連載終了した作品がヒット、書店の売り上げ増にも貢献 「LINEマンガ」が出版業界にもたらす影響(1/2 ページ)

» 2017年04月12日 19時29分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 LINEは4月11日、電子コミックサービス「LINEマンガ」のセミナーを実施。スマートフォン向けの電子コミックサービスが急伸したことで、出版社や書店に市場にどのような変化が起きているのか? LINEマンガ担当者や出版関係者などが明かした。

LINEマンガ トークセッションでは、スマートフォンの漫画アプリが広まる中にあって、大手出版社が電子コミックにどのような対応をとるかという議論も出た

スマートフォンと漫画アプリが市場のけん引役に

 メッセンジャーアプリの「LINE」を起点として多くのサービスを展開しているLINEだが、中でも高い人気を獲得しているサービスの1つが、電子コミックサービスの「LINEマンガ」だ。そこでLINEは4月11日、出版関係者を対象としたLINEマンガ主催のセミナーを実施。LINEマンガを主体として、電子コミックサービスが出版業界全体にどのような影響をもたらしているのか説明がなされた。

 セミナーの冒頭、LINEの執行役員である森啓氏が、電子コミック市場やLINEマンガの最新動向を説明。出版業界は現在、書籍や雑誌の販売減少によって大きく売り上げを落としているが、コミックに関しては紙と電子の販売金額を合計すると3400億円に達し、過去最大の成長を遂げているとのこと。その伸びをけん引しているのは電子コミックであり、2016年は前年比30%以上の伸びを記録したという。

LINEマンガ LINEマンガの事業を取り仕切る、LINE執行役員の森氏

 森氏によると「電子コミックが大きく伸びているのは、スマートフォンの漫画アプリの台頭によるところが大きい」とのこと。実際、新しい漫画作品に出会う経路は漫画アプリが書店に次ぐ規模に達しており、スマートフォンがコミック市場のけん引役となっていることが分かる。

LINEマンガ コミック市場は紙が落ち込む一方、電子が急速に伸びることで、市場全体の伸びを支えているという

 そうした漫画アプリの中でも、ダウンロード数やMAU(月間利用者数)などでトップの座を獲得しているのが、LINEマンガであると森氏は話す。LINEマンガではコミックを販売するストアに加え、過去の作品などを毎週無料で掲載する「無料連載」を展開しており、総読者数は1300万、総閲覧回数は42億に上る。

 中でも注目すべきは無料連載にあるとのこと。というのも、無料連載で作品に触れたユーザーのうち、39%は電子、または紙のコミックを購入した経験があるそうで、無料連載が有料コミックの購買へと確実につながっている。それゆえ、2016年のLINEマンガの売り上げは前年比50%の伸びを示し、月間10億円規模の売上を実現。App Annieの調査では、LINEマンガがゲームを除く2016年の世界アプリ売上ランキング8位に顔を出す規模にまで達しているという。

LINEマンガ LINEマンガで無料作品を読んだユーザーのうち4割弱は、その後電子、あるいは紙のコミック作品を購入する傾向にあるという

 LINEマンガの無料連載は、ストアでの人気作品の傾向にも大きく影響しているようだ。2016年にLINEマンガで販売された売り上げ上位の作品を見ると、1位から順に「BLACK BIRD」「ピアノの森」「アイシールド21」など、既に連載が終了し、無料連載で掲載されていた旧作が上位を占めている。「メディアミックスなどがなくても、新作・旧作を意識することなくボーダーレスに作品との出会いが生まれている」(森氏)ようで、LINEマンガが多彩な漫画作品との新たなタッチポイントとして、大きな役割を果たしていることが理解できる。

LINEマンガの無料連載は書店の販売をも伸ばす

 では実際のところ、LINEマンガは出版業界にどのような影響をもたらしているのだろうか。出版物の取次を担うトーハンのコミック営業推進室 アシスタントマネージャーの川村明氏と、白泉社 販売宣伝部長の小見山康司氏を招いてのトークセッションで、その現状が明らかになった。

 モデレーターを務めたLINEのLINE漫画編集チーム マネージャーである村田朋良氏によると、LINEマンガでの無料連載は、LINEマンガのストア上の販売を伸ばすだけでなく、書店における紙のコミックの販売数にも大きな影響を与えているとのこと。だがそのことに気が付いたのは、川村氏からの連絡があったためだという。

 川村氏がLINEマンガと書店の販売動向が連動していることに気が付いたのは「3年くらい前」。当時既に連載が終了していた「なみだうさぎ〜制服の片想い〜」という作品が、メディアミックスやTwitterによる口コミなどが特にないにもかかわらず、コミックの販売が急に伸びたのを見たのがきっかけだという。しかも通常、コミックは1巻が最も販売が伸び、巻数を重ねるごとに販売数が減る傾向にあるのに対し、この時は1巻よりも2、3巻の方が売れるという、従来にない傾向が見られた。

LINEマンガ トーハンの川村氏は書店の販売動向の変化から、LINEマンガの無料連載が書店に影響を与えていることを突き止めたという

 そして当時、LINEマンガではこの作品を1巻分、丸ごと無料で読める施策を実施していた。そのことを聞いた川村氏が、LINEマンガで1巻分を無料で読んだ人たちが、2、3巻を購入したのではないかと推測。LINE側に連絡を取り、共同で検証することによって、LINEマンガが書店での販売にも影響を与えていることが確認できたのだそうだ。

 しかも村田氏によると、LINEマンガの無料連載は、従来のメディアミックスとは異なる販売傾向をもたらしているという。ドラマ化やアニメ化などのメディアミックスがなされた作品の場合、書店ではその放映翌日にコミックの販売がピークを迎える傾向にある。だがLINEマンガで無料連載がなされた作品の場合、連載が更新された日に売り上げのピークが生まれることから、継続的な販売の伸びをもたらしているのだそうだ。

LINEマンガ トークセッションでは、メディアミックスとLINEマンガの無料連載が書店の販売にもたらす効果の違いについても検証がなされた

 LINEマンガが書店の販売も伸ばすことが証明されたことを受け、LINEでは2015年10月ごろからトーハンと連携し、書店でビーコンを活用し、LINE上で作品の無料試し読みができる販促フェアを実施している。2016年10月には白泉社の漫画作品と連携したフェアを実施したが、参加した店舗の販売の伸び率が、非参加店と比べ40%大きかったという。この結果について小見山氏は、「非常にいい数字。もっと大規模にフェアを展開できればと思っている」と話しており、出版社側としても上々の手応えを感じているようだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月27日 更新
  1. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  2. 「Galaxy Z Fold8」「iPhone Duo」を“メイン端末”として使う上での課題 縦型コンテンツの最適化をどう進める? (2026年10月26日)
  3. 「iPhone Duo」画面不具合の報告がSNSで話題 店頭デモ機の過酷な使用環境が起因か (2026年10月26日)
  4. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  5. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  6. 「iPhone Duo」は買いか見送りか――賛否 そんな中、登場した「iPad mini」は誰向け? (2026年10月27日)
  7. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  8. 20〜30代限定の「ダイナースクラブ ゴールド」登場 スタバやスマホで10倍還元、「食べログプレミアム」が実質無料 (2026年10月26日)
  9. KDDI、子会社モビコムのモンゴルでの火災について事実関係を公表 「法令違反行為を行っていない」 (2026年10月24日)
  10. 新型「iPad mini」発表 有機EL搭載で防水にも対応、5.4mm/255gへと薄く軽くなって11万9800円から (2026年10月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー