KDDIは、産業用ドローンメーカーのプロドローン、地図情報会社のゼンリンと業務提携し、モバイル通信ネットワークを活用するドローン専用基盤「スマートドローンプラットフォーム」を発表した。2017年の商用化を目指す。なおKDDIは、プロドローンが第三者割当増資により発行する株式を3億円で取得している。
KDDIは、“空の3次元地図”を研究開発しているゼンリン、高性能で安定した飛行が可能な産業用ドローンを提供しているプロドローンとともに、インターネット上の3次元地図、運航管理情報などとの連携によって自律飛行するスマートドローンプラットフォームの開発を行う。
スマートドローンプラットフォームは、ドローン機体、3次元地図、運航管理、クラウドで構成される。モバイル通信ネットワークにつながったドローンの自律飛行や障害物との衝突回避といった飛行ルート管理に加え、ドローンが取得したビッグデータの蓄積・分析が可能なプラットフォームとなる。
このプラットフォームにおいて、KDDIは人口カバー率99%を超える4G LTEや、将来提供される5Gネットワーク、クラウドサービスなどを提供し、ドローンの遠隔操作や自律飛行を支える。プロドローンは、4G LTEネットワークに接続し、遠隔地からでもフルコントロールが可能な高機能なドローン機体とその制御システムの開発を行う。ゼンリンは、同社が保有している地形・建物情報をベースに空の3次元地図の研究開発を推進。ドローンの自律飛行で機体を安全に誘導するための基盤構築を担う。
3社は今後、2017年のスマートドローンプラットフォームの商用化に向けて実証実験を行っていく。産業向けには橋などの設備の検査や農業支援、災害救助などのソリューション、コンシューマー向けには撮影サービスなどを提供し、さまざまな分野でネットワークにつながるドローンが活躍する「スマートドローン構想」を推進するとしている。
都内・ヒカリエで行われた発表会では、最初にKDDI 執行役員常務 商品・CS統括本部長の山本泰英氏がスマートドローン構想について説明した。
ドローンは空撮や測量、農業などさまざまなところで使われているが、現在はまだ、Wi-Fiネットワークなどの限られた空間を、人がコントロールすることで飛んでいる状態だ。山本氏は「(飛べるエリアを)LTEネットワークまで広げると、目視外に行ける。そのときには自律的な動きがドローンにも組み込まれていくはず」と、携帯電話ネットワークにつながることで自律飛行が可能になると説明し、そうしたドローンを「スマートドローン」と命名した。
スマートドローンには「機体」「3次元地図」「運航管理」「クラウド」の4要素が要求されると山本氏は話す。機体は通信ネットワークにつながることに加え、雨や風に耐え、鳥などにぶつかりそうになっても、いったん止まって再び動かなければならない。ドローンが飛ぶ際には高さの情報も必要なので、「円ではなく球で捕らえるセンシングが必要。自律飛行を行うには3次元地図が重要」(山本氏)になる。また、将来は複数のドローンが同じ地域を飛ぶことも想定されるので、ぶつからず、効率的に飛ぶための運航管理が必要だ。さらに、ドローンが飛行し、センシング(撮影)したデータをクラウドで分析し、新しいサービスとして提供するとした。
KDDIのインフラも、さまざまな形で提供するという。例えば、基地局に気象観測装置を設置してウェザーニューズとともに情報を提供している「ソラテナ」。これを進化させ、位置確認/衝突回避のアンテナ(ADS-B)も設置して、ドローンに適した情報を提供するという。KDDIの局社をドローンの離着陸や充電ができるポートにする計画もあるそうだ。
サービスについては、まずはB2Bのソリューションを提供する。その後、「なんとしてもコンシューマー向けサービスを提供したい」(山本氏)としており、ドローンを活用した新しいビジネスの開発に意欲を見せた。
プロドローンの河野雅一社長は、自社のドローンについて紹介し、プロジェクトに対する意気込みを語った。
プロドローンは、世界で初めて2本のロボットアームを持ち、ドローン自体が直接作業する大型ドローンを開発した産業用ドローンメーカーだ。このほかに、負圧で壁面や天井面に張り付いて検査できるドローン、水中ドローンなど、多彩な高性能ドローンを開発し、世界的に注目されている。
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