海外メーカーの携帯電話を1500台以上所有する筆者のコレクションから、過去の懐かしい製品を振り返る「懐かしの海外ケータイ」。今回はNECが2004年に中国で発売したカードサイズの携帯電話「N900」をご紹介します。
N900は、2004年にNECが中国市場への本格展開を行う際の目玉製品として発売されました。本体の厚さはわずか8.6mmで、当時は「世界最薄」をうたっていました(関連記事)。
縦横サイズはクレジットカードとほぼ変わらず、カード型携帯電話として華々しく発売されたのです。パッケージは本体の小ささとは逆に豪華な化粧箱で提供されました。それもそのはずで、N900の価格は日本円で約10万円。フラグシップ、いや、高級モデルとしてあえて高値で投入されたのです。それでも4万台は売れたそうで、NECのブランド力アップにも寄与しました。
ここまで薄くするためにN900の内部は3層に分かれたモジュール構造になっています。ディスプレイは1.8型、120×160ピクセルですがカラー液晶でした。背面には30万画素カメラを搭載。フォトライトと、申し訳程度のセルフィー用のミラーが備わっています。一見するとカード型デジカメにも見えるかもしれません。ただしメモリカードスロットは搭載していないので、データの抜き出しはPCとケーブルでつなぐなど、やや面倒だったことでしょう。
ディスプレイの左上にはストラップホールがありますが、ネックストラップを付けて首からぶら下げ、人に見せびらかすようにするのがN900の正しい持ち運び方でしょう。なお、後継モデルの「N920」ではストラップホールが真ん中に移動。より美しくぶら下げられるようになりました。右側面には発着信キーや電源キー、左側面にはSIMスロットを備えます。
N900をここまで薄型化できたのは、携帯電話として必要な部品を省いたからでした。N900はスピーカーとマイクを搭載しておらず、通話するためには本体下部のコネクターに専用のヘッドセットを接続する必要があったのです。N900の発表時に「中国ではみなヘッドセットを使うので問題ない」という説明があったようですが、確かに多くの中国人がヘッドセットを使う文化でした。
しかし専用コネクター品では予備の入手が難しく、家を出るときにヘッドセットを忘れてしまうと通話ができません。他の携帯電話は当然ですが単体で通話できるため、ヘッドセットがなくても問題になることはありませんでした。
ということでデザインと大きさは飛びぬけて優れていたものの、使い勝手に難点があったため、販売数は伸び悩んでしまったようです。後継のN920の後は、ディスプレイをタッチパネルにしてテンキーを廃止した「N930」を出すなど、カード型携帯電話を続々と投入していきました。日本ではiモード高性能携帯電話を開発していたNECですが、中国市場にはGSM方式でデザインを重視した端末を数多く投入していたのでした。
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