「公正競争を阻害する」 ドコモが楽天モバイルのMVNO継続を批判する理由

» 2019年10月04日 20時43分 公開
[田中聡ITmedia]

 これまでMVNOとして通信サービスを提供してきた楽天モバイルが、MNO事業に参入したことで、「MVNOの在り方」が改めて問われている。

 楽天モバイルは、MNOとしてサービスを提供してからも、当面はMVNOサービスを継続していく方針を示している。だが、これに異を唱えるのが、楽天モバイルに回線を貸し出しているNTTドコモだ。吉澤和弘社長は、楽天がMNOサービスを始めるのなら「MVNOは解消してもらいたい」と強く批判している

 2019年7月の決算会見で、吉澤氏は「MNOとして事業運営を開始するのなら、ネットワークを自ら構築してお客さんを収容していくのが本来の姿。MVNOをすぐにMNOに移行することはできないと思うので、ある時間、時期を区切って移行していただく。MNOとMVNOを並行させて運営するのは違うと思う」と話していた。

ドコモ吉澤社長 楽天のMVNO継続や、競合MNOグループ会社がドコモ回線を借りたMVNOサービスの展開に否定的な見方をする、ドコモの吉澤和弘社長

 総務省が9月11日に開催した、モバイル市場の競争環境に関する研究会(第17回)では、MVNOによる5Gの円滑な提供や、MNOとMVNOの競争環境の整備について、話し合いが行われた。ドコモ、KDDI、ソフトバンクいずれも、商用サービスの開始と同時期にMVNOが5Gサービスを提供できるよう、情報提供や環境整備を進める見通しであることを示した。

ドコモ 5Gの商用サービス開始と同時に、MVNOも5Gサービスを始められるよう準備を進めていく。これはKDDIとソフトバンクも同様のスタンスだ
ドコモ ドコモは既に、MVNOに対して5G関連の情報を提供しているという

 その一方でドコモが問題提起したのが、MNOとMVNOを同時展開することや、MNOのグループ会社(ビッグローブやLINEモバイルなど)が他のMNOから回線を借りてMVNOとしてサービスを提供すること。ドコモは「MVNOを利用して他MNOネットワークを利用する形態は認められるべきではなく、制度整備が必要」と訴える。

 楽天モバイルがMNOとMVNOを並行させることについても、「MNOでありながら、MVNOも継続すると堂々と発表された。本来なら、早急に(MVNOの)新規受付を停止、移行を促進すべきなのに、このような発表をするのは本当に遺憾」とあらためて批判した。

楽天モバイル 楽天モバイルはMNOとMVNOのサービスを当面は並行させる

 そもそも、なぜMNOとMVNOを並行させることが悪なのか? ドコモは3つの理由を挙げる。1つが、イノベーション競争を阻害すること。例えばドコモの5G回線を楽天モバイルに貸し出し、楽天がMVNOとして5Gサービスを提供した場合、ドコモの5G技術が楽天モバイルに使われてしまうというリスクがある。

 2つ目が、電波の有効利用を阻害すること。先述した吉澤氏の指摘にも関連するが、MNOでありながら、自社の電波を使わずに事業展開することは、電波を有効に使わず、設備競争の阻害になるというものだ。

 3つ目が、情報漏えいによる公正競争の阻害だ。現在、KDDI傘下のビッグローブと、ソフトバンク傘下のLINEモバイルが、ドコモから回線を借りてMVNOサービスを提供しているが、ドコモから提供された機密情報を、例えばビッグローブがKDDIに、LINEモバイルがソフトバンクに漏らす可能性がある――というわけだ。

ドコモ ドコモがMNOとMVNOの並行を「なし」だと指摘する理由

 ただ、3つ目の情報漏えいするケースは実際に起こりうるのだろうか? ドコモの担当者は「(MVNOとは)NDA(秘密保持契約)を結んでいる。立証のしようもない」と話すが、起こりうるケースとして、以下のように説明する。

 「例えば、nuroモバイル(ソニーネットワークコミュニケーションズ)は3キャリアの回線を使っているが、ソニーネットワークがドコモの情報を(KDDIやソフトバンクに)漏らしても、それによるインセンティブは考えにくい。一方、ビッグローブとLINEモバイルは、(キャリアと)明らかに親子関係にあり、親会社に対して情報提供することで、何らかのインセンティブがあるのでは」

 MNOは、MVNOの接続に対しては原則として応じなければならないため、今回のような理由で接続を断ることは現行法では認められない。従って何らかの法整備が必要、というのがドコモのスタンスだ。

 ドコモをはじめとする3キャリアは、MVNOがサービス提供に必要な5Gの情報について、積極的に提供していく構えだけに、「この問題は5G時代になると、さらに拡大する恐れがある」とドコモは危惧する。5Gの商用サービス開始のタイミングで、MNOとMVNOの間に何らかの規制が加わるかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年04月27日 更新
  1. 3社そろい踏みの「Starlink Direct」 料金で仕掛けるドコモとソフトバンク、先行するKDDIは“サービス”で差別化 (2026年04月25日)
  2. スマホの「残価設定」にメス? 総務省がルール統一を検討も、Appleは「不当な扱い」と猛反発 (2026年04月25日)
  3. 楽天モバイル、ルーター「Rakuten WiFi Pocket 5G」の販売を一時停止 理由は? (2026年04月24日)
  4. ダイソーで1100円の「USB充電器(PD20W)」は、きちんと20Wで充電できるのか? (2026年04月26日)
  5. Xiaomiの前に、中国スマホの“雄”だったMeizu、またしてもピンチ (2026年04月26日)
  6. ダイソーの1100円「シースルーイヤフォン」に一目ぼれ “音質と個体差”に目をつむれば「あり」な選択肢 (2026年04月23日)
  7. 携帯電話のホッピング問題、「6カ月以内の継続利用を認める」方向で決着か 2026年夏に結論 (2026年04月23日)
  8. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  9. 1.72型ディスプレイ搭載スマートバンド「Xiaomi Smart Band 10」、高精度の睡眠モニタリングも可能 (2026年04月25日)
  10. 5万〜6万円台で買えるおすすめスマホ7選 ハイエンド級性能、防水+おサイフ対応、カメラ重視など多彩 (2026年04月27日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年