9月10日(現地時間)に、米カリフォルニア州クパチーノで、Appleのスペシャルイベントが開催された。既報の通り、ここでは「iPhone 11」「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」の他、第7世代の「iPad」や「Apple Watch Series 5」が発表されている。本連載では、基調講演や周辺取材から見えてきたAppleの戦略の変化を解説する。
2018年は、次の10年を示すスマートフォンとして開発された「iPhone X」のバリエーションを拡大した。iPhone Xの直接的な後継機としての「iPhone XS」に加え、その大画面版の「iPhone XS Max」、さらにはディスプレイに液晶を採用し、シングルカメラでコストを抑えた「iPhone XR」を発表し、ホームボタンのない、フルディスプレイのiPhoneを一気に3機種展開した。
スマートフォンの需要が飽和を迎える中、Appleは単価を上げる高級路線にかじを切っていた。ただ、メインとなるiPhone XSは日本でも10万円を超え、“iPhoneの高額化”を嘆く声も聞こえてきた。同じチップセットを搭載しながら、iPhone XRが“高い廉価版”といった矛盾をはらむ存在と見られてしまうなど、ラインアップの位置付けが必ずしも整理されていなかった印象もあった。
これに対し、スペシャルイベントでは、iPhone 11がラインアップの中心であることが明確に打ち出された。CEOのティム・クック氏が、99%というiPhoneの顧客満足度を披露した後、「驚くべき新しいデザインに、最新の機能を詰め込んだ次世代のiPhone」として紹介されたのが、iPhone XRの後継にあたるiPhone 11だった。
対するiPhone XS、XS Maxの後継機はiPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Maxと、命名規則を一新。写真撮影や動画撮影にこだわる「プロ向け」と位置付けられた。ティム・クック氏が、「最も洗練されたテクノロジーを求める方もいる。限界を押し広げるため、特別なものを作った」と語っていたように、2機種の扱いは高級モデルになった。クック氏からバトンを受け継ぐ形で、iPhone 11 Pro、11 Pro Maxを披露したフィル・シラー上級副社長も、これら2機種を「プロの仕事に耐えうるもの」と紹介している。
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