“スマホルーター”も開発中 MAYA SYSTEMが1万円台のクラウドSIMスマホを投入する狙いSIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/3 ページ)

» 2019年07月03日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 経営破綻したプラスワン・マーケティング(POM)からFREETELブランドを引き継ぎ、話題を集めたMAYA SYSTEMだが、同社がもともと主力にしていたのは、中国のuCloudlinkが開発した「クラウドSIM」を採用したWi-Fiルーターだ。クラウドSIMとは、サーバ上に差し込まれたSIMカードの情報をネットワーク経由で書き込むことで、現地通信事業者に直接接続できる仕組みのこと。SIMカードは事業者側が調達するため、ユーザーが直接キャリアと契約するわけではないが、国際ローミングと比べ、割安な料金でサービスを受けることができる。

 同社が2018年発売した「jetfon」は、そのクラウドSIMを搭載した初のスマートフォン型端末。Wi-Fiルーターとは異なり、別途端末を持つ必要がなく、1台で割安な海外通信を使えるのがこの端末のメリットといえる。一方で、jetfonはミドルレンジモデルだったこともあり、発売当初は価格も3万9800円(税別、以下同)と少々割高だった。1台で済ませるには、この端末を国内でも使わなければならないことになるが、同じ価格帯のミドルレンジ端末と比べ、機能面で見劣りしていたのも事実。普及には、こうした課題を乗り越える必要があった。

MAYA SYSTEM 2018年に発売した、MAYA SYSTEMのクラウドSIM対応スマートフォン初号機「jetfon」

 そこでMAYA SYSTEMが新たに投入したのが、「P6」だ。P6は、jetfonだけでなく、FREETELブランドのもとで展開していた「Priori」の2ブランドが用意され、価格も1万6800円に抑えた。価格の安さを生かし、メインとは別の「海外用スマートフォン」として販売していく方針だ。FREETELで人気のあった、Prioriのユーザーを取り込む狙いもあるという。

MAYA SYSTEM 2号機となる「jetfon P6/FREETEL P6」(写真はP6)

 では、MAYA SYSTEMはどのような戦略でjetfonやFREETELのスマートフォンを広げていくのか。MAYAホールディングスの取締役で管理本部 副本部長を務める高倉昭氏と、MAYA SYSTEM 執行役員 プロダクトオペレーション部 部長の山田邦彦氏、経営企画マーケティング部 部長の山崎正志氏にお話を聞いた。

jetfonとPrioriではユーザーの属性が違う

MAYA SYSTEM 経営企画マーケティング部 部長の山崎正志氏

―― まずは、jetfonとPriori、それぞれのP6を発売するに至った背景を教えてください。

山崎氏 P6はいわゆるエントリーモデルで、クラウドSIMをとにかくたくさんの方に使っていただきたいという思いで発売しました。最初のjetfonはミドルレンジからハイエンドに近いところのスペックで、価格帯も3万円台(3万9800円)からのスタートでしたが、今回は思い切って最初から1万円台(1万6800円)で出しています。iPhoneなど、既にいいスマホを1台目として持っている方が、2台目として使ってもらってもいい。まずは、クラウドSIMを使っていただければということで投入しました。

―― ブランドを2つに分けた理由は、どこにあるのでしょうか。

山崎氏 使っていただきたいお客さまの属性が違います。jetfonはレンタル海外Wi-Fiを使っていた方に向けたもので、レンタルではなく、自分の持っているスマホがそのまま海外でも使えるという、新しい世界を作っていくためのブランドです。一方のFREETELは、もともとSIMフリーのブランドで、国内で使うことがメインだと考えています。国内ではSIMフリースマートフォンとして使い、海外に行こうとしたらWi-Fiルーターをレンタルしなくても使える。売り方とターゲットが、2つのブランドで少し違っています。

 もう1つは、FREETELを長くお使いいただいている方に向けたという理由もあります。初代REIや、Priori 3、4、5と出てきた中で、こういったものを使っている方に向けた端末として考えました。新しいスマートフォンを使っていただきたいという、サポートの一環でFREETELブランドでも出しています。

山田氏 合計すると、まだユーザーは数万人規模でいますからね。

―― 実際のところ、発売後の動向はいかがですか。

山崎氏 P6全体になりますが、5月13日に発売して、現時点(取材は6月中旬)で1000台以上の数が出ています。Prioriの後継ということもあり、オンラインでは、最初から国内で使うことを想定し、OCN モバイル ONEのSIMカードともセットで販売しています。

―― その数字は、大きいのでしょうか。

山崎氏 初代(jetfon)と比べると、かなり多いですね。

―― 対Prioriではいかがでしょうか。

山崎氏 Prioriも、初月で同じぐらいでした。直近のPriori 5と比べても、あまり変わらない数字です。

2台持ちの方が海外では安心できる

―― ところで、P6の“P”はPrioriの頭文字だと思いますが、“riori”はどこにいってしまったのでしょうか。

山崎氏 (苦笑)。正直申し上げると、ギリギリまでFREETELとjetfon、どちらのブランドにするのかの議論がありました。当然FREETELユーザーにも使っていただきたいのですが、今まで出会っていなかった新しいお客さまにもクラウドSIMを使っていただきたい。FREETELに固執せず、間を取った形になります。

MAYA SYSTEM P6の背面。販売中のブラックに加え、ゴールドとホワイトは後日発売する予定

―― 想定通り、2台目端末として持たれているのでしょうか。

山崎氏 実際、初代jetfonを販売したときも、2台持ちが多く、iPhoneと一緒に持ち歩いているという方が多かったですね。海外に頻繁に行かれる方からは、Wi-Fiルーターをレンタルしなくていいというお声もちょうだいしています。アンケート調査の結果ですが、海外に行く回数が年平均4回か5回の方が多く、海外に行くために買ったという回答も9割を超えていました。P6はエントリーモデルになったこともあり、傾向は今までとちょっと変わるかもしれませんが、まだ出して間もないため、結果は分かりません。

―― 価格を考えると、2台持ちはしやすそうですね。

山崎氏 危険な地域に行くときに、iPhoneだと盗難にあってしまうリスクもあります。タクシーに乗りながら、ずっとマップを開いているような使い方をされることもあり、電池持ちを気にする方もいます。日本と海外では、使うアプリも違うため、そういうときにも2台持ちはいいと思います。

高倉氏 あとは、若干ですが、日本在住の外国籍の方も買われているようです。中国の方や欧米の方で、デュアルSIMなので、外国に帰ったときだけクラウドSIMに切り替えるという使い方もできます。

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