インタビュー
» 2018年06月13日 06時00分 公開

“欲を言えばあとちょっと”を加えた「AQUOS sense plus」 シャープ流SIMフリー市場での戦い方SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/2 ページ)

[石野純也,ITmedia]
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SIMフリースマホは値段もスペックの1つ

―― 価格はいくらぐらいになるのでしょうか。

小林氏 まだ発表していませんが、AQUOS sense liteと比べてどうかというと、フラグシップモデルほどの高い金額は出せないが、そこそこいいものが欲しいという方、AQUOS sense liteだとちょっと物足りないと思っているような方を狙っています。ちょうどこのゾーンの端末があまりなく、今はMNOでハイエンドの端末を買うか、MVNOで安い端末を買うかになっています。AQUOS R CompactもSIMフリーとして販売していますが、あれでもちょっと高価だという声が聞こえてきます。そこにAQUOS sense plusを入れ、お客さまの要望に応えていきたいと考えています。

 価格未発表の段階で言うのもあれですが、僕は部内で、SIMフリースマートフォンは値段もスペックの1つだと言っています。あと一歩だけよくなるスペックアップだったら、それは入れないで値段を下げてほしいというニーズの方が強いと見ています。

―― AQUOS sense plusでは、もうちょっとお金を出して、スペックを上げたいというところを狙っているわけですね。そういうニーズは増えているのでしょうか。

小林氏 傾向として増えていると思います。これは、SIMフリーからSIMフリーへの買い替えが出てきているからです。SIMフリー1年目として新モデルを買うというのではなく、もともとSIMフリーを使っていて、2年経過してSIMカードだけを差し替える方も増えています。もともとSIMフリースマートフォンを使っていたり、キャリアモデルをMVNOで使っていたりする方の受け皿は、あるようでありません。先ほど、CPUの比較で2年前のハインエンドと比較していたのも、そのいうところに理由があります。ミドルレンジでも、2〜3年前のフラグシップより進化させなければいけないのです。

―― まだAQUOS sense plusの価格が出ていないので、何とも言いづらい部分はありますが、AQUOS sense liteでは、「値段もスペック」ということがよく表れているように思えました。あのスペックで、あの値段(約3万円)は安いと感じます。

小林氏 これはパッケージングの妙だと思っています。より高い価格の部材を使えば、より価値は高く見えますが、実はここが正比例していないことがあります。例えば、ちょっと上がっているとすごくよく見えたりする部分がある一方で、コストをかけた割に高く見えないということもある。例えば、AQUOS sense liteではワンセグを犠牲にしていますが、お客さまから見るとオマケ程度に見えても思った以上にコストがかかってしまうものもあります。通常の作り方をすると、載せないと不安になってしまうんですけどね。

 その意味で、パッケージングを極める活動をしています。これが入っているから安心という売られ方とは考え方が違っていて、そこにどうやって真正面に取り組めるのか。(グローバルメーカーに)勝っているとは思っていませんが、迫るところまでは来ていると考えています。

―― そういう意味だと、18:9にはなりましたが、ノッチもAQUOS sense plusにはありませんね。

小林氏 まさに価格とバリュー感の違いで、IGZO、フルHDまでは一発で決まりましたが、そこ(19:9ディスプレイで、インカメラが液晶側に食い込んだ形状)はお値段との比例関係がありませんでした。もちろん、AQUOS sense plusも安い部品を使っているわけではありませんが

鴻海傘下になったことも大きい

―― 鴻海(ホンハイ)傘下になったことの影響もあるのでしょうか。

小林氏 社内では「スーパーマルチSKU戦略」と呼んでいますが、1つの設計で、なるべく多くのお客さまに届けることをやっています。AQUOS senseシリーズも、あれだけのカラーバリエーションやSKUを作れたのは鴻海の力です。例えば、ラインごとにキーが微妙に違ったりするのを作り分けるのは難しいのですが、そういった制御には鴻海の力が効いています。調達面でもそうですね。

―― その意味では、基礎体力がついたということでしょうか。

小林氏 日本人が企画して日本人が作っていますが、力的にはグローバルですね。調達力は圧倒的なので。

―― 結果として、シェアも急激に伸びました。

小林氏 正確な数値は言えませんが、おかげさまで“ウン倍”という感じで伸びています。これはAQUOS sense liteのパッケージングがよかったからだと思います。その前の「AQUOS SH-M04」あたりから伸び始めてはいましたが、一気に上がりましたね。ブランド力が上って、AQUOSでこの値段なら安いと感じられることも、あると思っています。

―― その意味では、かなり思い切ったことをしたなという印象です。

小林氏 賛否両論ありましたが、エントリーモデルは大事なゾーンです。AQUOSは回復基調にはありますが、ブランド認知度や推奨度で、トップブランドとタメを張れるとはまだ思っていません。まだまだ回復途上で、フィーチャーフォン時代の圧倒的なブランド力には程遠い。そういう方々が戻ってくるときに、選びやすいモデルがあることが重要だと考えています。

―― AQUOS sense plusが出た後も、AQUOS sense liteは併売していくのでしょうか。

小林氏 違うものとして併売します。AQUOS sense plusは、AQUOS sense liteよりお値段も上になるので、売り分けていきます。

AQUOS sense plus 左が「AQUOS sense lite」、右が「AQUOS sense plus」

―― AQUOS senseシリーズは息が長い端末になっていますが、今後のロードマップはどうなっているのでしょうか。1機種のライフサイクルを教えてください。

小林氏 市場との会話が必要で、お客さまがどういう反応をされるかを見ていきたいと思います。SIMフリーモデルなので長く売れますが、定期的に新商品を投入するというアイデアもあります。求められていないのに提供を続けていても意味がないので、SIMフリー専用モデルについては、よく見て、よく聞いて考えていきたいと思います。

取材を終えて:キャリアモデルの作り方から発想を転換したことが功を奏した

 AQUOS Rでブランドを統一し、存在感が一気に増したシャープのAQUOSシリーズだが、実はミドルレンジも2017年から戦略的を大きく転換させている。小林氏の述べていた「スーパーマルチSKU戦略」はその1つで、AQUOS senseはベースモデルを中心としながら、本体の素材やカラーを微妙に変えながら、幅広いキャリア、MVNOで販売されている。

 搭載する機能の取捨選択も絶妙になった。キャリアモデルの作り方から発想を転換したことが功を奏したようだ。グローバルメーカーとの戦いに真正面から挑んでいったことで、シャープの企画力、開発力がさらに向上していると感じた。

 AQUOS sense plusにも、その選球眼が生かされている。筆者もAQUOS senseを試してみたとき、値段はもう少し高くてもいいから、レスポンスを上げ、5GHz帯のWi-Fiには対応してほしいと感じていたが、AQUOS sense plusでは、これらの不満が見事に解消されていた。

 坂口氏がインタビューで述べていた通り、「『欲を言えばあとちょっと』を実現したモデル」に仕上がっているのだ。今後発表される価格次第ではあるが、AQUOS senseに続き、SIMフリースマートフォンの有力な選択肢になりそうな予感がする。

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