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インタビュー
» 2018年07月18日 12時44分 公開

即売イベント限定 ピクシブがQRコード決済「pixiv PAY」を始めた理由モバイル決済の裏側を聞く(2/2 ページ)

[房野麻子,ITmedia]
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2018年8月まで手数料は0円

 サークル側がpixiv PAYを導入するにあたって、初期費用がほぼゼロなのも魅力だ。購入者にQRコードを読み取ってもらえばいいので、おサイフケータイなどの決済で必要になるリーダー/ライターは不要。

 自分が持っているスマホにアプリをインストールするだけでいい。サークル側に発生するコストは、決済金額あたり3.6%の決済手数料と、売り上げを銀行口座に振り込む際の振込手数料200円(3万円以上なら300円)のみだ。しかも、8月末まで決済手数料無料のキャンペーンを行っている。「中国ではもっと低いといわれていますし、決済手数料はできるだけ下げていきたい」(重松氏)とのことで、可能な方法を検討しているという。

 なお、クレジットカードを持てない若年層などでも使えるように、pixiv PAYはコンビニ決済にも対応している。pixiv PAYで使えるポイントをコンビニでチャージし、そのポイントで作品を購入できる。 

pixiv以外のサービスにも広げていきたい

 2017年8月にリリースしたpixiv PAYは、コミケなどさまざまなイベントで実績を積んできたが、6月10日にピクシブが主催した「pixiv MARKET」で「問題点の洗い出しを行い、次の夏コミに向けて調整を行っている」(重松氏)状態だ。

 過去2回開催されてきたというpixiv MARKETだが、今回はpixiv PAYのみで決済ができる即売イベントとして開催された。入場するにはアプリ画面を見せるという念の入れようだ。「サークル側も一般の参加者も、双方ともpixiv PAYアプリを持っていないと決済できません。僕らはキャッシュレスの楽しさや便利さを体験してほしいけれど、自然発生的にそういう場を作ってもらうのは難しいと思ったので、われわれが主催して100%キャッシュレス、100%pixiv PAYを使っている状況を意図的に作って、半ば強制的にキャッシュレスを体験してもらいました」(重松氏)

 会場で現金が使われたのは、唯一、クレジットカードを持っていない参加者がpixiv PAYのポイントをチャージするときだけだった。このpixiv MARKETには300強のサークルが出店し、約3000人が来場して、ほぼ全員が1回以上pixiv PAYを使って作品を購入。現金がなくても買い物を続けられる便利さや、お金の管理が不要で安心感があったなど、評判は上々だったという。

 今後の展開が気になるところだが、「ビジネスモデル的に手数料でお金をもうけるつもりはありません」と重松氏は言う。それよりも「pixivの関連サービスでお金が流通していけばいいと思っています。pixiv PAYはお金の入り口になるもの。その売上金を使って、クリエーターのみなさんに次のイベントで出す本やグッズをpixiv FACTORYで作ってもらったり、他のサークルの商品をpixiv PAYで買ったりして、お金を回してほしいと思っています。pixiv PAY単体での収益化は考えていません」

 約3000万のpixivユーザーと関連サービスで「pixiv経済圏みたいなものを作っていきたい」と重松氏。pixiv PAY単体では赤字でも、pixiv関連サービス相互のシナジーを発揮して、全体で売り上げを作っていけばいいという考えだ。

 現在はpixiv内での対応を充実させているが、pixiv関連サービス以外にも、pixivのユーザー層と近いジャンルからpixiv PAYを広げることを検討している。

 「使える場所がたくさんあることも重要だと思っているので、アニメのグッズを扱うようなお店など、実店舗への導入も可能性を検討しています。また、話が進んでいるわけではありませんが、アニメを主題にしたリアルな舞台『2.5次元舞台』などにもマッチすると考えています」(重松氏)

 音楽フェスなどのイベントにも相性が良さそうだ。現在、pixiv PAYは個人間の決済(C2C)で、規約上、創作物の売買で使うものとされているが、こうなるとB2Cに近いフェーズになってくる。そうなると「創作物に縛られない規約を用意して、いろいろなところで利用できるようになっていくと思います」(重松氏)

 オンラインでの利用にも対応したいという。「購入したことがサークル側に提示できれば、現地では決済なしで作品を渡せます。即売イベントには“お取り置き”の文化があるので、その発想で機能を作って導入できると思います」(重松氏)

 大手3銀行がQRコードの規格を統一することで合意しているが、規格が整えばピクシブとしても合わせていきたいという。「表示したこのQRコードを、他のQRコード決済サービスでも払えるような世界になっていくのが理想だと思っています」(重松氏)


 取材前は、即売イベントという限定された世界をターゲットにした、こぢんまりした決済サービスという印象だったが、どこでも誰でも使えるQRコードを採用していることで、広がりを期待させるサービスになっていると認識を新たにした。今後もピクシブ主催のイベントをはじめ積極的に訴求していくとのことなので、クリエーターたちの支持を集められれば、定番のキャッシュレス決済ツールに成長するかもしれない。

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