振り返ってみると、2017年は大手キャリアにとって「逆襲の1年」だった。足元を見ると、大手3社の解約率は大幅に下がり、MVNOへの流出は止まりつつある。もちろん、ゼロにはなっていないものの、逆にMVNO側の数字を見ると、伸び悩みが顕著だ。
MM総研が12月に発表した2017年上半期の「国内MVNOの市場推移」によると、2017年9月末での「独自SIM型」の回線数は934.4万。前年度の上期の657.5万と比べると、伸びてはいるものの、同社は18年3月末時点での予想を下方修正している。
実際、IIJなど契約者数を公開しているMVNOを見ると、一部はかつてほどの勢いがないことが分かる。MVNOの大半にネットワークを貸すドコモの純増数も伸びが止まり、上期の決算説明会では純増数の予想を見直したことに言及。期初に220万と打ち出していた純増数予想を、130万に引き下げた。この下方修正には通信モジュールも含まれているが、MVNOの増加が見込みを下回ったことも要因だという。
そのきっかけを作ったのは、当のドコモだった。同社は、顧客還元の一環として、シェアパックを契約するユーザーに向けた「シンプルプラン」を5月に導入。音声通話定額を付けない代わりに、基本使用料を月額980円(税別、以下同)に引き下げた(関連記事)。
シェアパックを利用するという“制約”はあるものの、2回線目以降は1780円でスマートフォンを持てる計算で、月々サポートが適用されれば、毎月の利用料は0円に近づく。MVNOの音声通話利用料が700円前後に設定されていることを考えると、これはかなり踏み込んだ値下げだ。
また、ドコモはシンプルプランの適用条件を段階的に緩和。12月27日からは、シェアパックだけでなく、単独で20GB、30GBのウルトラデータパックを契約するユーザーにも、シンプルプランを開放する(関連記事)。20GBのウルトラデータLパックを適用した場合、料金は7280円。端末購入補助や長期利用割引があることを考えると、こちらもMVNOの大容量プランと十分渡り合える水準になっている。少なくとも他社に移る必要性が薄くなり、流出防止の効果はありそうだ。
新年度に入って打ち出した「Beyond宣言」に基づき、ドコモはシンプルプランだけでなく、立て続けに新料金を打ち出してきた。端末を限定して、期間を定めず1500円の割引を提供する「docomo with」もその1つだ(関連記事)。当初は「arrows be」と「Galaxy Feel」の2機種だったdocomo withは、冬春モデルで拡大。ラインアップは5機種(発売済みは4機種)となり、契約者数も12月18日には100万を突破。年度内目標の140万に向け、順調に進捗している。
さらに、2018年5月には「ずっとドコモ割」とdポイントを連動させ、「ずっとドコモ割プラス」に改定。割引かdポイントかの選択が可能になる他、契約年数が浅い場合でも、dポイントをためればステージが上がる仕組みになる(関連記事)。
料金プランを改定し、ユーザー還元を打ち出したのは、ドコモだけではない。auも、7月に「auピタットプラン」「auフラットプラン」という2つの新料金プランを導入(関連記事)。これらは「分離プラン」という位置付けで、毎月割が付かなくなる代わりに、料金水準をMVNOやサブブランドに対抗できるレベルまで引き下げるというのがKDDIの狙いだ。
auスマートバリューや1年間限定のビッグニュースキャンペーンを提供するという条件はあるが、auピタットプランで1GB未満だったときの料金は、音声定額が付いて1980円。Y!mobileやauのサブブランドであるUQ mobileと比べても、見劣りしない水準になっている。この新料金プランは当初、Android端末に限定されていたが、iPhone 8、8 Plusの登場に合わせてiPhoneにも拡大。10月14日には200万契約を突破している。
auの新料金プランは、「アップグレードプログラムEX」抜きには語れない。同プログラムは、割賦を2年から4年に延ばし、毎月の端末支払いを半額にするためのものだ。割賦の期間が長期化してしまう問題は、2年たった時点で下取りを条件に、残債を無料にするという方法で解決した。iPhone向けには、より機種変更サイクルの早い「アップグレードプログラムEX(a)」も用意する(関連記事)。
アップグレードプログラムEXは、分離プランで端末価格の負担感が上がってしまうことを回避するためのものだが、狙い通り、契約率は高いという。11月に開催された決算会見では、iPhone 8、8 Plusで割賦を組んだユーザーの実に95%がアップグレードプログラムEXやアップグレードプログラムEX(a)に加入したという数値が公表された。新料金プランは解約の抑止にも効果を発揮しており、auの解約率は、第2四半期に0.79%と大きく改善している(関連記事)。
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