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» 2014年11月20日 23時36分 公開

バラして見ずにはいられない:綱渡りもそろそろ限界? iPhone 6/6 Plusの分解で見えたAppleの“危険水域” (2/3)

[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

改良点と変更点

【1】対応周波数の激増

 iPhone 6/6 Plusは新たに、中国でよく利用されているTD-LTEとTD-SCDMAに対応した。中国でも3GのW-CDMA(UMTS)は使えるが、TD規格に対応したことで、中国の大都市などでは4Gなどの高速通信が利用可能となった。

 端末の対応周波数が増えるとそれだけノイズ対策が必要になる。その役割を担う受動部品の1つである積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、約200個増加した。また受動部品全体の員数も300個程増加して約1100個となった。受動部品を寸法別に分類すると、縦0.4ミリ×横0.2ミリ(「0402サイズ」と呼ばれる)が最も多く、村田製作所が大部分を供給していると思われる。また従来のMLCC6個分の役割を1個で果たす新たな受動部品と思われるものが搭載されており、こちらはTDKの製品と推定している。

photo サポートする周波数が増えたことで、積層セラミックコンデンサ(MLCC)は約200個増加した(iPhone 6 Plus)

【2】A8チップ

 iPhoneのプロセッサ(チップ)はこれまで韓国Samsung Electronics製であったが、今回の「A8」チップは台湾TSMC製に切り替わった。一部でSamsungが部分的に供給しているとの情報もあるが、筆者は全量TSMCであると推測している。性能はアップしたものの、チップサイズはほとんど変っておらず、よって原価もそれほど下がっていないと思われる。Apple専用のカスタム品である点を考慮しても原価は16〜18ドル前後と思われる。

photo A8チップは台湾TSMC製だ(iPhone 6 Plus)

【3】大型ディスプレイ

 これまで少しずつ大きくなってきたiPhoneのディスプレイであるが、今回は一気に巨大化した。iPhone 6は4.7型、6 Plusは5.5型となり、やっと大画面化の流れに乗ったことを歓迎するユーザーも多いのではないだろうか。

 5.5型ディスプレイは日本のジャパンディスプレイ(以下JDI)と韓国のLG Displayが担当しているが、今回調査したものはJDI製であった。また同時に調査したiPhone 6の4.7型パネルはシャープ製であった。

photo iPhone 6の4.7型液晶パネル

【4】バッテリー

 iPhoneの新モデルが登場するたびにそのバッテリー容量は増加してきたが、それは100mAh以下づつのゆっくりしたものであった。

 しかしiPhone 6/6 Plusでは、大きくなった筐体の容積をそのままバッテリーに割り当てたようで、その容量は大きく増加した。特にiPhone 6 Plusのバッテリー容量は2915mAhで、先代と比べ約2倍になった。バッテリーのセルは、ソニーやTDK傘下のAmperex Technologyなどが製造していると思われるが、後工程は別のパッケージングメーカーが請け負っており、バッテリー表面に印刷されている会社名はそのメーカーのものである。

photo iPhone 6 Plusのバッテリー容量は2915mAh。5sの約2倍だ

興味深い特徴

【1】リンゴのエンブレム

 これまでiPhone背面のリンゴマークは、シルバーの塗装やボディの表面仕上げを変えるなどしてしるされていた。

 しかし今回は筐体に“リンゴマーク”状の穴があけられ、それを埋め戻すように金属製のリンゴマークがはめ込まれている。いわば後付エンブレムである。こうなった理由として、当初はここにNFCアンテナを配置する予定であったと考えられる。iPadではこの部分に無線LANアンテナを組み込んだモデルも存在する。しかし何らかの理由でこのプランは撤回され、穴を埋めるために見栄えの良い金属エンブレムを取り付けたと思われる。

photo 従来とは異なった工法でしるされたリンゴマーク。NFCのアンテナになる予定だった可能性が高い(iPhone 6 Plus)

【2】“住友電工グループ”のロゴ

 Appleは採用部品について、ある程度メーカー名を公表している。しかし実際の部品にはトレーサビリティ目的と思われるカスタム型番だけがあり、製造元が明らかになるロゴなどはないことが多い。

 今回、iPhone 6 PlusのLightningコネクタやマイク、ヘッドフォンを搭載するフレキシブルプリント基板(FPC)、フロントカメラ、マイク、環境センサーを搭載するFPCに、住友電工グループのロゴが入っていた。FPCにメーカーのロゴが入ること自体が珍しい。

【3】素材の変化

 業界関係者にお話を伺ったところ、より信頼性の高い製品を目指して部品製法の変更も行われているようだ。例えばFPCで使用される銅箔は従来「電解銅箔」が使用されていた。廉価なのが最大の特徴で市場の70%程度がこの製法によるFPCと推定される。しかし折り曲げた際に断線する問題が過去のiPhoneで発生し、重要部品を搭載したFPCには「圧延銅箔」を使用するようになった。これは電解銅箔より3割程高いが屈曲に強い。製造はJX日鉱グループが手掛けている。

【4】名脇役

 分解して表に出るのは搭載されている部品だけだ。しかしこれらを形作った装置の存在も忘れるべきでないだろう。iPhoneの特徴ともいえるアルミ合金のボディは今回からラウンドカットとなり、切削に要する時間はより長くなり、求められる技術も高くなったと思われる。カマボコ板のような形状から美しい皿のように削り出したのは、日本のブラザー工業やファナックの切削装置と推定される。また米CorningのGorilla Glassも周辺部がなだらかな曲線を描くように削られ、ラウンドカットされた筐体とスムーズに接するようになっている。

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