スペシャルイベントでは直接的な言及はなかったが、Appleは収益の柱としてサービス事業を育てていく方針を掲げている。現状のAppleは、売り上げの多くをiPhoneに依存している一方で、スマートフォン市場の成熟化に伴い、その状況にも限界が見え始めている。販売台数は頭打ちになり、高価格化路線も十分な成功を収めているとはいえない。
事実、Appleが2019年1月に発表した第1四半期の業績を見ると、iPhoneの売上高は前年同期比で15%ほど減少しており、新たな収益源を模索する必要に迫られている。一方で、サービス事業は108億7500万ドル(約1兆1971億円)で、前年同期比で19%の成長を達成した。
サブスクリプション型のサービスは、成功すれば継続的な収益をもたらすことができるため、毎年の完成度や市場動向によって変動するハードウェアよりも、安定したビジネスといえる。iPhoneやiPad、Macをはじめとした強力なプラットフォームを持つAppleが、サービス事業を重視する路線にかじを切ったのは、ある意味自然な流れだ。
ただ、サービス事業へのシフトは、Appleの専売特許ではない。iPhoneを販売するキャリアも、回線契約でのユーザーとの接点をベースに、上位レイヤーのサービスを強化している。ドコモの「dマガジン」「dTV」や「dカード」などはその一例で、雑誌や映像配信、クレジットカードという点では、Appleの進出しようとしている分野とも共通性がある。KDDIもNetflixと提携し、月額料金を組み込んだプランを提供している。
Appleの本拠地である米国でも同様の事例はあり、これは日本に限った話ではない。起点は違うが、目指す方向は同じというわけだ。キャリアとの協調路線でiPhoneを拡大してきたAppleだが、サービス事業でどう折り合いをつけていくのかは、今後注目しておきたいポイントだ。KDDIがApple Musicを半年無料で提供しているような取り組みは、他の分野でも必要になってくるはずだ。
(取材協力:アップルジャパン)
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