NTTドコモは10月18日、冬春商戦向けの新機種、新サービスを発表した。合わせて、2018年5月に改定される「dポイントクラブ」や「ずっとドコモ割」の仕組みも紹介している。端末、サービス、料金と、まさに“全部入り”で見どころの多い発表会だったが、ここでは、端末のラインアップを振り返るとともに、その背景や、ドコモの戦略を読み解いていきたい。
ピーク時より数は減っているものの、Androidスマートフォンの充実度では、やはりドコモがauやソフトバンクを大きく上回っている。それは、数の上でだけでなく、バリエーションの上でもだ。もともとユーザー数が多く、買い替え需要も高いドコモだからこその品ぞろえといえる。iPhoneへの参入が最後発で、Android比率が3社の中で最も高いことも、ラインアップの豊富さにつながっていると見ていいだろう。
発表会で最も話題を集めたのが、「特徴的な端末」(吉澤和弘社長)の1つとして紹介された、ZTE製の「M Z-01K」。ここでの「特徴的」は、「飛び道具」や、ネットスラングにもなっている「変態端末」と読み替えてもいいだろう。端末のメーカーはZTEだが、ドコモとZTEの共同開発という位置付けで、企画はドコモが行っているのも他の端末との違いだ。
Mはドコモが投入する、久々の2画面スマートフォンだ。2つの異なるアプリを同時にフルサイズで表示したり、2つの画面をつなげて動画や電子書籍を大きなサイズで楽しんだりといったことが可能になる。本体中央部にはヒンジが搭載されており、折りたたみの途中で止めることもできるため、スタンドなしで自立する。これによって、テーブルや机の上に置いたまま、動画を楽しむこともできる。
とはいえ、折りたたみ型の2画面スマートフォンは、Mが初ではない。過去にはドコモ自身もNECカシオ製の「MEDIAS W」を搭載しているほか、京セラも海外で「Kyocera Echo」を販売していた。では、なぜドコモがこのタイミングであえて2画面スマホに再挑戦したのか。理由の1つは、技術が成熟したことだ。ドコモのプロダクト部長、森健一氏はMEDIAS W投入時と今を比較しながら、次のように語る。
「昔に比べると、カメラの画素数、ディスプレイサイズ、CPUなどが格段に進化している。前は額縁が見えたが、狭額縁でこれも見えづらくなった形で対応できた。Dolby Atmos対応で音もいいので、新しいガジェットとしてお楽しみいただけるのではないか。また、Androidがマルチウィンドウに対応したというOSの進化もあり、以前と比べて、格段に使い方が広がっている」
ハードウェアが成熟化したことに加え、OS側も標準でマルチウィンドウに対応した。これは、キャリアやメーカーが、アプリ開発者側に個別の対応を促していく必要がなくなったということだ。M以外でも、Galaxy S8、S8+、Note8が対応するDeX Stationにマルチウィンドウが活用されるなど、最大でも6型前後のスマートフォンの枠に収まらない端末や機能が、徐々に生まれ始めている。OSの機能を考えると、2画面を搭載することはある意味必然的な進化だったともいえるだろう。
高速化する通信も、スマートフォンの大画面化を後押ししている。森氏は「5Gになり、伝送レートも大きくなると、大画面化の流れが出てくる」と述べており、Mはこうしたニーズに対応した端末であることがうかがえる。実際、海外でもサムスン電子が折り曲げ可能な有機ELを使ったGalaxyを開発中との報道もあり、2画面は今後のトレンドになる可能性もある。ここにいち早く目をつけたというわけだ。
とはいえ、現時点ではやはり「特殊な端末」の域を出ていない。おサイフケータイに非対応だったり、2画面ゆえに厚みが出てしまっていたりといった欠点もあるため、注目は集めたものの、爆発的に数が出ることにはならないだろう。ただ、調達台数が少ない専用仕様の端末だと、コストが上がってしまう。
この課題は、海外キャリアに採用をもちかけることで解決した。既にMは米AT&Tや英Vodafoneなどでの発売が決定している。吉澤氏が「海外オペレーターにも採用を働きかけきた」と語っているように、この販路開拓にも、ドコモが一役買ったという。さらに、Mは「販売台数に対するロイヤリティーがドコモに入る仕組みを整えている」(同)というように、海外で売れるメリットまである。ともすれば“変態端末”と思われがちなMだが、見た目や機能、仕様はもちろん、コスト設計や販売戦略まで含め、練りに練られているのだ。
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