DMM mobile買収で契約増の楽天モバイル ただしMNOとMVNOの両立は不可に? ドコモ吉澤社長は不快感石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

» 2019年07月13日 08時53分 公開
[石野純也ITmedia]

 MVNOの業界再編が続いている。10月にMNOとして新規参入する楽天モバイルは、7月9日、DMM.comが運営するDMM mobile事業を買収することを発表した。事業の移管は9月1日を予定。DMMはDMM mobile事業を別会社に分割し、これを承継する対価として、楽天モバイルは約23億円を支払うスキームになる。この事業承継により、楽天モバイルのMVNO事業は、契約者数が約220万に達する見込みだ。

楽天モバイル DMM mobileの買収で、楽天モバイルは契約者数をさらに伸ばすことになった。写真は池袋東口店オープン時のもの

獲得コストの代わりに買収でユーザー数を伸ばした楽天モバイル

 楽天モバイルの狙いは、非常にシンプルだ。プレスリリースにも記載されていたように「モバイル事業の顧客基盤拡大」と、それに伴う「楽天エコシステムにおけるメンバーシップの強化」が買収の目的となる。DMM mobileは、24万回線とMVNOの中では比較的規模が大きく、MNO参入を控え、ユーザー数の拡大を目指す楽天モバイルにとっては魅力になる。単純計算でいえば、1ユーザーを約1万円で買ったとの見方もできる。割引や広告宣伝などに費やす獲得コストを考えると、割安ともいえる。

楽天モバイル DMM mobileはユーザー数24万と、比較的規模が大きい。楽天モバイルからは23億円が支払われる

 実際、楽天モバイルは以前も同様の手法で、規模を拡大している。2017年11月には、経営が破綻しかかっていたプラスワン・マーケティング(POM)から、FREETELブランドのMVNO事業のみを約5億2000万円で買収。これによって、約40万回線を一気に上乗せすることに成功し、MVNO市場でシェア1位に躍り出た。POMのMVNO事業買収は、救済的な側面もあったため、改めて振り返ってみると、かなり割安な価格でユーザー数を増やしていたことが分かる。

 POM買収後に開催された記者会見で、楽天モバイルの常務執行役員、大尾嘉宏人氏が「オーガニックグロース(自律的な成長)より、M&Aの方がお客さまの獲得コストが安いのであれば、それ(M&A)もありえる」と語っていたが、DMM mobileも、まさにそのケースに当てはまる。

楽天モバイル 2017年11月には、POMのMVNO事業を買収し、回線数を一気に140万に伸ばした

 楽天モバイルによると、「当面はDMM mobileを継続してご利用いただける環境を提供する予定」(広報部)だというが、2つのブランドを併存させるのは、経営効率が悪い。しかもDMM mobileは他社の社名を冠しているため、いずれは楽天モバイルに一本化することになりそうだ。MNOとしてのサービス開始後は、「弊社の回線をご利用いただけるような環境を検討している」(同)という。

 DMM mobileの全ユーザーが楽天モバイルの自社回線に切り替えるとは限らないが、ゼロからユーザーを集めるより効率がいい。MNO事業のベースを作る上でも、必要な買収だったというわけだ。MVNOは少ない設備投資で始められるため、さまざまな会社が参入したが、コスト構造を見ると回線を借りるための費用がかなりの割合を占める。ここを自社回線に切り替えられれば、楽天モバイルとしての収益性も高まることになる。

楽天モバイル 10月には自社回線を開始するが、DMM mobileユーザーの移行に関しては、現在検討中とのこと

 現状では、DMM mobileの名称や料金プラン等は、当面維持する予定だというが、料金に対して付与しているポイントは、DMMポイントから楽天スーパーポイントに変更される。ブランドがDMM mobileのままでも、ポイントシステムを切り替えることで、ユーザーを楽天経済圏の中に組み込めるため、楽天全体にとってもメリットが大きい。逆にDMM mobileにとっては、採算性が低いMVNO事業を売却することで事業を再編できる。

進むMVNOの再編、今後も買収劇はあるか

 コスト構造をどう設計するかにもよるが、MVNOはもうかりにくい事業といえる。例えば、オプテージの運営するmineoは、100万回線を損益分岐点に設定していたが、ショップの運営やソフトバンク回線の追加といったコストがかさみ、黒字化の目標を先送りしている。他の事業とのシナジー効果をにらんで参入しているMVNOも少なくないが、回線だけではなかなか利益を出しづらいのが現状だ。

 800社を超え、“格安スマホ”としてブームにもなったMVNOだが、ユーザー数の伸びも鈍化しており、曲がり角を迎えている。6月に調査会社のMM総研が発表したMVNOの市場規模を見ると、「独自サービス型SIM」の回線数は、2019年末で1312.2万回線。2018年3月末から約100万回線増加した一方で、携帯電話回線全体に占める構成比は7.4%と、伸び率は鈍化している。サブブランドの台頭や、ドコモなど、MNO自身が料金値下げに踏み切ったことが、その理由だ。

楽天モバイル
楽天モバイル 回線数自体は増加しているものの、市場全体に占める構成比は伸び悩んでいる

 一方で楽天モバイルのように、規模を必要とする事業者も存在する。この「需要と供給」がマッチすれば、POM社やDMM mobileに続く事例が出てくる可能性もある。楽天モバイルも、「具体的に決まっていることはないが、いい話があれば検討していく」(広報部)と買収に前向きだ。MVNOのシェア上位を見ると、すでに大手通信事業者の傘下になっている事業者も多いが、経営が立ち行かなくなった小規模なMVNOを、MVNEが引き取るケースも考えられる。

楽天モバイル シェア上位6社は、NTTやKDDIグループの会社が多いが、「その他」に多数のMVNOがひしめきあっている。ここが再編される可能性もありそうだ
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