「ソフトバンク」と「Y!mobile」 2ブランド併存戦略の“功罪”(1/3 ページ)

» 2019年02月06日 12時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 ソフトバンクのモバイル(携帯電話)通信事業には、「ソフトバンク(SoftBank)」と「ワイモバイル(Y!mobile)」の2つのブランドがある。さらに、同社は子会社として「LINEモバイル」というMVNOを抱えている。

 2月5日に同社が行った決算説明会で宮内謙社長は、ソフトバンクブランドは「大容量」「ビジネス」、Y!mobileブランドは「ライトユーザー」、そしてLINEモバイルは「若い(10代から20代前半の)ユーザー」というふうに、ターゲットユーザーによってブランドを分ける戦略を改めて打ち出した。

 このマルチブランド戦略は、競合する他キャリアにはない差別化要素でもある。しかし、特にソフトバンクとY!mobileの2ブランドを併存させる戦略はメリットもあればデメリットもある。両ブランドは、これからどうなっていくのだろうか。

マルチブランド戦略 ソフトバンクは、子会社化したLINEモバイルも巻き込んだマルチブランド戦略を取る

若干複雑な両ブランドの成り立ち

 ソフトバンクとY!mobileの両ブランドのモバイル通信事業は、若干複雑な経歴を持っている。

 ソフトバンクブランドは、ソフトバンクグループ(旧ソフトバンク)が英Vodafoneから買収した「ボーダフォン」というモバイルキャリア(MNO)がルーツ。そのボーダフォンも元々は「ジェイフォン(J-PHONE)」で、J-PHONEは「デジタルホン」「デジタルツーカー」両グループが統合して生まれたブランドだった。

 一方、Y!mobileブランドは、ソフトバンク(当時は「ソフトバンクモバイル」)とは“別の”MNOだった「ワイモバイル」がルーツ。ワイモバイルは「イー・モバイル(EMOBILE)」ブランドでモバイル通信事業を展開していた「イー・アクセス」が、PHS事業者「ウィルコム」を吸収合併して生まれた企業だった。この合併の際、沖縄県においてウィルコムと地元企業が合弁で設立した「ウィルコム沖縄」は存置され、現在に至っている。この経緯から、沖縄県に限ってはY!mobileブランドを“別法人”であるウィルコム沖縄が運営している。

うまくいった「S」と「Y!」のすみ分け

 2015年にソフトバンクモバイル(現在のソフトバンク)が法人としてのワイモバイルを合併した際は、両ブランドの“すみ分け”が1つの課題とされた。端的にいうと、月額料金の安さがトリガーとなって、ソフトバンクブランドからY!mobileブランドへの「乗り換え」が進み、ARPU(※)が落ち込むのではないかという懸念があったのだ。

※ Average Revenue Per User:1契約者当たりの平均収入

 ソフトバンクでは両ブランド間の行き来を「番号移行」と呼んでいる。合併後の2016年度は「ソフトバンク→Y!mobile」の番号移行が圧倒的に多く、この懸念は事実上当たってしまった。

 しかし、ソフトバンクブランドが超大容量のパックプラン「ウルトラギガモンスター」を導入した2017年度は、「Y!mobile→ソフトバンク」の番号移行も増加。そして2018年度は、第3四半期までにおいて双方向の番号移行がほぼ均衡するように。ARPUも上昇トレンドとなった。

番号移行状況 2月5日の決算説明会で初めて公開されたソフトバンクとY!mobileの「番号移行」状況。「Y!mobile→ソフトバンク」方向の移行が増えた結果、両方向の行き来がほぼ均衡。ただし、縦軸の数値が示されていないため、実数は分からない

 現在、沖縄県以外に所在する、既存のY!mobileショップと商圏が重複しないソフトバンクショップにおいて、Y!mobileブランドの商品も取り扱うケースが増えている。店舗によっては、新築あるいは改装のタイミングで「SoftBank」「Y!mobile」両ブランドが目立つような看板を掲げるケースもある。改装したショップの風ぼうは、まるで「ソフトバンクショップ兼Y!mobileショップ」のようだ。

 両ブランドの行き来が均衡トレンドになったのは、データ通信容量に対するニーズをブランドで振り分けたことはもちろんだが、ショップの「ダブルブランド化」も貢献しているようだ。

Y!mobileショップ検索 Y!mobileのWebサイトで「ソフトバンク」をキーワードに店舗検索すると、沖縄県を除く全国のソフトバンクショップが「Y!mobileショップ」としてヒットする
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