世界を変える5G

「5G」は「LTE」と何が違う? 歴史と共に振り返る特集・ビジネスを変える5G(2/2 ページ)

» 2018年11月17日 06時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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世代名=規格名な「5G」 何ができる?

 そして迎えた新世代の「5G」。世代名が規格名の一部として初めて用いられた。規格の初版は6月14日に確定。10月から米Verizonがその要素技術を取り入れた商用サービスを開始している。

【追記:11月18日9時10分】Verizonの商用サービスに関して追記を行いました

 5Gという規格は、端的にいうとLTEからLTE-Advancedにかけて取り組んできたことをより高度化したものだ。どのような特徴があるのか、見ていこう。

高速・大容量化:高い周波数帯や新技術を活用

 スマートフォンの普及と高性能化に伴い、動画や音楽をストリーミング(常時)配信するサービスが普及した。LTEやLTE-Advancedの普及により、配信コンテンツのリッチ化も進み、秒間のデータ量(ビットレート)も上昇傾向にある。このトレンドが今後も続くとなると、より高速な通信への対応が求められる。

 そこで問題となるのが電波の周波数帯だ。周波数は低ければ低いほど伝送できる情報量が少ない代わりに障害物に強くなる。一方で、高ければ高いほど障害物に弱くなる代わりに伝送できる情報量が増える。

 現行のLTE/LTE-Advanced規格では、実用性と速度のバランスと、他の通信との兼ね合いから700MHz帯から3.5GHz帯の電波を利用しているが、より高速な通信を実現するには、30GHz以上の「ミリ波」を含む高周波数帯の電波の利用も検討しなければならない

 5Gでは、LTE/LTE-Advancedで使われている周波数帯に加えて、ミリ波を含む高周波数帯の電波を利用することも想定している。日本ではまず、3.7GHz帯、4.5GHz帯と28GHz帯の電波を5G用に割り当てることになっている。

電波確保の考え方 日本では3.7GHz帯と4.5GHz帯の電波と28GHz帯のミリ波を5G用に割り当てる予定(総務省資料より)

 規格としての5Gは下り最大20Gbps以上・上り最大10Gbps以上の通信速度を目指している。「高周波数帯電波の利用」「広めに確保された無線帯域」や「Massive MIMO(素子の多いアンテナを使った通信)の利用」といった工夫を凝らすことで、LTE-Advancedよりも高速な通信を実現する。実証試験段階では、下り20Gbps超という目標以上の通信にも成功している

 この高速化は4K・8K動画といった大容量のリッチコンテンツの配信はもちろんだが、固定ブロードバンドの代替としての役割も期待されている(先述のVerizonにおける5G商用サービスは、固定代替のルーターからスタートしている)。

ネットワーク構成 広帯域化やMassive MIMOなどを組み合わせることで高速化(総務省資料より)
Verizon 5G Verizonの5Gサービス初号機は固定代替のルーター(参考リンク

低遅延:リアルタイム性の高い用途に向く

 データ通信における応答速度を「遅延(レイテンシ)」という。遅延は少なければ少ないほど、データのやりとりが快適になる。

 無線区間の低遅延化はLTE/LTE Advancedでも取り組んでおり、現行の規格では片道5ミリ秒(0.005秒)以下を実現できる。5Gではさらなる低遅延化を進め、無線区間における遅延を片道1ミリ秒(0.001秒)以下に抑えることを目標としている。

 低遅延化は「データの伝送間隔の短縮」や「コアネットワーク(中核となるネットワーク)の応答速度の向上」によって実現する。規格上の目標通り遅延を0.001秒に抑えられれば、建設機械の遠隔操作、自動車の運転支援・自動運転技術への応用、遠隔医療行為やタイムラグのない高解像度VR(仮想現実)映像の配信などが実現できる。

 ただし、ここでいう「低遅延」は無線区間におけるものなので、「基地局とコアネットワークとの間の通信回線の速度」「コアネットワークと外部ネットワークとの間の通信速度」「情報を処理したり映像を圧縮・展開したりするコンピュータの処理速度」といった、無線区間“以外”の通信・処理速度も同時に高速化されないとポテンシャルを発揮できない

 低遅延化した5G回線を生かすためには、“周辺部”こそ鍵となるのだ。

低遅延 より一層の低遅延化が活用できそうな産業分野。ただし、回線以外の面で解決すべき課題が多い(総務省資料より)

多接続:IoT時代だからこそ生きる

 最近、「IoT(Internet of Things)」という言葉をよく聞く。直訳すると「モノのインターネット」という意味で、さまざまなデバイスにインターネット(ネットワーク)への接続機能を持たせようという文脈で語られることが多い。

 最近ならテレビ、照明やエアコンといった家電製品を音声エージェントデバイス経由で操作できる機能がIoTともいえるが、多くはBluetoothやWi-Fi(無線LAN)を経由して接続されており、「ポンと置いてすぐ使える」というわけではない。

 ここでLTE対応モジュールを搭載すれば解決……するかというとそうでもない。同時に接続する端末の数が増えすぎると通信品質に問題が生じるからだ。規格上、LTE-Advancedでも1平方キロメートル当たり約6万台の端末(回線)を接続できるが、人口密集地では人間が持つスマートフォンや携帯電話だけでも相当な台数となるため、若干心もとない。

 そこで、5G規格ではIoTデバイスでの利用を想定して1平方キロメートル当たり100万台の端末を同時接続できるようにしている。スマホやタブレットとは別に、自宅や職場に5G通信できるIoTデバイスを多数設置しても、通信パフォーマンスに対する影響は出にくくなる。

 5Gが普及すれば「ポンと置くだけ」でセットアップが完了するIoTデバイスも増えるだろう。ITリテラシーのそれほど高くない人でもつかいこなせるIoT技術の普及も図れるだろう。


 5Gでできることの多くは、LTEやLTE-Advancedでも実現できる。ただ、5Gを使えばより簡単に実現でき、応用をさらに進めやすくなる――そう理解しておくと良さそうだ。

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