ただし、先に述べたように、今回のスペシャルイベントはAppleの“宣言”に近い内容で、どこまでこれらの新サービスが、各国の事情に沿ったものになっているのかは未知数の部分も多い。
実際、Apple News+は、米国とカナダでスタートしたものの、拡大のペースは緩やかで、今秋以降にようやく英国やオーストラリアで提供される。前身となる無料のApple Newsも、日本ではいまだ提供されていない。コンテンツパートナーの協力や交渉が欠かせないだけに、Appleの一存ではサービスを拡大できないのだ。
また、ゲームや映画といったコンテンツも、地域性が強く出るため、米国で発表したものをそのまま各国に輸出するだけでは、成功を収めるのは難しいかもしれない。スペシャルイベントにはさまざまな映画監督や女優、テレビ司会者などがゲストに招かれていたが、会場で盛り上がっていたのは米国の来場者が中心だったというのは、それを象徴する事例といえる。スティーブン・スピルバーグ氏やJ・J・エイブラムス氏といった“超大物”は別だが、筆者にも「この人は誰?」という戸惑いがあった。
逆にもし日本の有名人を起用しても、他国のメディアには全く響かなかったはずで、コンテンツやサービスはそれだけ地域性が強くなるということだ。Apple Cardのように、各国の規制当局の認可を必要とするサービスも、簡単には展開国を広げにくい。支払額を可視化し、それに応じて支払いができるサービスも、米国のクレジットカード事情や決済文化に根差したもので、そのままの形で諸外国に展開できない可能性もある。
Apple自身もそれは分かっているはずで、既存のサービスでは、Apple Musicの編成は各国が独自に行っている。日本向けのApple Musicを開始するにあたっては、単に日本の楽曲を取り込んだだけでなく、日本の音楽事情に精通したスタッフを起用するなど、裏側でもローカライズを徹底している。
Apple TV+は100以上、Apple Arcadeは150以上と展開国が多いため、過去のサービスで培ったノウハウを援用していくのかもしれない。Apple Cardも米国ではゴールドマンサックスやマスターカードをパートナーにしたが、仮に日本で展開する場合は、日本で実績のある会社と提携する必要がありそうだ。
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