端末購入補助の分を料金値下げに回す分離プランの構造を考えると、2年間のトータルコストは大きく変わらない。先に挙げた試算の通り、iPhone XSの月々サポートを受けているユーザーが現行プランのままでとどまっても、新料金プランに変えても、料金水準が大きく変わらないことは、その証拠といえるだろう。ただし、これまで月々サポートは、端末購入補助として扱われてきた。それがない新料金プランでは、いわゆる“実質価格”が打ち出せなくなるため、見かけ上だが価格が上がったように捉えられかねない。
また、分離プランは同じ端末を長く使い続ける動機づけが強くなる仕組みといえる。旧料金プランの比較にも表れていたが、月々サポートが切れると、そのぶん新料金プランが安くなるためだ。結果として、端末の買い替えサイクルが、さらに長期化する恐れも出てくる。特にdocomo withのユーザーが、値上げに反発して買い替えを控える可能性は高そうだ。これらの点を踏まえると、新料金プランが端末の買い控えにつながる恐れもある。
端末の割高感を抑えるため、ドコモはミドルレンジモデルを強化していく方針。吉澤氏は「分離プランになった場合、端末購入補助を今までのようにたくさんかけるわけにはいかない」としながら、「販売価格が4万円以下のものも、性能はほとんど見劣りしない。デザインや使い勝手のいいもの(ミドルレンジ端末)はそのまま強化して、お買い求めやすいようにしていく」と語っている。
さらに、ドコモは通信料金にひもづかない何らかの割引は検討しているようだ。吉澤氏によると、「フラグシップのデバイスは、正価でというとかなり負担が大きくなる。そういったデバイスに興味や愛着を持たれるお客さまもたくさんいるので、お求めやすくする工夫を考えている」という。「分離したからといって、端末の値引きはゼロということにはならない」(同)という。
新料金プラン導入後のトータルコストがどの程度になるのかは、この割引次第という側面があり、今の段階では是か非かの評価がしづらい。その意味で、現時点では、新料金プランの全貌は明らかになっていないといえる。仮に端末の割引が月々サポートほどではないにせよ、それなりに大きくなれば、上記の不安点は解消される。それが判明する5月の発表会は、要注目といえる。
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