「iPhone 11」シリーズを試す カメラは“超広角が加わっただけ”ではなかった(3/4 ページ)

» 2019年09月17日 19時00分 公開
[石野純也ITmedia]

ナイトモードに対応し、弱点だった暗所撮影も克服

 操作性だけでなく、画質も大きく向上している。2018年までのiPhoneと比べたとき、特に顕著なのが暗所での画質だ。iPhone 11シリーズでは、光量が足りないシーンで自動的に「ナイトモード」に切り替わり、複数枚の写真を合成することでノイズが少なく、明るい写真を撮れる。スペシャルイベントでは、ナイトモードに自動で切り替わることが強調されていたが、これは手動でのモード変更が必要なAndroidスマートフォンに対する優位性をアピールする狙いがあったとみられる。

iPhone 11 光量が不足すると、自動でナイトモードが起動する

 実際、暗所での画質は2018年のiPhoneから大きく向上している。以下に掲載したのは、iPhone 11 Pro MaxとiPhone XRで撮った写真だ。前者は椅子の色合いが明瞭で、ディテールまで鮮明なのに対し、後者は色の情報が抜け落ちていてノイズも多い。より光量の少ない室内で撮ったピザの写真も、違いは明白。iPhone 11 Pro Maxの方がディテールまで破綻がなく、色味も正確に写っている。iPhoneのカメラは暗所での性能が課題だったが、これをしっかり克服した印象だ。

iPhone 11 iPhone 11 Pro Maxで撮影
iPhone 11 iPhone XRで撮影。iPhone 11 Pro Maxの方が明るく、色も正確に表現されている
iPhone 11 iPhone 11 Pro Maxで撮影
iPhone 11 iPhone XRで撮影。薄明りしかついていない部屋で撮ったが、ノイズがかなり抑えられている。iPhone XRで撮った写真は細部が破綻している

 では、夜景に強いといわれていたAndroidスマートフォンとの比較ではどうか。以下は、航空機内のわずかな明かりで撮ったサラダの写真だ。Androidは筆者が携帯していたHuaweiの「P20 Pro」、iPhoneはiPhone 11 Pro Maxを使用している。P20 Proは2018年のモデルになるため、必ずしも公平な比較ではないが、撮影時に後継機の「P30 Pro」が日本で発売されていなかったため、ご容赦いただきたい。とはいえ、P20 ProからP30 Proで暗所撮影の性能が劇的に上がったわけではないため、参考にはなるはずだ。

iPhone 11 iPhone 11 Pro Maxで撮影
iPhone 11 P20 Proで撮影。どちらも明かりがほぼない場所の割にはキレイだが、iPhone 11 Pro Maxの方が、色彩が豊かで正確性もある
iPhone 11 iPhone 11 Pro Maxで撮影
iPhone 11 P20 Proで撮影。料理の写真も、iPhone 11 Pro Maxのみずみずしさに軍配が上がる。ディテールの描写も正確だ

 結論から言うと、どちらも光がほとんどないわりにはよく撮れている。ただし、自然さでは、iPhone 11 Pro Maxに軍配が上がる。発色の正確さも、iPhone 11 Pro Maxが一段上回っている印象だ。複数の写真を合成しているにもかかわらず、手ブレがほぼないのも評価できる点だ。

 一方で、P20 Proも複数枚の写真を合成する夜景モードにすると、クオリティーが上がり、iPhone 11 Pro Maxに肉薄している。その場の雰囲気に近いのがiPhone 11 Pro Max、肉眼以上に明るく、昼間のようになるのがP20 Proといった傾向の違いもある。ここまで来ると、後は好みの違いになってしまうかもしれないが、少なくとも、暗所に弱いという汚名は返上できたといえる。

iPhone 11 iPhone 11 Pro Maxで撮影
iPhone 11 P20 Proで撮影。夜景モードに変更したところ、iPhone 11 Pro Maxよりかなり明るくなった
iPhone 11 ただし、iPhone 11 Pro Maxの別カットでは明るさが異なるため、最初の写真は合成などに失敗してしまったのかもしれない

 暗所時以外でも、スマートHDRの性能が上がり、明暗差の大きな場所での仕上がりがさらによくなっている。以下の写真は光の差し込む室内で撮ったものだが、人物の肌がしっかり表現されていて、顔も明るいが、背景が飛んでしまっているわけではない。ディテールの描写も細かく、iPhone XS世代よりも、さらに性能が上がっている。

iPhone 11 スマートHDRが効き、人物、背景ともにしっかり写っている

 また、超広角カメラが加わったことで、ポートレートモードも進化した。iPhone 11の先代にあたるiPhone XRはシングルカメラだったため、機械学習を使って疑似的にポートレートモードを実現していたが、iPhone 11はデュアルカメラになったことで、焦点距離の差を活用するようになった。結果として、人物だけでなく、物や動物などにもポートレートモードを適用できるようになった。

iPhone 11 iPhone 11では、iPhone XRが非対応だった、人物以外でのポートレートモードにも対応

 iPhone 11 Pro Maxは、超広角カメラとの視差を使い、広角カメラでもポートレートモードを使えるようになった。従来のデュアルカメラ搭載iPhoneでは、望遠側で撮影していたため、被写体にかなり寄った、文字通りのポートレート写真になってしまっていたが、iPhone 11 Pro Maxでは、周囲の風景を生かした写真も撮影できる。被写体との距離を無理やり離す必要もなくなり、より使いやすくなった点は評価できる。

iPhone 11
iPhone 11 望遠側に加え、広角側でもポートレートモードで撮影できるようになった

 ただし、料理のように対象が小さい場合、被写体に近づきすぎると、ポートレートモードが有効にならない。そのため、広角カメラ側で撮ろうとすると、全体が写ったやや間の抜けた写真になってしまう。ストローのような細い物体を認識するのも苦手で、これはずっと改善されていない。得意とする機械学習を使えば、ある程度克服できそうなだけに、ソフトウェアアップデートなどでぜひ改善してほしい。

iPhone 11 ストローのような、細い物体は苦手

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