最近よく聞く「5G」という言葉。「第5世代移動体通信」のことだ。
5Gは、現行規格の「4G(第4世代移動体通信)」と比べて「低遅延」「高速・大容量通信」「多接続」の面で進化……といっても、具体的に何ができるようになるのか、あるいは何がより便利になるのか分かりづらい面もある。
そこで、5月25日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されていた「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2018(WTP2018)」の展示内容から5Gでできること、便利になることを簡単に紹介してみようと思う。
携帯電話などで通話する時には、自分の発した声が相手に届くまでに若干の時間差が発生する。このような時間差のことを、通信の世界では「遅延(レイテンシ)」と呼んでいる。
現行の4Gでも、無線区間(端末〜基地局間)の通信は、接続開始までの遅延が100ミリ秒(0.1秒)、データ転送の遅延が片道5ミリ秒(往復10ミリ秒)と比較的低遅延……なのだが、他のボトルネック要素(基地局間の通信、端末のデータ処理など)によって遅延が加わることを考えると、機械の遠隔操作に使うためには、もう少し遅延が抑えられることが好ましい。
そこで、5Gでは無線区間のデータ転送遅延を片道1ミリ秒(0.001秒)以下に抑えることを目指している。他のボトルネック要素の改善も合わせて進めることで、その場(すぐ近く)で操縦しているのと同じ感覚で、機械の遠隔操作を行えるようになる。
加えて、5Gのもう1つの特徴である「大容量」を生かすと、遠隔操作に必要な映像(動画)をより多く、より高画質に伝送できるため、操作確認の確実性が増し、操作ミスや不慮の事故をより減らせる。
建設機械(建機)、とりわけ特殊な建機のオペレーター(操縦資格保有者)は不足する傾向にあるという(参考記事)。5Gの利点を生かすことで、オペレーターが足りないという社会的課題を解決できるのだ。
先述の通り、5Gを活用することで機械の遠隔操作のリニア性が高まり、映像を使った操作確認もより精緻に行えるようになる。このことは、コネクテッドカー(ネットワークにつながった自動車)の機能向上にもつながる。
例えば、自動運転を実現する場合、緊急時(人の飛び出しや急な割り込みに対する急ブレーキ)におけるシステム全体の応答性を高める必要がある。この際、周辺を走行する自動車、道路管理者や歩行者に対してより迅速に危険を伝える手段として、5Gの低遅延が性や多接続が役立つ可能性がある。自動運転に必要なプログラムやデータの配信時にも、5Gの高速・大容量通信は生かせるはずだ。
技術が進歩して、レベル4以上(※)の自動運転が実現すれば、ドライバーは前方注視から解放され、車内での過ごし方も変わるだろう。その際に、5Gの高速・大容量通信を生かして高画質な映画(動画)を自動運転車に配信して、ドライバーに見てもらう……という未来もあるかもしれない。
少し視点を変えると、カートに大型ディスプレイを装着し、5Gを使って高画質な動画広告をリアルタイム表示する「動くデジタルサイネージ」としての活用も期待できる。
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