ハコスコ出資と「Vive」店頭デモでVRの認知度アップ狙うKDDI

» 2016年06月07日 22時22分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 再び盛り上がりを見せている「VR」「AR」市場に、大手キャリアのKDDI(au)も熱い視線を向けている。

 5月19日に発売した2016年夏モデル「Galaxy S7 edge SCV33」は、予約特典として「Gear VR」をプレゼントするキャンペーンを実施。「非常に好評で、Galaxy S7 edgeだけでなくVRの認知度アップにつながった」とKDDI 商品企画部長の松田浩路氏は話す。

Gear VRプレゼントキャンペーン 「Galaxy S7 edge」の予約特典だった「Gear VR」

 同社はVRを「次世代のコミュニケーション」と位置付け、電話(音声通話)、テキストのメールやチャット、そしてビデオチャットに継ぐ存在と見込んでいる。これまでが情報の共有であるならば「VRは体験を共有できる」(松田氏)ためだ。

 そんなVR時代のコミュニケーションをイメージしたコンセプトコンテンツ「Linked-door(仮)」も作成し、米国・テキサス州オースティンで3月に開催された世界最大のクリエイティブイベント「South by Southwest 2016」(SXSW 2016)に出展。好評を得たという。

HTC Vive 「HTC Vive」を利用しているところ
HTC Vive ある程度自由に歩けるのが「Vive」の特徴

 Linked-doorはHTCのVRヘッドマウントディスプレイデバイス「Vive」を使ったもの。ViveはPC向けのVRデバイスで、プレーヤーの手となる2つのコントローラーを用い、さらにVR空間内をある程度自由に動き回れるというもの。KDDIが作成した今回のデモでは、電話が着信すると目の前に通知が現れ、ドアを開けてリンク先に歩いて入るなど、VRらしいインタラクティブ性を盛り込んだ。

VR 「VRを次世代のコミュニケーションに」とKDDI
VR KDDIが作成したコンセプトコンテンツ「Linked-door」
VR 普及への課題も多いが、キャリアが貢献できることも多いという

 松田氏によると、VR空間でも移動できることを軸に、広い視野で思いでの写真を振り返ったり、離れたカップルが買い物デートしたり、自室の模様替えを検討したりといった、VRにコミュニケーションを付随した新しい体験価値を提供できるとしている。VR認知拡大のため、6月11日と12日、東京・新宿の直営店au SHINJUKUで体験会も開催する。

VR 6月11日と12日に東京・新宿のau SHINJUKUで「Vive」を使った体験会を開催

 Viveはかなり高スペックなPCが必要なことに加え、“ルームスケール”であるが故に、ある程度のスペースや準備も必要だ。一方、その対局にあるのがGear VRの様にスマホを使ったVRデバイスの数々。スマホを利用するタイプでもプラスチック筐体にヘッドバンドを取り付け、高い没入感を味わえるタイプと、ボール紙を折った簡易的な構造で、ARをカジュアルに楽しめるものなどがある。

 「現在はハイエンドとカジュアルに2極化しているが、将来はモバイル環境でも高度なVRが楽しめる環境に集約されるだろう」と話す松田氏。キャリアとしては「認知度とコンテンツの拡大、デバイス(スマホ)の普及、次世代コミュニケーションと5Gを見据えた大容量・低遅延のネットワーク提供で貢献できる」と狙いを語った。

 中でも重要になるのがコンテンツの数だ。VRのデモと言えば空中・海中散歩やジェットコースターなどの絶叫系など、その迫力はともかく目新しさに限りが出てきた。エンターテインメント分野、特にインタラクティブなゲームでの利用はまさにこれから。VRショッピングや観光地のPRといったB2B2C分野での普及は未知数といってもいいだろう。

ハコスコ ハコスコとは
ハコスコ コンテンツやプラットフォームも備え、エコシステムの拡大に対応できる

 コンテンツ拡大のためにも、KDDIでは「話題性だけでなく、認知度の拡大に力を注ぎたい」と意気込む。Viveを使った店頭デモもその一環だが、より踏み込んだ取り組みが同社のベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じたハコスコへの出資だ。

 ハコスコはスマホをセットして使うボール紙製のVRビュワーで、価格が1000円と廉価なのが特徴。既に17万個を出荷しているほか、スマホアプリにコンテンツを配信するプラットフォームも手掛けており、「低価格で手軽なうえ、コンテンツの配信や課金プラットフォームなど、VR体験に必要な要素をワンストップで提供できる」(同社戦略推進室の江幡智宏氏)のが強みだという。

 没入型とは違ったカジュアルなVR/AR体験が売りだが、プラスチック筐体のデラックス版も販売するなど、ハイエンドVRへのニーズにも応えている。江幡氏は「VR市場は2極化状態だが、ハードウェアとコンテンツの普及によってローエンドからハイエンドに移行するのは間違いない」と話す。まずは低価格なVR体験を広め、市場の成熟に合わせて高付加価値のデバイスとコンテンツ流通、プラットフォーム事業でビジネスを拡大する――こうした明確なVR戦略があることが、ハコスコへの出資につながったようだ。

ハコスコ ハコスコのVRビュワー
ハコスコ プラスチック筐体の「ハコスコDX(デラックス)」
ハコスコ 本格的なHMDとなった新しいデラックス版も開発

 VR市場は2020年には700億ドルに達するとみられている。その頃には5Gの商用サービスも始まっている公算で、「5Gのキラーアプリに、とまでは言わないが、新たなコミュニケーションの形として5Gを象徴するサービスにしたい」というキャリアらしい声も聞かれた。

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