操作性だけでなく、画質も大きく向上している。2018年までのiPhoneと比べたとき、特に顕著なのが暗所での画質だ。iPhone 11シリーズでは、光量が足りないシーンで自動的に「ナイトモード」に切り替わり、複数枚の写真を合成することでノイズが少なく、明るい写真を撮れる。スペシャルイベントでは、ナイトモードに自動で切り替わることが強調されていたが、これは手動でのモード変更が必要なAndroidスマートフォンに対する優位性をアピールする狙いがあったとみられる。
実際、暗所での画質は2018年のiPhoneから大きく向上している。以下に掲載したのは、iPhone 11 Pro MaxとiPhone XRで撮った写真だ。前者は椅子の色合いが明瞭で、ディテールまで鮮明なのに対し、後者は色の情報が抜け落ちていてノイズも多い。より光量の少ない室内で撮ったピザの写真も、違いは明白。iPhone 11 Pro Maxの方がディテールまで破綻がなく、色味も正確に写っている。iPhoneのカメラは暗所での性能が課題だったが、これをしっかり克服した印象だ。
では、夜景に強いといわれていたAndroidスマートフォンとの比較ではどうか。以下は、航空機内のわずかな明かりで撮ったサラダの写真だ。Androidは筆者が携帯していたHuaweiの「P20 Pro」、iPhoneはiPhone 11 Pro Maxを使用している。P20 Proは2018年のモデルになるため、必ずしも公平な比較ではないが、撮影時に後継機の「P30 Pro」が日本で発売されていなかったため、ご容赦いただきたい。とはいえ、P20 ProからP30 Proで暗所撮影の性能が劇的に上がったわけではないため、参考にはなるはずだ。
結論から言うと、どちらも光がほとんどないわりにはよく撮れている。ただし、自然さでは、iPhone 11 Pro Maxに軍配が上がる。発色の正確さも、iPhone 11 Pro Maxが一段上回っている印象だ。複数の写真を合成しているにもかかわらず、手ブレがほぼないのも評価できる点だ。
一方で、P20 Proも複数枚の写真を合成する夜景モードにすると、クオリティーが上がり、iPhone 11 Pro Maxに肉薄している。その場の雰囲気に近いのがiPhone 11 Pro Max、肉眼以上に明るく、昼間のようになるのがP20 Proといった傾向の違いもある。ここまで来ると、後は好みの違いになってしまうかもしれないが、少なくとも、暗所に弱いという汚名は返上できたといえる。
暗所時以外でも、スマートHDRの性能が上がり、明暗差の大きな場所での仕上がりがさらによくなっている。以下の写真は光の差し込む室内で撮ったものだが、人物の肌がしっかり表現されていて、顔も明るいが、背景が飛んでしまっているわけではない。ディテールの描写も細かく、iPhone XS世代よりも、さらに性能が上がっている。
また、超広角カメラが加わったことで、ポートレートモードも進化した。iPhone 11の先代にあたるiPhone XRはシングルカメラだったため、機械学習を使って疑似的にポートレートモードを実現していたが、iPhone 11はデュアルカメラになったことで、焦点距離の差を活用するようになった。結果として、人物だけでなく、物や動物などにもポートレートモードを適用できるようになった。
iPhone 11 Pro Maxは、超広角カメラとの視差を使い、広角カメラでもポートレートモードを使えるようになった。従来のデュアルカメラ搭載iPhoneでは、望遠側で撮影していたため、被写体にかなり寄った、文字通りのポートレート写真になってしまっていたが、iPhone 11 Pro Maxでは、周囲の風景を生かした写真も撮影できる。被写体との距離を無理やり離す必要もなくなり、より使いやすくなった点は評価できる。
ただし、料理のように対象が小さい場合、被写体に近づきすぎると、ポートレートモードが有効にならない。そのため、広角カメラ側で撮ろうとすると、全体が写ったやや間の抜けた写真になってしまう。ストローのような細い物体を認識するのも苦手で、これはずっと改善されていない。得意とする機械学習を使えば、ある程度克服できそうなだけに、ソフトウェアアップデートなどでぜひ改善してほしい。
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