上記のように、制裁には猶予が設けられているが、これは3カ月と期限が切られたもの。米国と中国の外交問題が絡むため、期間が延長されるかどうかは不透明で、逆にいえば、両国のトップ会談が設けられ、ある日、突然制裁が解除ないしは緩和される可能性もある。米国と中国、どちらにとってもHuaweiの制裁は“貿易戦争”を有利に解決するためのカードの1枚になっているため、この問題がどう転ぶかは、容易に予想できない。HuaweiやGoogleがサポートを約束しているコメントも、あくまで「現時点では」というただし書きが付く。
仮に制裁が長期化すれば、日本市場への影響も小さくはないだろう。Huaweiにとっては夏商戦の出ばなをくじかれた格好になり、販売台数が減少してしまう恐れがある。特に、型番に「lite」が付く廉価モデルは、同社の日本における主力製品で、販売台数も多い。P30 liteの先代にあたる「P20 lite」は、発売した18年6月から19年4月までの集計期間において、「(BCN調べで)日本で最も売れたAndroid端末」(ファーウェイ デバイス 日本・韓国プレジデント 呉波氏)だという。P20 liteを主力としていたMVNOも多く、その後継機であるP30 liteにも期待が掛かっていた。
P30、P30 liteは量販店での購入は可能なものの、最近ではMVNOがSIMロックフリースマートフォンメーカーにとっての販路として重要になりつつある。先の呉氏も、2018年、筆者のインタビューに答える形で、「1社のMVNOが販売したスマートフォンの数が、1つの家電量販店より多いということもあった」と語っていた。販売延期が長引けば、Huaweiの業績に与える影響は大きくなる。
MVNOにはASUSやOPPO、シャープなど、代替となる端末を用意しておく手はあるが、Huawei端末のコストパフォーマンスのよさには定評があり、ユーザーからの支持も厚かった。特に、端末とのセット販売比率が高いMVNOには、影響が大きいそうだ。他メーカーの端末や既存のHuawei端末で、P30 liteの穴を埋めていかざるをえなくなるだろう。この価格帯でトリプルカメラ(1つは測距用だが)を搭載している端末は珍しかっただけに、MVNO側にも早期に販売を開始したい思いがあるはずだ。
分離プランを導入した大手キャリアにとっても、安価なHuawei端末は目玉の1つになっていた。例えばauの場合、夏商戦向けのミドルレンジモデルはHuaweiのP30 lite Premiumと、サムスン電子の「Galaxy A30」が事実上の2本柱になっている。P30 lite Premiumの発売を延期したことで、選択肢はGalaxy A30一択になってしまった。
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