UQコミュニケーションズ(以下「UQ」)と同社回線を利用するMVNOは、2017年2月2日から「WiMAX 2+」通信サービスにおける通信速度制限ルールを変更します。
新しいルールの詳細を紹介する前に、WiMAX 2+における通信速度制限の内容を振り返ってみましょう。
UQは2013年10月31日にWiMAX 2+通信サービスを開始しました。その時点での提供条件は、大きく以下の3点が特徴でした。
※1 ハイスピードプラスエリアモードを利用した月は、ハイスピードモードでの通信も含めて適用
※2 ハイスピードモードでは2015年4月から適用。ハイスピードプラスエリアモードでは、au 4G LTEネットワークを利用している間はサービス開始当初から対象
WiMAX 2+では、「無制限・使い放題」だった従来のWiMAX通信サービスとは異なり“制限”がかかるというわけです。
月間容量制限についてはそれほど大きな問題にはなりませんでした。条件の2点目にもある通り、契約から25カ月間はハイスピードモードで使う限りはこの制限がかからなかった上、2015年2月にハイスピードモード時の月間容量制限を撤廃した「ギガ放題」プラン(参考記事)が登場したからです。
しかし、3点目の「直近3日間の通信容量が1GB以上」となった場合の通信速度制限は、WiMAX 2+ユーザーに大きな影響を与えうるものでした。適用開始予定の2015年4月段階では、サービス開始からまだ1年半ほどなので月間容量制限はかかりません。しかし、PCやスマホの通信容量が増加傾向にある中で「3日間で1GB」というしきい値はあまりに低すぎます。
そこで、ギガ放題プランの導入に合わせて、この制限を「直近3日間の通信容量が3GB以上」に緩和しました。そして、予定より2カ月弱遅れで2015年5月下旬からこの制限が適用されました。
次の問題は、この制限がかかった時の通信速度です。月間7GB超過時(ギガ放題プラン利用時はハイスピードプラスエリアモードを使った月のみ適用)は「上下最大128kbps」というハッキリと速度が示されていますが、直近3日間の通信容量による制限時のそれは「YouTubeの標準画質が閲覧できる程度」と説明され、ハッキリとしなかったのです。
筆者が2015年6月の連載で実測した際は、上下最大で1Mbps程度で利用できました。
「直近3日間3GB以上」時の速度制限については、WiMAX 2+サービスの全プランに適用されるものですが、ギガ放題プランの広告ではほとんど触れられませんでした。また、実際に制限を適用するまでにタイムラグがあったほか、店頭での契約時においても十分な説明が行われないケースがあったようです。これらの影響から、「完全に容量無制限で高速通信できる」と勘違いしてギガ放題プランを契約した人とのトラブルも発生してしまいました。
これらを踏まえて、UQは2015年7月14日、公式Webサイト上でこの制限に関する「今後の対応」を公表し、広告展開などにおける不手際を謝罪しつつ、速度制限の「より利便性の高い運用方法」を検討することを明らかにしました。
速度制限手法の再検討に当たり、UQは暫定措置として直近3日間に3GB以上通信した際の速度制限を「YouTubeのHD動画が視聴可能なレベル」に緩和しました。これにより、実測ベースで上下最大1Mbps程度だった通信速度は、上下最大6Mbps程度に改善しました。電波状態が不安定にならない限り、PCやスマホで一気に複数のWebページを開いても大きなストレスを感じずに使えるレベルです。また、YouTubeもHD(720p)解像度の高画質動画であれば視聴できます。
この「暫定対応」は、その後1年半以上大きな変更を行うことなく続きました。「3日間3GB」の速度制限に対して大きな不満を聞くことがほとんどなくなったタイミングで出てきた「より利便性の高い運用方法」が、今回の本題である新しい速度制限ルールなのです。
UQが発表した新ルールでは、直近通信量に対する制限のしきい値が「直近3日間で3GB」から「直近3日間で10GB」に緩和されます。また、制限の対象時間も「翌日13時ごろ〜翌々日13時ごろまで(24時間程度)」から「翌日18時ごろ〜翌々日2時ごろ(8時間程度)」と従来の3分の1に短縮されます。制限時間の短縮に着目すると、「夜は自宅にある固定回線(光回線やケーブルテレビなど)でインターネットを使う」という人にとっては大幅な条件緩和で、利便性も高まるといえます。
一方で、制限中の通信速度は「概ね1Mbps」と、暫定措置前の実測値とほぼ同じ水準に強化されました。
UQでは、「ごく一部のお客様」の通信量(トラフィック)の割合が、全体の通信量に占める割合が大きい現状を踏まえて、「ごく一部のお客様」の通信量を抑えつつ、ネットワーク全体の大幅な品質低下が起こらないようにシミュレーションした上での結論が、今回の新ルールであるとしています。
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