわけ米国のiPhoneファンにはたまらない製品となるはずだ。単一モデルとしては世界でも圧倒的にナンバーワンの出荷台数があるだけに、iPhone 5以降のみに対応というApple Watchの動作条件も問題にはならない。

Apple Watchはモバイル決済サービス「Apple Pay」にも対応している

 349ドルから(おそらくケースとバンドによって価格が異なる)という価格設定も、他社製品に対して競争力がある。ソニーのSmartWatch 3を除けば、どれも主張の強いデザインであるうえ、男性向けのデザインばかりだ。2サイズ展開で女性を狙ったバンドを用意するなどの配慮をアップルは施している。

 Apple Watchは、今のスマートウォッチに求められるあらゆる要素を盛り込んだ、全部入りのデバイスだが、それだけに存在感の強いデバイスでもある。これだけ身につけていて目立つものが、フェイスサイズやバンドの違いがあるとはいえ、たった1種類からしか選べない。このスタイルの製品ジャンルが、果たして一般層にまで受け入れられるだろうか。

 Apple Watchはスマートウォッチとして最初の成功事例にはなるだろうが、“持続的に売れる”製品となるには、いくつものハードルがある。一番単純なところでは、「こんなデザインの時計はしたくない」という人を説得できるかどうかだろう。

 デザイン面で相当な配慮がされているものの、どれも“スマートウォッチとしては”というエクスキューズがつく。時計の好みは三者三様だ。携帯電話があれば腕時計はいらないと、腕時計をしなくなった人も増えている中で、スマートフォンの情報を得るために腕時計をするという提案を行おうというのだからハードルは低くない。

 アップルが提案する利用シナリオが、どれだけ一般層にまで広がるものか。現時点ではまだ、頭のなかで消化しきれていないというのが正直なところだ。

イエローまたはローズの18Kゴールドをケースに使用し、高級感に配慮した「Apple Watch Edition」シリーズも用意している
ソニーの「Smartband Talk」

 むしろ、ソニーの「Smartband Talk」という製品を使ってみて、あるいは“この製品の先にある”世界にも、Apple Watchとは異なるチャンスがあるのではないか? と感じている。

 Smartband Talkは「活動量計+電子ペーパーを用いた時計+スマートフォンの情報・通知ディスプレイ+ヘッドセット+ボイスコマンド用マイク」といった製品だが、自動的に睡眠モードに入る機能を持ち、睡眠記録まで取れる本格的な活動量計でもある。

 現時点ではバッテリー駆動時間やサイズなどの面で改善の余地はあるが、常に装着していても腕時計ほどの存在を感じさせない利点がある。これがさらに小型化、薄型化されれば、腕にはめていることを意識させない、常に身につけている製品にも仕上げられるだろう。

 Apple Watchとは真逆の可能性だが、時計は毎日身に付ける装飾品として長い歴史を感じさせる多様さを誇る。その時計という商品、文化をリスペクトしたうえで、あえて存在感の希薄なウェアラブルデバイスへと向かうというのも1つの決断だろう。

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