Appleはなぜ発表会の前週に新「iPad Air」「iPad mini」を発表したのか石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

» 2019年03月23日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 それはまさに青天のへきれきだった。Appleが、3月25日(現地時間)に米カリフォルニア州で開催される発表会に先立ち、18日に「iPad Air(第3世代)」と「iPad mini(第5世代)」の2機種を発表した。19日にはパフォーマンスが2倍に上ったとうたう「iMac」を発表。これで終わらず、20日はバッテリー駆動時間やQiに対応した、第2世代の「AirPods」を発表し、話題を集めた。

 発表会の1週間前に、3日連続で新製品を発表するのは異例の展開。ここからは、サービス事業に収益構造をシフトさせたいAppleの思惑も見え隠れする。ここでは、刷新されたiPadのラインアップを振り返るとともに、発表会の前の連続発表にどのような意味があるのかを解説する。

iPad
iPad 「iPad Air」(上)と「iPad mini」(下)の2機種を発表した
iPad 3月20日には、第2世代の「AirPods」も発表

第6世代iPadとiPad Proの間を埋める新「iPad Air」

 新しく加わったiPad Airは、10.5型のディスプレイを搭載したタブレットだ。Appleは2018年11月に発売した11型と12.9型の「iPad Pro」でホームボタンを廃し、iPhone Xシリーズと同様のFace IDを採用したが、iPad Airではそれが見送られている。デザイン的には、既存モデルとして併売されてきた10.5型のiPad Proをマイナーチェンジして、Airのブランドを冠したかのようにも見える。

 実際、iPad Airは、Proのブランドこそないが、背面に「Smart Connector」を搭載しており、ディスプレイ保護用のケースを兼ねる「Smart Keyboard」も装着できる。Smart Keyboardは、10.5型のiPad Proと共通のものだ。一方で、背面を見ると、カメラの出っ張りがなくなり、背面がフラットになっていることが分かる。あえてカメラのスペックを12メガピクセルから8メガピクセルへと落とし、Airとしてのデザインを優先させたことがうかがえる。

iPad iPad Proと同様、Apple PencilとSmart Keyboardに対応する

 後述するiPad miniと同様、第1世代ながらApple Pencilにも対応。プロセッサはiPhone XS、XS Max、XRと同じ「A12 Bionic」で、ニューラルエンジンも搭載する。8コアのCPUと7コアのGPUを持つ、現行iPad Proの「A12X Bionic」には及ばないが、最新のiPhoneと同じと考えれば、十分なパフォーマンスといえる。iPad Proよりは遅くなるかもしれないが、画像や動画の処理にも十分耐えるスペックだ。

iPad 最新のiPhoneと同じA12 Bionicを搭載し、パフォーマンスが必要なARアプリやゲームもスムーズに動くという

 ただし、Apple Pencilは第1世代で、iPad Proに搭載されたUSB Type-Cも見送られており、充電や周辺機器との接続はLightningで行う。先に挙げたFace IDに対応しないことに加え、こうした点がiPad Proと呼ばれなくなった要因といえる。その分、価格はiPad Proより抑えられており、最小構成の64GB版、Wi-Fiモデルで5万4800円(税別、以下同)から。2018年3月に発売されたiPad(第6世代)よりは高いが、その分、スペックを備えたいわば“セミプロ”仕様のiPadで、iPadとiPad Proの間を埋める製品といえる。

iPad miniもApple Pencilに対応し、iPadの売りが明確に

 もう1つのiPad miniは、iPad mini 4以来、約4年ぶりの新型だ。とはいえ、こちらもデザインは踏襲しており、iPadやiPad Airと共通感を持たせている。7.9型とタブレットとしてはコンパクトで、重量もWi-Fiモデルが300.5gと、片手で持ってもあまり負担にならない。しかも新型のiPad miniはApple Pencilに対応しているため、移動中などにサッと取り出してメモを取るのにも向いている。中身はiPad Airとほぼ同じで、プロセッサはA12 Bionic。Wi-Fiモデルで4万5800円からと、スペックを考えるとリーズナブルだ。

iPad iPad miniもApple Pencilに対応した

 iPad AirとiPad miniを加えたことで、第6世代のiPadと合わせて“松竹梅”のラインアップが出来上がった。その上のiPad Proがプロ用としての立ち位置を明確にする中、一般向けのiPadのラインアップを広げた格好だ。iPadは、最高で年間7000万台程度の出荷台数を記録していたが、2014年ごろから徐々に減少に転じ、2016年度(2015年10月から2016年9月)は通期で4559万台に。直近の2018年度(2017年10月から2018年9月)は通期で4353万5000台に落ち込んでいた。

iPad iPadの出荷台数は4000万半ば前後で推移している
iPad ラインアップは、2機種のiPad Proと、3機種のiPadに整理された

 2018年3月には、低価格路線で教育市場にも焦点を当てた第6世代のiPadを投入したが、ラインアップ全体を見ると、高価格帯のiPad Proが中心になっていた印象もある。iPad AirとiPad miniを加え、低〜中価格帯のiPadを整理するとともに、ラインアップの厚みを強化したと見ていいだろう。

 第1世代と第2世代が混在しているものの、全ての製品にApple Pencilが対応した結果、iPadの売りが「クリエイティビティ」にあることも明確になった。第6世代のiPadを発表した際には、Apple Pencilに再び光を当て、デジタルブックに絵を入れたり、文章に注釈を入れたりといった活用方法を提案していたが、こうした応用ができるのも、豊富なアプリがそろうiPadならでは。機能性や利用シーンの広さを訴求することで、Androidタブレットとの単純な価格競争に巻き込まれないのもiPadの強みといえる。

iPad
iPad 2018年3月の発表会では、第6世代のiPadとともに、教育市場への取り組みをアピールした。Appleは、Apple Pencilを差別化要素と考えているようだ
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  3. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  4. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  5. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  6. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  7. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  8. Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ (2026年03月11日)
  9. 【無印良品】ウエストポーチもになる「スリングバッグ」が3990円に値下げ中 植物由来の原料を使用 (2026年03月11日)
  10. 「えっ、地震?」──LINEが安否確認テスト 1日限定で 「紛らわしい」との声も (2026年03月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年