コンテンツビュワーとしての役割に加えてもう一つ、新モデルから示唆されるのは、iPad Airの復活に伴ってキーボードが快適に使える中価格帯のiPadを用意することで、「プロダクティビティ(生産性)ツールとしてのiPadを実体験として知る人たちを育てたい意図」があるのではないか。
タブレット型端末には、スマートフォンよりも大きな画面でコンテンツを受け身で楽しむためのベターなツールという性格もある。しかし、何らかの価値やコンテンツを生み出すプロダクティビティツールとしての認知を広げなければ、単なるコンテンツビュワーにしかならない。
今回、第1世代ながら(2モデルともに)「Apple Pencil」に対応したのも、高価なiPad Proへの「入口」としてiPad Airを置くことで稼働端末を増やし、アプリ開発者たちに魅力的なプラットフォームであることを訴求したいと考えたからではないだろうか。
筆者は2018年10月末の新型iPad Pro登場当初から、2019年のWWDCでiOSのiPad向け機能および操作性に大きな改良が施されるのではないか、と予想している。iPad Proは確かに素晴らしいパフォーマンスを備えているが、パソコンに比べると、振る舞いや日本語入力などの機能性、汎用(はんよう)性などに一定の制約がある。
「iPadをパソコン的に扱う際の使いやすさを向上させること」が、新しいiOSの一つのテーマであり、それにあらためて取り組もうとしているのではないか、という予想がにわかに現実味を帯びてきた。
初代iPad Proが登場した翌年(2016年)のWWDCでも、iPad向けに大幅なiOSの強化が行われた。今回はそれ以上のアップデートになる可能性もある。操作性や機能、入力のしやすさなどでパソコンと比べられるレベルにまで引き上げることができれば、iPadの適用範囲はさらに広がっていく。
またWWDCを一つの節目として考えるならば、iPad mini以上の全てのiPadに最新世代のNeural Engine内蔵SoC(System on a Chip)が採用されることになったことも大きい。iPhone側も「iPhone XR」以上は全て同じNeural Engineだ。これを用いたAR(拡張現実)機能、機械学習を用いたアプリなど、(サードパーティーと仕込んであるであろう)新たな仕掛けが用意されているのかもしれない。
ハードウェア基盤を整えた上で、OSアップデートで製品そのものの機能やアプリ向け開発環境の底上げを行うのはAppleの毎回のパターンだけに、6月のWWDCに注目だ。
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