もう1社、MaaSを実現する上で注目しておきたいのがJapanTaxiだ。同社が提供している「JapanTaxi」アプリでは、タクシーの配車から決済までをワンストップで行える。NAVITIMEとの提携も先述の通りだが、タクシーを軸にMaaSの取り組みを拡張している。勉強会ではJapanTaxi マーケティング部 事業開発グループ グループマネージャーの新井辰宏氏が、「MaaS社会におけるタクシー」と題して同社の戦略を語った。
新井氏は、タクシーならではの特徴に「24時間365日走行しているため、鮮度の高いデータを常に収集できること」と「ドアtoドアの移動手段なので、さまざまな道路情報を網羅できること」を挙げる。例えば、「都内で4500台のタクシー車両が走っているが、これは都内の90%の道を1週間に一度は通ることだ」と新井氏。こうした特徴は「他の交通機関にはない」(新井氏)もの。ここで収集したデータを活用したサービスにもJapanTaxiは力を入れている。
その1つが、ドライバー向けのタクシーの配車支援システム。JapanTaxiは、トヨタ、KDDI、アクセンチュアと提携したシステムを開発しており、2018年3月に都内で試験導入した。どの時間帯に、どこに人がたくさん集まるかを可視化することで、効率よくタクシーを配車できる。ユーザーにとっては、乗りたいときに乗れるタクシーが増えるメリットがある。予測システムを使うことで、スキルの劣るドライバーでも売り上げを増やせるというメリットも生まれる。
タクシー車両を見守りサービスに活用する動きもある。ビーコンを搭載した見守り端末を持つ子供のそばにタクシーが近づくと、車載タブレットがビーコンの位置を記録し、親が子供の現在地を確認できるようになる。OTTAの見守りサービスと提携したところ、JapanTaxiの車載タブレットが1年間で約30万回の通学を見守ったという。
ドライブレコーダーが取得したデータを活用する構想もある。例えば、工事による交通状況の変化や、駐車場の満空情報を取得できるため、これらのデータを機械学習で処理することで、学習データとして活用できることが期待される。
ナビタイムとJapanTaxiとの提携もそうだが、さまざまなモビリティサービス事業者が手を取り合うことで、それぞれのサービスが拡張し、MaaSのレベルも上がる。ナビタイムとJapanTaxiは、サービスと通じて蓄積された膨大なデータを持つことも強み。これらのデータを最大限に生かせる事業者とタッグを組めるかも重要になるだろう。
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