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» 2019年01月14日 06時00分 公開

鈴木淳也のモバイル決済業界地図:海外のキャッシュレス事例にみる、日本の決済に必要なもの (3/3)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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楽しくなければ決済じゃない

 中国の杭州でAlibaba直営スーパー「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」を見て感じたのは、「決済」というのは「買い物体験」の中のプロセスの1つでしかなく、重要なのは体験全体ではないかということだ。

 盒馬鮮生は、Alibabaが運営する近未来型スーパー。ロボットが動いて配膳する本当に近未来的な店舗もあるのだが、実際のところスーパー自体はローテクな部分も多く、それよりはむしろ「来店した人間を楽しませる」ことに主眼を置いている。

 例えば店舗中心部には巨大ないけす群があり、買い物客は生きている魚やエビを併設レストランに持ち込むことでその場で調理してもらい、すぐに食べられる。買い物から食事までが一連の体験になっているわけだ。

 生鮮品コーナーでは天井にコンベヤーが縦横無尽に張り巡らされ、買い物かごがせわしなく移動している。これは盒馬鮮生でピッキングサービスを行っており、アプリで注文すると店員がスーパーの商品を買い物かごに入れ、柱に設置されたリフトにピッキング済みのかごを引っかけて天井のコンベヤーに送り出す。このかごは店舗内の配送センターへと送られ、3km圏内の住所に30分以内に届けられる。一種のオムニチャネルだが、この盒馬鮮生の配送エリア内の住宅価格が高騰しているという話もあるというから面白い。実際に店舗は見ていて飽きない。

 子どもを想定したのか、さまざまな自販機コーナーも設置されており、盒馬鮮生自体が一種の遊び場のような作りになっている。

盒馬鮮生 Alibaba直営スーパーの「盒馬鮮生」では、店舗中央に巨大な“いけす”コーナーがあり、来店者が鮮魚を自由に見て購入できる
盒馬鮮生 購入したシーフードはそのまま併設フードコートのカウンターに持ち込んで調理してもらえる。これはなかなか楽しいアイデアだ
盒馬鮮生 レジはセルフチェックアウト方式で、Alipayによるキャッシュレス決済が可能。現金しか持っていない場合は、現金決済カウンターに行く必要がある
盒馬鮮生 店舗天井にはレールが縦横無尽に走っており、オンラインピッキングサービスを利用した顧客のカートが移動していく様子が見られる。これも一種のエンタテイメントだ

 もし現状で日本のキャッシュレス化に不足している議論があるとすれば、「エンタテイメント性」ではないかと考えている。別の言葉でいえば「ユーザー体験」だ。

 最近増えている「無人店舗」や「レジなし店舗」でも、エンタテイメント性が重要だと考える。筆者は何度かAmazon Goを利用したが、これは快適でなかなか楽しい。買いたいものが決まっているならすぐに目的の商品をゲットして店を出てしまえばいい。

 もしショッピングをじっくり楽しむとしても、退店時は退屈なレジ待ち行列や会計のことは考えないでよく、あくまで買い物に集中できる。「レジなし店舗」という業態の本質は、この「買い物に集中」できるというユーザー体験にあるのだと考える。

 盒馬鮮生についても、買い物が煩わしいならオンラインでピッキングサービスを使えばいいし、買い物や食事そのものを楽しみたいなら実際に来店すればいい。

 「利用者が何を望んでいるか」を想定していない無人店舗やレジなし店舗は受け入れられることはなく、早晩淘汰(とうた)されるだろう。キャッシュレスについても同様で、エンターテインメント性の希薄な独りよがりなサービスは、使われることなくひっそりと消えていくのだろう。余裕がなくなったといわれる日本社会だが、ぜひ元来のエンターテインメント精神を生かして世間をあっと言わせるサービスが登場することに期待したい。

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