「VAIO Phone」は世界に羽ばたけるか? スマホ低コスト化の理想と現実:バラして見ずにはいられない(3/3 ページ)

» 2015年05月29日 14時23分 公開
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さらに安くするなら脱Qualcomm。しかし……

 端末の価格を高止まりさせる原因は何だろうか? エントリークラスの端末を見るとヒントがある。それは通信端末として基本的な機能を提供するチップセットが、Qualcomm製ではないことだ。

 チップセットは、通信用IC、ベースバンドプロセッサ(通信用プロセッサ)、アプリケーションプロセッサ(パソコンのCPUに相当)、電源管理ICで構成される。Qualcomm製チップセットの性能が抜群に良いことは事実である。そのためコストも高い。加えて、同社特有のビジネスモデルも価格を押し上げる要因になっている。

 端末メーカーやOEM/ODM企業がQualcommのチップセットを使ってスマホを作る際、生産台数に関係なく、まず「Qualcomm Reference Design」(QRD)という一種のサポート契約を結ぶことが多い。QRDには通信機として動かすための設計図や部品のリストに加えて、ベース端末そのものが含まれており、市場に合わせてスペックやデザインを変更して最終的な製品を仕上げられる。

 そして製造時点では次にチップセットそのもののコストが発生する。さらに同社の立場を盤石なものにするファクターとして、通信関連の特許を多く保有しており、莫大な特許料も支払う必要がある。これが端末コストのすべてではないが、日本で売られているスマホの大多数がQualcomm製チップセットを使用していることを考えると、端末価格が高止まりしている理由の1つと推定できる。

 QRDによって自前ですべてを開発するよりは、低コストで端末を開発できるようになった。しかし上記の通りチップセットを軸にした開発環境の囲い込みであり、部材はQualcommのもの、あるいは推奨サプライヤーのものになる。

 また同じベース端末を何度も使って製品開発をする場合、スペックが似ている、デザインが似ているという、マーケティング面で差別化に課題が生じるケースもあるだろう。VAIO PhoneとELUGA U2が酷似しているのは、Quantaが用意したリファレンスモデルを、VAIOとパナソニックの2社がほぼ同時に採用してしまったためと言われている。おそらく販売する市場が違うため、ここまで大きな問題になるとは考えていなかったのだろうか。

 さて、競争のために現在より低コストな端末を作るとすれば、Qualcomm以外のチップセットを採用するのも手だ。そうすると、米Intel、台MediaTek、中Spreadtrumなどが選択肢となるが、いずれも開発スピードが遅かったり、そもそも性能が劣ったり、また知的財産権の順法意識が低いなど、採用する側にとっては不安材料が多い。ちなみにMediaTekは、自社のチップセットに最適化した開発環境を提供することで、中国メーカーにおける採用実績を積み重ねてきた企業だ。

 また日本で合法的にスマホを使うには、総務省の「技適マーク」を取得する必要があるが、認証機関や試験機関では、日本でシェアの多いQualcommの試験準備は整っているものの、それ以外は準備に時間がかかるなど、見えない壁もあるようだ。

SIMロックフリーはスマホビジネスの突破口にならない

 SIMロックフリーに関する報道を見ていると日本だけが世界から取り残されているように見えるが、SIMフリー環境が発達しているのは、多くの人が国境をまたいで移動することが前提の欧州くらいで、北米の事情は日本とあまり変わらない。

 北米でSIMフリーになっているのはプリペイド方式のスマホが多い。後払いのポストペイド方式では日本と同じ2年契約で、端末を安く購入できるが、契約途中の解約には解約金の支払いが必要になる。当然ながら分割払いの場合も残債の清算が必要だ。SIMロックの解除には未払いがないことも条件になる。

 ただ日本と比較して便利と感じたのは、条件さえ満たせばほぼ全ての端末のSIMロック解除が可能で、そのプロセスが簡単なことだ。例えば米国最大手AT&TにはSIMロック解除専用サイト(https://www.att.com/deviceunlock/index.html#/)があり、説明の通りにしていくと、ロック解除コードが送られてくる。この点は日本の3キャリアも見習ったのか、今後はオンライン経由でのSIMロック解除が可能になる。

 海外でSIMロック解除が必要になるのは、1社の通信事業者だけでは国や地域のすべてをカバーしていない/できないことが多い、という事情もある。これも3大キャリアがほぼ全土をカバーしている日本ではあまり感じない点だ。

 SIMフリー端末とセットで論じられることが多いMVNOについても、キャリアメールやおサイフケータイ(の一部)など、キャリアが推進してきたサービスが使えなくなることを忘れてはならない。機能やサービス、サポートがそれなりの分、料金が安いという比較は、新幹線と在来線のどちらで行くのか比べるのに似ている。

 今のところMVNOとSIMフリー端末の恩恵を享受できるのは来日する外国人観光客、SIMロック解除については頻繁に海外にでかける人に限られるだろう。日本の通信行政、通信事業者そしてメーカーには、もう少し根本的なところで自由化や競争力の向上を図って欲しい。

 例えばだが、キャリアとメーカーが束になってQualcommと交渉し、より有利な条件で部品を手に入れ、高額な端末だけでなく、もっと普及価格帯のスマホをそろえるといったことだ。性能はもちろん、コスト面で国際的な競争力を持つには、そうした考えも必要になるだろう。

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