インタビュー
» 2019年08月30日 06時00分 公開

MVNOに聞く:DMM mobile買収の衝撃 “MVNOの楽天モバイル”はどこに向かうのか? (1/3)

楽天モバイルのMNO事業開始から3カ月を切ったタイミングでのDMM mobile買収は、業界に大きな衝撃を与えた。楽天モバイルは買収の理由として「顧客基盤の強化」を挙げている。MNOへの新規参入を控えたこの時期に、なぜあえて他のMVNOを買収したのか?

[石野純也,ITmedia]

 MNOとして、10月1日に携帯電話業界への新規参入を予定する楽天モバイルだが、スタートまで3カ月を切った7月9日の買収劇は、業界に大きな衝撃を与えた。同じMVNOのDMM mobileの事業を、9月1日に承継するというのがその内容だ。DMM mobileは現状の楽天モバイルと同様、ドコモから回線を借りるMVNO。6月30日時点で24万のユーザーを抱え、2社を合算すると、回線数は220万に達する予定だ。

 楽天モバイルは買収の理由として「顧客基盤の強化」を挙げている。確かにユーザー数が増えれば、それだけMNOに移るユーザーも増える可能性が高まり、楽天経済圏として見たときの層も厚くなる。一方で、MNOへの新規参入を控えたこの時期に、あえて他のMVNOを買収するのは異例。MNO参入後も、MVNOをサブブランド的に強化していく意思表明にも映った。この買収の真相はどこにあるのか。楽天モバイルの常務執行役員 営業・マーケティング本部長の大尾嘉宏人氏にお話を聞いた。

楽天モバイル DMM mobileの買収は、業界を驚かせた

DMM mobileは楽天モバイルと親和性が高い

楽天モバイル 楽天モバイル 常務執行役員 営業・マーケティング本部長の大尾嘉宏人氏

―― 早速ですが、DMM mobileを買収した経緯を……。

大尾嘉氏 その前に、楽天モバイルを始めてからこれまでの振り返りをさせてください。2014年10月29日に楽天モバイルの開始を発表してから、もうすぐ5年になります。当時は三木谷が登壇し、「1/3」と書かれたスライドを出しながら、通信業界に風穴を開けるということを打ち出しました。

 14年の段階で、ここまでの戦略は描いたんです。MVNOに参入してからは、常に大手キャリアがやっているいいところはまねする、よくないところや、無駄が多いこと、お客さまのことを考えていないところは徹底的に止めようとしました。最初はまず差分を埋めようと、2015年は徹底的に端末のラインアップをそろえました。なぜこれをやったかというと、大手キャリアは端末が豊富だし、他のMVNOとは差別化としてサプライチェーンを築けるからです。資金力も必要になりますが、大手と同じように端末をそろえていきました。

 次に、2016年からはサービス面での差分を埋めていきました。1つ目が5分間のかけ放題で、当時のMVNOにはあまりなかったのと、3キャリアがやっていたのでキャッチアップしました。もう1つは店舗を拡大しました。渋谷の楽天カフェの一角にリアルな店舗を作ってから、最初に直営店を8店舗、その後、量販店、代理店とかなり拡大していきました。

 差別化として始めたのが楽天シナジーで、楽天スーパーポイントとのシナジーや、スーパーホーダイで、SPU(スーパーポイントアッププログラム)に参加して、ポイント2倍というところでオリジナリティーを出していきました。その間の2017年9月にFREETELの買収を発表しました。その後、2018年に免許をいただき、今は4Gの準備をしているところです。

 MVNOのマーケットの成長が鈍化しているという見方もありますが、僕らは3月の数字ですが、昨対で40%近く獲得数を伸ばしています。MVNOの中では元気な方だと思っています。7月にはDMM mobileをDMMから承継することを発表しましたが、このときに220万という数字を出しました。9月1日には、合算して220万ユーザーになる予定です。

―― そのDMM mobileですが、どういった流れで買収することになったのでしょうか。

大尾嘉氏 DMMとお話をする中で可能性を探り、楽天モバイルが承継するという話がまとまっていきました。FREETELを買収したときにも申し上げたことですが、一緒にMNOに対抗するスタンスがあり、力を合わせられれば大きな勢力になります。同じようなマインドを持つMVNOと競争するのか、一緒になるのかという議論はありました。FREETELは結果としてそうなりましたし、DMMも楽天にお任せしようということで話がまとまりました。

―― やはり、DMM mobileは契約者数の規模が比較的大きかったことが決め手になったのでしょうか。

大尾嘉氏 ある程度の規模感のところとお話を進めていったというのは、もちろんあります。ただ、契約数だけが全てではありません。どういうお客さまがいるのかが大事になります。

 DMM mobileは、その意味で特に楽天モバイルと親和性が高いとみています。ポイントをやっていて、ポイントをもらって消費するということをお客さまがある程度理解している。また、FREETELと比べても、料金プランは楽天モバイルに似ています。FREETELのときは、もっと安い段階制のプランでしたが、そこはお客さまの質として違うと思っています。通話のかけ放題もやっています。

 お客さまに付与するポイントは、9月1日から楽天スーパーポイントになります。DMMポイントがよくないというわけではありませんが、楽天の方が、使えるシーンも広がるのではないでしょうか。

楽天モバイル DMM mobileのWebサイトには、9月1日からはDMMポイントではなく楽天スーパーポイントが付与されるため、楽天IDの登録をするよう案内されている

“DMMポイントで買えたもの”は買えなくなる?

―― 確かに楽天の方が楽天Payを通じてリアルな店舗でも使えるため、ポイントの使い勝手はいいと思います。一方で、DMMポイントで買えたもの――端的に言うと、“エロ”は買えなくなってしまいますよね。

大尾嘉氏 内部でも、DMMと楽天で、ポイントの使い方が違う可能性があることは議論しました。おっしゃるように、DMMで買えていたものが楽天で買えなくなる懸念を持たれている方もいるかもしれませんが、楽天スーパーポイントは楽天Edyにも変えられて、ほぼキャッシュに近い流動性があります。そういったものに変換して、本来DMMポイントで買っていたものに使っていただいてもいいと考えています。

 例えば、楽天Edyに変えていただければ、それでDMMポイントにチャージすることもできます。恐らくほとんどの方が既にIDを持っているとは思いますが、仮になかったとすると、新規で24万の方が楽天会員になり、経済圏の活性にもつながります。そこはまだ調査していないのでこれからになりますが、今のところ、全くネガティブなことはないと考えています。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう