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» 2018年11月22日 11時12分 公開

バラして見ずにはいられない:5Gに向けた設計、異形のL字型バッテリー 分解して知る「iPhone XS/XS Max」の中身

「iPhone XS」と「iPhone XS Max」を分解。中身を見ると、前モデル「iPhone X」との違いも分かる。プロセッサ、バッテリー、基板、eSIMなどを中心に紹介する。

[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

 2018年9月、Appleが「iPhone XS」と、その大画面モデル「iPhone XS Max」を発売した。ストレージの最大容量は512GBと過去最大となり、デュアルSIMにも対応した。背面カメラは両機とも12メガピクセルの2眼になり、どちらにも光学式手ブレ補正が搭載されている。

 分解すると、前モデル「iPhone X」との違いも見えてくる。今回はiPhone XS/XS Maxの“中身”で特に目立った点をご紹介したい。

iPhone XS iPhone XSの製品外観。ディスプレイの大きさを除けば、iPhone XS/XS Maxのカメラの性能は同じで、顔認証もFace IDで統一された

部品から見る「A12 Bionic」の特徴

 スマートフォンのエンジンともいえるプロセッサは、iPhone XS/XS Maxでは「A12 Bionic」に進化した。1億台単位で生産されるスマホとしては、世界初の線幅7nmの微細化を達成し、トランジスタ電極と上部電極の設置面積を増やす「FinFET」と呼ばれる技術が使用されている。

iPhone XS 最も大きなICが「A12 Bionic」プロセッサ。このICも2階建てになっており、今見えているのは4GBのDRAM。プロセッサはこの下に実装されている

 2017年の10nm製品と比べると、理論上は30%ほど小型化できるが、空いたスペースにより多くのトランジスタを詰め、さらなる高機能を実現させているため、チップ面積はそれほど大きく変化していないと思われる。

 2017年、A11の推定価格は25ドル(米ドル、以下同)だった。ICチップは直径300mmのお皿のような形状のシリコンウェハー上にさまざまな処理を行って製造する。7nm FinFETプロセスの採用によって製造上の手間が増えたため、製造コストは上昇し、A12プロセッサの価格は28ドルと推定される。

Intel製のベースバンドプロセッサを採用

 報道されたように、AppleとQualcommは訴訟中である。2018年のiPhoneからQualcommプロセッサは排除され、初代iPhoneに搭載されていた旧ドイツ、Infineon TechnologiesのDNAを受け継ぐIntel製プロセッサが採用された。QualcommとAppleの争点は技術移転に関するものであるが、価格もその一因であったといわれる。高額な技術使用料(ライセンス料)への不満があったようだ。

iPhone XS Max こちらはiPhone XS Maxの分解図。Intelのベースバンドプロセッサを搭載している

 2017年までIntelはQualcommより廉価なICを納入することでAppleのサプライチェーンに入っていたが、2018年は様相が異なる。2017年より高機能化した通信機能を担当するIntelのベースバンドプロセッサは、他社のスマホで使用されているQualcommの同等品と比べ、シリコン面積が3倍も大きい。当然価格も高くなり、2017年まで10ドル弱であったこの部品の価格は2018年は年15ドルまで高騰した。シリコン面積単価では20ドルを超えているもおかしくないサイズで、Intelは相当利益率を削っていると予想される。

5Gを見越した2階建て基板

 2017年のiPhone Xで基板の2階建て構造が採用された。2枚のPCB(プリント基板)の表と裏それぞれ、計4面に部品を載せられるのがメリットで、2018年も同様の構造が採用された。4面ある部品実装スペースのうち、1面には部品が搭載されていない。これは何を意味するのだろうか。

 iPhoneの基板には部品がギッシリ詰まっており、これ以上部品を搭載するスペースはないように見える。5G通信に対応すると、通信部の大型部品を幾つか追加搭載する必要があり、現在の空きスペースが活用されると思われる。

 基板を2階建てにして部品を搭載しない面を残す構造は、中国メーカーのスマホでも見られ、5Gを見据えた共通設計の一つとなっている。

iPhone XS 2階建て基板の片面には部品を搭載しない面がある。次世代通信規格(5G)の部品を搭載するエリアと思われる
iPhone XS 大きな銀色のICは東芝の64GBフラッシュメモリ。容量によって異なるメーカー製品を使用していると思われる。2018年は512GBモデルの登場が話題となった
iPhone XS 基板の上の細い部分と下部が通信部品。5G通信ではこれらの部品の多くがさらに1セット必要になる
iPhone XS 液晶ポリマーを使用していると思われるアンテナケーブル。大きなものは1個5ドル程度と推定され、単独の電子部品としてはかなり高い

異形のバッテリー

 iPhone XS最大の特徴は、L字型の一体型バッテリーの採用といえる。リチウム・イオン・ポリマー二次電池の利点の一つは、どんな形にも成形できる点だ。iPhone Xは長方形のバッテリー2個をL字型に組み合わせたものだったが、XSでは同じ形状を1個のバッテリーで実現した。

iPhone XS iPhone XSを分解したところ。目立つのは画面左から2番目のL字型シングルセルバッテリー。右隣の2階建て基板は2017年から引き継がれた

 長方形のバッテリーはそば生地を切るときのように折り重ねて製造する。L字型バッテリーの場合はその形状ゆえにこの方法が使えず、L字型のシートを重ねて製造されたと思われる。長方形の場合よりコストがかかり、18〜20ドルの間と推定される。

 価格が課題だが、さまざまな形状に加工でき、しかも大量生産できることはメリットだ。今後、バッテリー容積が限られている補聴器や小型IoT機器などで役立てられるだろう。

Apple初のデュアルSIM

 1台のスマホで2つのSIMカードを利用する主な目的は通信量の節約だ。1枚のSIMカードは音声通話用として同じ番号でキープしておき、2枚目は番号が変わっても影響がないデータ通信用として、その時々でお手頃な価格のデータプランを提供する通信会社のプリペイドSIMカードという使い方が多い。

 iPhone XS/XS Maxは、iPhoneとして初めてデュアルSIMに対応した。デュアルSIMが最も多く利用されている国は中国といわれ、この機種は中国市場を意識したものといえる。実際、中国、香港、マカオで販売されているiPhone XS Maxは、nanoSIMを2枚同時に挿せる仕様になっている。1つのSIMトレイの前面と背面それぞれに、nanoSIMを載せられる。

 それ以外の地域で販売されているiPhone XS Maxと全世界のiPhone XSでは、片方のSIMは「eSIM」を使用する。物理SIMカードスロットに加え、iPhone XS/XS MaxともにeSIMの役割を果たすマイコンが1個搭載されている。これは銀行のIC付きキャッシュカードやパスポートなどに搭載されているものと同じである。

iPhone XS 以下はiPhone XS Maxの分解図。基板下部にある大きな構造物がデュアルSIMスロット
iPhone XS Max eSIMは基板に直接実装されている
iPhone XS Max iPhoneの特徴的な部品である「Taptic Engine」と呼ばれる振動モーター。推定価格は1個5ドル
iPhone XS Max コネクターはほとんど日本製
iPhone XS Max Force Touchを担当するセンサーは金属パネルにセンサーを印刷する方式
iPhone XS Max ディスプレイは両方ともSamsung製有機ELパネル。6.5型有機ELパネルの推定価格は100ドル。単品の電子部品としては最も高額だ
iPhone XS Max 顔認証を行うFace IDの構成は2017年と同じ。赤外線レーザーで顔に数万の点を投影し、赤外線カメラで凹凸を読み取って認証する。Appleによると誤認率は100万人に1人
iPhone XS Max 画面右のデュアルカメラは標準レンズと望遠レンズ。同じ12メガピクセルでもセンサーサイズが異なる点が興味深い

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