集英社が8月8日にから提供している「Myジャンプ」は、『週刊少年ジャンプ』で掲載された作品をユーザーが自由に選んで毎週配信できる、新しいタイプの電子雑誌だ。例えば70年代に連載された『プレイボール』と、現在連載中の『ONE PIECE』を同じ雑誌に掲載できる。料金は10作品が月額480円(税込)、20作品が月額840円(税込)。
さらに、各作品のお気に入りのエピソードだけをまとめた世界で1冊だけのジャンプを制作できる「MyジャンプBEST」機能も用意。アプリ上で公開したり、他ユーザーのMyジャンプBESTを購入したりできる。
Myジャンプはどのような狙いで開発されたのか。デジタル事業課の森通治氏と、週刊少年ジャンプ編集部 副編集長/少年ジャンプ+担当の細野修平氏に聞いた。
―― まずは、「Myジャンプ」を開発した背景を教えてください。
森氏 今、新しい電子書籍の読まれ方が広がっています。弊社ではLINEさんやKDDIさんとパートナーシップを組ませていただいて、5〜6話のおすすめ作品を無料で配信しています。それがきっかけで電子書籍を購入いただいたり、2〜3割の方は紙の単行本も買っていただいたりしています。「少年ジャンプ+(以下、ジャンプ+)」でもリコメンド連載をやっています。たくさん人が集まる場で、マンガを5〜6話ぐらい読んで、作品を知っていただき、購読につながるパターンがここ2、3年でできています。
もう1つ、読み放題のモデルが雑誌の中心になりつつありますが、われわれとしては、マンガは違う軸で戦えると思っています。読み放題ではないけど、ジャンプだからこそできることを1つやってみたい。
加えて、1人1人に合ったコンテンツをおすすめする仕組みが確立できています。ジャンプ+では作品を生み出して、「ジャンプBOOKストア!」ではコミックス化されたものを売る。その間にある“作品に出会える場”をもう1つ作ると、2つのアプリの相互補完にもなり、作品のプロモーションになります。
―― Myジャンプでは、ユーザー自らが編集長になり、掲載作品を選べるのが面白いですね。このようなスタイルにした理由を教えてください。
森氏 僕らもいろいろな取り組みをやってきました。読み放題も期間限定でやりましたが、たくさん量があっても、必ずしも(好きな)作品と出会えるわけではありません。たくさん並べられると、どれを選んでいいか分からないし、読み放題だと「後で読んでもいいだろう」となります。
であれば、あえてお客さまに選んでいただく形にして、自分の好きなものを組み合わせる仕組みがいいと考えました。リコメンデーションエンジンの会社とも提携していて、Myジャンプで選んだ作品から他の作品を勧める仕組みもあります。そうすることで、作品との出会いも広がります。
―― そこで勧められた作品に、途中で変更することはできるのでしょうか?
森氏 (Myジャンプの)ラインアップは毎週変えられます。(紙のジャンプで)ここで読むのをやめたな、という作品があれば、そこから読んでもらってもいいです。必ず第1話から選ばないといけないわけではありません。
―― リリース後の反響はいかがですか。
森氏 Twitterやネットでは、8割ほどがポジティブな意見ですね。ありがたいことに、ジャンプを愛していただいている方に支持いただけているのかなと。一方で、これはもくろみ通りではありますが、「毎週読むのはじれったいから、電子書店で買う」「漫画喫茶で読む」という意見もありました。週刊誌に慣れ親しんだ人が、ジャンプを懐かしいと思って読んでいただけるところを狙っているので、そういう方はいるだろうと想定はしていましたが、思ったよりも少ないという感触です。
―― Myジャンプが売れすぎて、単行本の売り上げが減る恐れもあります。
森氏 やってみないと分かりませんが、そうはならないと予想しています。実は「(1週間待つ)じれったさ」は大事で、「何となく知っていたので読んだら面白かったので、単行本を買っちゃった」という流れは狙っています。MyジャンプからジャンプBOOKストア!に送客できる仕組みも用意しています。
―― 1週間を待たずに、次号を購入することもできるのですか?
森氏 はい。10作品250円(税込)、20作品400円(税込)で単価は上がりますが、先読み機能を付けています。ご自身のペースに合わせて、1号多く読んだり、週1にしたりできます。
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