「4年縛り」は景表法違反? 「0円端末」は本当に悪? モバイル通信政策シンポジウムで語られたこと(2/2 ページ)

» 2018年07月26日 06時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]
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「0円端末」は本当に悪だったのか?

モバイル通信政策 大阪大学院大学 准教授の安田洋祐氏

 マンデル氏と塚田氏の話を受け、安田氏と吉川氏がそれぞれの立場から見解を述べた。安田氏は競争活性化に向けてできることは、利用者のスイッチングコストを下げること、そして市場のプレーヤーを増やすことの「2つしかない」とし、スイッチングコストを減らす手法の1つである端末購入補助を排除するのは「筋が悪い」と話す。

 吉川氏も、「『0円端末』が本当に悪かったのか」と、端末補助規制に対する在り方に疑問を呈している。端末補助の規制はユーザーの公平性を担保し、MVNOの参入をしやすくするなどの狙いで導入されたものだが、それによって2年、4年といった期間拘束の長い「縛り」をキャリアが導入する結果になり、再販価格拘束にもつながっていると説明。吉川氏はこの問題について、2015年に当時の高市早苗総務大臣に対して「この政策はおかしい」と直接抗議しに行ったという。

モバイル通信政策 A.T.カーニーの吉川尚宏氏

 吉川氏は、行政が実質0円を規制した結果、キャリアが4年縛りを生み出し、それをまた行政が批判する……といった、イタチごっこが続いていると説明。「一度0円端末禁止の評価が必要ではないか」と、行政側の対応の見直しが必要との見解を示した。

 安田氏はiPhoneの端末価格について、Apple Storeで販売されているSIMロックフリーのiPhoneより、SIMロックがかかっている大手キャリアのiPhoneの価格の方が高く設定されていることがあり、独占禁止法で禁止されている「二重価格」に当たるのではないかと塚田氏に問題提起をした。この点について塚田氏は、キャリアが提示する端末価格に販売実績がないなど根拠がなく、そこから大幅値引きをアピールすると景品表示法問題になる恐れがあるというが、「同じ商品を販売業者によって異なる価格で売るのは問題にならない」と回答している。

ソフトバンクのイー・アクセス買収は「大失態」

 シンポジウムではパネルディスカッションも実施。1つ目の議題は期間拘束の問題で、キャリア側が2年縛りに関して、違約金が発生せず解約できる期間を現在の2カ月から3カ月にすることを検討しているとの一部報道が出ていると元榮氏が問いかけると、塚田氏は「一般論としてそうした期間を延長するより、契約後2年が経過したら違約金が発生せず、いつでも解約できるのが望ましいし、独占禁止法上の問題も小さくなる」と答えた。

 2つ目の議題は、新規参入する楽天の成否に関して。いずれの参加者も参入自体は歓迎する意向を示しており、中でも吉川氏は「キャリアとMVNOは相互依存でないと続かない関係。従来の政策ではMVNOとキャリアを競争させてきたが、それは持続性がない」との考えを示した。

 安田氏は楽天の将来として、「大手キャリアとそん色ない事業を展開する」か、「Y!mobileやUQ mobileなどのサブブランドとの競合になる」という2つのシナリオが考えられるとする。仮に大手キャリアの直接的な競合にならなかったとしても、サブブランドとの競争が加速することで値下げが加速し、それが大手3社に影響を与えることになるのではないかとの見解を示している。

 吉川氏はこの議題に関して、かつてイー・アクセスが携帯電話事業を展開していた過去を振り返り、「もともと日本のキャリアは4社体制だったが、ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)に買収された。これは(政府)当局の大失態」とばっさり。当時は携帯電話会社のM&Aは想定されておらず、買収された際は周波数を返還するという条項も設けられていなかったことから、「周波数の返還を求められなかった。公正取引委員会に出てきてほしかったが、非常に残念だったと思っている」とした。

 2018年に楽天に割り当てられた周波数帯には、そうした事態を想定し、電波を返還する必要があるとの条項が盛り込まれている。それゆえ仮に楽天が買収されたとしても、既存キャリアはその電波を獲得することはできない。

 最後の議題はMVNOの今後について。塚田氏は「キャリアが特定のMVNOのみ有利になるよう接続料を引き下げることは、それ以外のMVNOを阻害する要因となり独占禁止法上問題になる」と話す。一方で吉川氏は「MVNOがキャリアと接続する場合、みな同じ価格となる『相互接続』が主流。だが大口のMVNO側がダイナミックな料金設定ができるよう、『卸』による契約だけにした方がいいのではないか」と、MVNOの規模ややる気に応じて柔軟性のある取引ができる形が望ましいとの見解を示している。

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